第6話九人の王は天界に反乱し、異界に流罪となる

 ここではない別の世界。

 その世界は神のもと九人の王によって統治されていた。

 竜の王、義眼の王、機械じかけの王、獣の王、炎の王、雨の王、大地の王、剣の王、月の王の九人であった。

 彼ら彼女らは神のいいつけを守り、世界を治めていたが、ある日、疑問をいだき天界に対し反乱を起こすことになる。



 何故、王である我々は神のいいなりにならなければいけないのだと。



 王たちは軍勢を整え、天使の兵団と決戦するが、その圧倒的な戦力に抗えず、あっけなく破れ去る。

王たちにしたがったものは皆死に絶え、王たち自身も肉体を滅ぼされ、その精神を異界へと流された。

放っておけば、精神だけとなった王たちは何処へともなく消え去る運命であった。

 異界に流罪となった王たちはその世界のある物にとりつき、どうにかその存在を維持したのであった。

 いつか再び、神に決戦を挑むために消滅するわけにはいかなかったのだ。



 心臓かどくんどくんと脈打ち、血管に血が駆け巡る感覚がする。

 

 まぶたをあけると目の前にはインド人でコンビニ店員のアーマンドがたっていた。

 さわやかな笑顔を浮かべている。

「那由多さん、おはようございます」

 流暢な日本語で彼は言った。

「ああ、おはよう」

 と那由多は挨拶をかえした。

 微笑を浮かべる。

 慣れた手つきで牛乳と食パンと煮干しのパックをレジ袋にいれるとそれを手渡した。



 壁の時計を見ると六時をすこしまわっていた。

 愛用のスカジャンのポケットから懐中時計を取り出すとほんの少しだが、熱をおびていた。


 懐中時計の時刻も同じであった。


 コチコチと正確に針を動かし、時を刻んでいる。

わずかな体調不良は時間逆行の後遺症のようなものだ。乗り物酔いに近い。


 

 彼女は使用したのだ。

 

 懐中時計にとりついた機械じかけの王の能力の一つを。

 その代償として、那由多は逆行した分の時間だけ寿命を機械じかけの王に支払うことになっている。


 アーマンドからレジ袋を受けとると、那由多は足早に店を出た。


 

 コンビニ前の駐車場には白と黒のぶち柄の猫がちょこんとすわっている。

 尻尾が二つにわかれている猫又であった。

 猫又は毛ずくろいをしていた。

 レジ袋から煮干しのパックを取り出し、三匹ほどを猫又の目の前に置く。

「やあ、又三郎さん。一緒に探し物のところに行こうじゃないか」

 と那由多は言った。

 猫又は那由多の愛らしい顔を怪訝そうな目でじっとみつめた。


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