黒猫の夢
ほどなくして乱行は試合終了と
助っ人を得たアメリは無敵だった。アメリ側の完勝だ。
男達が互いを支え合いながら口々に「くたばれ!」などと呪いの文句を
「ハニー……君の悲鳴が、僕の心に聞こえたような気がしたんだ……僕たちを結ぶ心の糸が、君の声を僕に届けてくれたのさ」
「ああ……ハンク……」
(嘘や。絶対出てくるタイミング待っとったろ)
そんなやりとりを、しらけた顔で眺めるタキシード。おそらくは、ハンクは毎晩アメリを尾行・観察の上、最高の登場タイミングを見計らっていたのだ。
この妙ちきりんな出来事を偶然では終わらせない探偵タキシード、意地の推理だ。
と、おもむろにハンクがアメリの後ろに回り込み、アメリは
「――どっせぇぇええええい‼」
ハンクはアメリの腹を両手で抱え、そのまま背中を反らせつつ、背後にうっちゃって彼女を首から床に落とした――ジャーマンスープレックスだ! 少しだけ興奮したタキシードが駆け寄ってスリーカウント取ろうとするも、落下点の
「どうだいっ! あの日、君に喰らったスープレックスだ‼」
ハンクが立ち上がると、宙に浮いていたアメリの脚がゴシャァ……という音を立てて地面に落ちた。直後にシンッと周囲に沈黙が来て、すぐさまアメリの上体が跳ね起きる。
「――いっ……たいわね、なにするんですのよっ‼」
アメリは立ち上がりざまにハンクの
兜を外し、肩を怒らせて路地から歩き去る女アメリと、追う男ハンク。
猫の
――
「……まぁ、悪いようにはならんやろ」
そんな
タキシードは彼女が欲しかった。猫の、じゃない。人間の、だ。
自分の身体が猫に近いことは理解しているし、受け入れてもいるが、タキシードの精神は人間そのもの。ぶっちゃけメス猫相手だと
これも性と身体の不一致――性同一性障害とでも言うべきか。
タキシードは〈
しかし、それは宝石の中でも〈
だがタキシードは確信している。
根拠は
しかし今日も収穫はなかった。
タキシードは「はぁ」と嘆息を漏らし、リア充爆発しろなどとこの世の全てを軽く呪いながら、バサァっと羽ばたいて夜空に溶けていった。
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