第36話 同じ地域に住んでいるとコンビニで鉢合わせする可能性って意外と高いよね
目的・目標を失った者は、果てしなくもろいものだ。
あの雨の中、八木教授に向かって、感情的になり、自分の中で渦巻いていた不安・不満をぶつけた挙句、目的・目標であった東大受験を辞める事を一時的な負の感情からぶつけてしまった事を田中は、一人部屋で寝っ転がりながら後悔していた。
見つめる先には、天井と蛍光灯が微かに光ってるだけの虚無な空間の中で、頭の中では、あの時の後悔が激しく映像のように映し出されていた。
浪人して、親を泣かせてでも東大受験をするという決意で一人暮らしをした。
そんな自分勝手な事をして泣かせた親の優しさもあり、毎月仕送りをしてくれたお金で、ギリギリな生活ながらも浪人生活する事が出来る環境だった。
絶対に東大に受かってやる!って信念も最初だけで終わって、ぐうたらとした浪人生活になってしまってた。
そんな時に、たまたま八木教授と出会って、変人過ぎるし、この人に付いて行って大丈夫なのかな?って不安しかなかった。
だけど、失ってみてから気づいた。
あの時の自分は、目標を持って、何だかんだ頑張っていて、人生で一番充実していた時間だったのかもしれない。
失ってみてから分かった。
『つまんねえ』
こんなに、目標を失ったら、人生はつまんなくなってしまうのか。
この先、どうするか?
もう、東大受験の為に勉強はしなくていいんだ。
泣かせてしまった親には、申し訳ないけど、仕事探して、就職すれば、それはそれで親孝行になるのかな。親もそれを望んでいたのかもしれないし。
東大受験なんて夢見てないで、現実を見ておけば良かった。
期待はしてなかったが、少し前に謎のおっさんから貰った宝くじの結果は、もちろん外れていた。期待していた訳ではないがもしかしたらという気持ちがわずかに合った分、夢見てないで現実を見ておけば良かっただろという気持ちがより強く僕を叩き付けてくる。
そう、自分の中で結論を出そうとした時に、宿題を出された時に八木教授に言われた事が脳裏をよぎった。
『お前は、何のために東大に入りたいんだ?』
確かにそうだった。自分の中で東大に入りたい理由なんて漠然としてたよな。
だけど、その宿題の問いに対してなんて答えたんだっけ。
あ。そうだった。
『悔しくて見返したいから東大に合格したい』
そうだ。周囲にバカにされて、反対されて、それでも見返したいと思ったから、東大に合格したいと思ってたんだ。
もう。諦めたけど。
けど、やっぱり無理だったじゃんと、それ言った事かと周囲に言われるのを想像したらだんだん、ムカついてきた。
でも。
「あーーーー!!」
自分の中の葛藤のぶつかり合いが無限ループの喧嘩を始めたのに耐えきれなくなったのか、僕は大声で叫んで起き上がった。
もう、全然もやもやが消えない。
僕は、散歩がてらコンビニに行く。
適当に、コンビニの季節のデザートを数個買った。
デザートの入ったレジ袋片手に持ち、コンビニを出ると、駐車場の所でスマホをいじくりながら、コンビニのカップコーヒーをすすっている男がいた。
この男を見て、僕の中に眠っていた悔しさとムカつきの感情が目を覚まし、その男を睨んでいた。
僕の視線に気づいたのか、その男は、僕の方を向き、口を開く。
「久しぶりだね。負け犬土下座くん」
鈴木だった。
つづく
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