第11話
私達は別室に案内されて朝食を食べさせて頂いた。
准士官以上の食事は自費なので、私達も食事代を支払わせていただきました。
こんな些細なことで父上様の評判を落とす事はできません。
競技大会のある日は来客が多く、学校で食事をする者が多いからか、朝からカツレツがだされました。
この時代の庶民では考えられないご馳走だですが、ほとんどが食事代自費の士官だからできる事かもしれません。
朝食を頂いて少しして競技会が始まりました。
オリンピックを意識しているからでしょうか、馬場馬術と障害飛越と総合馬術の三競技が一日で開催されました。
龍騎様は自身に貸し与えられた二頭の軍馬を上手く使い分けておられました。
一頭には障害飛越だけを教えられ、一頭には馬場馬術と総合馬術を教えておられました。
こうして見学させていただくと、馬術の名手が集まる陸軍騎兵実施学校にあっても、龍騎様の馬術は突出されています。
でも同時に、二頭では三競技に対応するのが難しい事と、軍から貸与される馬では力不足なのが分かります。
「鉄心大叔父様、軍馬でオリンピックで入賞するのは難しいと思われますか?」
「ああ、難しいだろうな。
日本の軍馬は、日本人の体格に合わせて改良されている。
欧州の障害飛越専門の馬や馬場馬術専門の馬よりも小さいのだ。
その小ささが、障害飛越で障害を飛び越える際には不利になる。
正確かつ美しく運動させる馬場馬術では、どうしても小柄な馬体が貧弱に見えてしまって不利だ。
それでなくても黄色人種は差別されている。
馬場馬術や総合馬術で入賞するのはとても厳しい」
とても腹立たしい事です!
武力で無理矢理開国させておいて、差別するとは!
しかも薩長に資金と武器を貸し与えて、内乱を引き起こさせてです!
本当に欧米人は野蛮人です!
強力な武器を持っているだけで、文化人とはとても言えません。
「では障害飛越に特化した方がいいのでしょうか?
鉄心大叔父様」
「いや、乗馬には落馬や大きな失敗もある。
馬場馬術では厳しいだろうが、総合馬術なら入賞の可能性がある」
「では龍騎様が欧州で購入すべき馬は、障害飛越馬と総合馬術馬と言う事でございますか?」
「ああ、そうだな」
私はその時軽く考えてしまっていました。
龍騎様が欧州に行かれるとしても、ほんのわずかな期間、馬を購入に渡欧されるだけだと考えていたのです。
陰湿な長州っぽが、嫌がらせを考えている事を忘れてしまっていました。
落ち目の長州には、闇討ちくらいしか出来ないと思い込んでいたのです。
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