第35話 八木教授の苦悩


八木教授は頭を抱えて悩んでいた。


田中に東大受験リタイア宣言した件で悩みに悩んで、元弟子の桜愛に相談しに行ってアドバイス貰って置きながら、かっこつけた感じで去ってみたものの、家に着いてからふと大きな壁にぶつかる事にふと気づいてしまったのだ。


その大きな壁とは


『田中に謝るのは、なんかプライドが許さなくて出来ない』


という事だった。


八木教授は、考えていた。


『だって、よくよく思い返してみればよ。


あの生放送で負けて二人で土下座して、収録終わって帰り道で、いきなり雨に打たれてめちゃくちゃ寒い中、急に田中にブチ切れられた挙句、突然、『東大受験辞めます』って言われたけどさ。


なんかさ。今更だけど、俺が悪いのかなって考えちゃうよ。


どっちかというと、急にブチ切れられた俺が謝ってほしいんだけどな。


いやいや、そんな事言ったら身も蓋もないんだけどさ。


だけど、俺から田中に謝るのはなんかプライドが許さない感じしかしないんだが…』


ふと。八木教授は思いついた。


『そうだ!俺が田中に謝る以外の方法で復帰しようじゃないか!だが、どうやってするかな・・・』


八木教授は再び、頭を抱えて、脳内から捻くり出したアイデアを部屋に置いてあるホワイトボードに書き始めた。


アイデア『むしろ、逆に強気の姿勢で行く!


アイデアの内容はこんな感じだった。


『頭を冷やした田中が、八木教授に謝りに来る。それに対して


「あの敗北は計画通りだったんだよ。さあ、敗北を乗り越えて東大受験を目指すぞ」


と強気で突っぱねる。うん。嘘は付いてないからさ。あの敗北は実際、計画通りだったし。


その強気な姿勢に涙を流しながら、田中は言うであろうな。


「やっぱり、八木教授は天才だ!一生付いていきます!」


とな。うん。我ながらいいアイデアだ!』


一人、ホワイトボードを眺めて、何度も首を振りながら関心していた八木教授だが、ある問題点に気づいてしまった。


『もしも、田中が謝って来なかったら…強気な姿勢で行って、田中が


「は?八木教授、あの時の事全然反省してないじゃないですか?何が敗北も計画通りだったですか?デスノ○トの読み過ぎじゃないすか?もう、こんな自己中やっぱ無理だわ。東大受験辞めてウ○バーイ○ツの配達員になるわ。じゃあな八木教授じゃなくて、八木」


ってなった場合、完全にアウトじゃないか!?むしろそんな事、田中に言われたら、一生立ち直れねえ!一生、引きこもる自信しかない!引きこもって、ウ○バー頼んだら、田中が配達員で来て、ゴミを見る目で、頼んだ商品渡される未来しか見えねえ!!』


謎に最悪の事態を勝手に妄想した八木教授は叫んだ。


八木教授「ぜってえ!田中の配達員評価、低評価書き込んでやる!!!」


叫んだ後に、そんな事したら田中から報復されるのではと、再び、謎に最悪の妄想の負のスパイラルに陥る八木教授。


負のスパイラルに陥った八木教授に再び、アイデアが舞い降りてきた。

思わず、そのアイデアをぼそっと呟く。


八木教授「あ、田中がウ○バ○の配達員になったら、出○館で頼めば良くね?」


負のスパイラルの妄想劇は謎の自己解決をしたが、とんでもなく重大な事を思い出した。


『そもそも、田中がどこにいるのかも知らないし、田中が俺の家に来ないかもしれないし、田中の家の住所を知らない』


という頭を抱えて、悩んでいたそもそもの根底をぶっ壊す事だった。


再び、頭を抱えて八木教授は悩み込んだ。


八木教授の苦悩の夜は、まだまだ続くのであった。


つづく


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