第4話 一緒に生きる覚悟を決めた男は何倍も輝く

 ある平日のこと。

 珍しく仕事が長引いてしまい、疲れた身体を引きずって会社を後にした。

 今から家に帰って晩ご飯を作り、洗濯物を取り入れ、片づけて明日のお弁当の準備をして…とやることリストを脳内で再生していると、家事の多さにげんなりする。

 とはいえ既に料理の下準備はしてしまっているので、食材を無駄にはできない。

 今日も就寝時間が遅くなるなとため息をついた時、スマホにLINEの通知が入った。

 確認すると旦那様からだ。

 内容は、


「お腹すいた」


 と、一言。

 妻より先に帰っていることなんて滅多にないのに、今日に限って早かったらしい。

 夜は特にたくさん食べる旦那様を待たせるとは、申し訳ないことをしてしまった。

 慌ててすぐに帰る旨を返信しようとしたら、続けざまにメッセージが飛んできた。

「洗い物して、洗濯物取り込んで、ゴミ捨てたよ」

(旦那様グッジョブ!!)

 対応のよさに感心しつつ、ついでにと更に頼んでみる。

「ご飯炊いておいてほしい。水は2合で」

 米は研いであるので、炊飯器に入れてくれたら家に着くまでのロスも減る。

 果たして旦那様は期待通りにやってくれた。

「やったよ。ザルも洗った」

(神対応ー!!)

 のろのろとした今までの足取りが嘘のように軽くなった。


 家の鍵を開けてリビングに入ると、PCに向かっていた旦那様が「おかえり」と声をかけてくれた。

「ただいま。遅くなってごめんね」

「ううん」

「色々やってくれてありがとう」

「奥さんが喜ぶかなと思って」

 思わず歓喜の意味をこめてハグした。

 結婚する前、つまり旦那様が1人暮らしをしていた頃は、料理を一切しないためキッチンにすら立ったことがなかった。

 洗濯は週に1回、ゴミもベットボトルが床に転がっているような有様で、お世辞にも生活が整っているとは言えなかった。

 それが、一緒に暮らすようになり、妻が働く傍ら慣れない家事業も精一杯取り組むのを見て、驚くほど協力してくれるようになった。

 当初から手伝ってくれるとありがたいと思っていたので、この変化が予想以上に嬉しい誤算だったのは事実だ。

 何より、旦那様の優しさを改めて見直す機会になった上、きちんと「夫婦として2人で生活する」ことを自覚して自分の人生のベースとして取り込んでくれたことが嬉しかった。

 もちろん望まれて結婚したわけだけれど、書類上の手続きを済ませただけでなく、式を挙げてイベントをこなしただけでなく、2人で快適に暮らす上で必要なことを背負ってくれたことが喜ばしく、旦那様の器を再確認することとなった。


 旦那様のおかげでさほど待たずにご飯が炊け、文明の利器を駆使して他に数品用意し、2人で同じ食卓を囲む。

 時短レシピでも「美味しい」と言ってくれる旦那様を見て、この人と結婚してよかったとしみじみ思う妻だった。

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