第7話 幸せな目覚めは声をかけることから
毎朝先にベッドから抜け出し、大方準備が終わってから旦那様を起こしにいく。
妻以上に寝起きの悪い旦那様は、声をかけると応えてはくれるものの、すんなり起き上がってはこない。
ひどい時には妻が家を出る間際にやっと寝室から出てくることもあり、それからシャワーを浴びて身支度をして…という工程を経ると、遅刻ぎりぎりになることもままあるらしい。
それなら敢えて妻が起こす必要もなく、目覚ましなり携帯のアラームなりを連続的に鳴らした方が良いのではないかと思う。(鳴らしていても起きないのはお約束だ)
ともあれ、意味があるのかないのかわからないながらも、旦那様を起こすのは日課となっていた。
そんなある日。
「前も言ったと思うけど、明日から泊まりで出張だから」
「えっ」
この反応は覚えてないな…と若干気分を害しかけたところで、
「明日と明後日どうやって起きれば良いの……?」
(そっちかよ!)
即座に心中で突っ込んでしまった。
「どうやっても何も、普通にアラームかけて起きたらいいんじゃない?」
「起きられない……」
「そもそも私が起こしても起きないんだから、私もこれからしなくてよくない?」
この際だから今まで思っていたことを口に出してみたら、より一層悲しそうな顔を向けてきた。
「奥さんに起こしてもらうのが好きなの。毎日『奥さんまだかな~』って思いながらベッドで待ってるの」
予想していなかった返答の破壊力に、「目が覚めてるなら自分で起きてこい」という台詞が相殺されてしまった。
起こしてもすぐ動き出さないくせに、妻の声かけを待っているなんて……可愛くて許容してしまいそうだ。
結局、仕方ないなと思いつつ、これからも旦那様を起こしにいくのだろう。
毎日夜遅くまで仕事で疲れている旦那様を、少しでも長く寝かせておくために。
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