第47話 動かぬ映像ならいっそ写真でよくね?


 誰も寄せ付けないオーラに取り囲まれた2人の教授の背中にたじろぐ司会者。

そんな司会者をカメラのレンズ越しに見据えるカメラマンの額に汗がたぎる。


そんな無言の気配を察してか、司会者は唾を飲み込み、眉間にシワを寄せて考える。


(いや…テレビ撮影だよ…何、こいつら、俺の気持ちも知らないでこんな取れ高0のシーンなの…もはや、編集もクソもねえじゃん!どうすんだよ!絶対、後でディレクターに説教5時間コース確定だよ!動け!動けぇぇぇぇ!)



 司会者の不安を尻目に、無言で佇む、新海教授は考える。


(うわぁぁ!くっそ!こいつらいつの間に俺のインスタ調べてんだよ!暇なのか!なあ!暇なのか!!東大受験生前だよ?インスタとか観てる暇ねえだろ!ねえ?バカなの?バカなのか?あ…そういや、こいつらバカだったわ…)


新海教授の表情に一片の曇りも感じられない。ぱっと見は。


同じく新海教授の隣で無言で佇む八木教授は考えていた。


(そういや、今日、イベントクエスト配信日だっけ?早く帰りてえ)


八木教授の表情には完全に一片の曇りはなかった。


そんな、八木教授、新海教授、司会者、カメラマンのよつどもえの永遠とも言える長い静寂。

そんな静寂は、突如として切り裂かれた。


「やあ。皆さん、お揃いで」


声の方向に、よつどもえの渦中にいる4人は振り向いた。


そこにいたのは、ニヤニヤと笑みを浮かべる金田名誉教授。

その後ろには、静寂を切り裂きし、声の主、真田会長がいた。


真田会長の姿を視認した八木教授は、唖然とした顔で呟く。


八木教授「お…親父…?」


「えっ!?」


八木教授の一言に、新海教授、司会者、カメラマンは、一斉に驚いた表情で八木教授に視線を集中させた。


そんな光景を見た金田名誉教授は、笑いを堪えながらいつも以上に広角をニヤリと上げた顔でボソりと言う。


金田名誉教授「本日、最高の撮れ高来ましたよ。ふふふ」


つづく

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