気が付けば全員集合です

「こ、んのぉ……!」


 全力の魔力でガード出来たから翼で切り裂かれるのは何とか防げたけど、勢いが凄すぎて全然止まってくれない。このままだと山まで吹っ飛ばされちゃいそう……、


「ふぎゅっ!?」


 と思ったら、見えない壁みたいなモノに顔からぶつかって勢いが止まり、ボクの体は地面に落ち始めた。

 って、この高さから落ちたらヤバ……、……んぅ? 柔らかい……、


「無事か、アスミア」

「おし、しょー様……?」


 ボクの体をお姫様抱っこで受け止めてくれたおししょー様。なので、目の前におししょー様の顔がある。こういうの、もう何回目かな。

 さすがに前ほど狼狽えなくなったけど、全く恥ずかしくないわけでもなくって。おろしてもらった後、ボクは必死に平静を装いながら服装を直す。


「まったく……君達がエアラメーベを使用した、と聞いて肝を冷やしたぞ」

「アスミアちゃんの故郷、なんでしょぉ? 焦るのも仕方ないわよぉ」

「あ……メメリエルナさんも」


「あらぁ? 私も最初からいたのにぃ、アスミアちゃんってばお師匠様の事しか目に入ってなかったぁ? うふふ、お邪魔だったかしらぁ」

「バカな事を言ってる場合か、メメリエルナ。旅行じゃないんだぞ」


 そう……そうだ! 伝えなきゃ、あの魔族の事を!


「えと、おししょー様! 向こうの広場に」

「魔族がいる、だな。分かっている。この魔力、気付かないはずがない」


 おししょー様は鋭い目つきで広場の方を見やった。大分遠くまで飛ばされちゃったから、ここからは全然様子が分からない。

 とその時、ぱしゅっ! と空気が割れるような音がボク達の後ろから。反射的に振り返ると、


「みんな!」


 ノクトスさん、カンナ、ディアーネの三人がいた。

 これってもしかして『風流移閃』で移動してきたのかな……? ノクトスさんを支えながら、カンナとディアーネがこっちを見る。


「ふぅ良かった、合流できた……リューネさんも、お久しぶりです」

「ああ。こんな形での再会はあまり喜べないが、な」


「メメリエルナさんも来て下さったんですわね……あら? ですが、他の冒険者は? Bランクの方もここに送る、という話では……?」

「あぁ、それなんだけどぉ」

「見ぃつけた、っとぉ♪」


 ぐぉっ!  と風を切るような轟音と、声。

 もの凄いスピードで追って来たっぽい魔族が、あの嫌味ったらしい笑みで羽ばたきながらボク達を見下ろしていた。


「って、まぁた増えてる? あーヤダヤダ、雑魚が増えたって鬱陶しいだけだっての」

「……おいリューネ」

「ああ、分かってる」


 ノクトスさんと言葉を交わしたおししょー様が一歩前に出る。


「雑魚かどうか、試してみるか?」


 おししょー様らしくない挑発的な物言いに、魔族の口がにたぁと歪む。


「オマエ、強そうだ、な!」


 落下するように、まっすぐに突進する。おししょー様はそれを剣で迎え撃つ。

 爪と剣が切り結び、ぎゃりぎゃりぎゃり! と音を立てながら何度も何度もぶつかる。めっちゃくちゃ迅やい! 多分、これがホンキのおししょー様なんだ。


 お互いに一歩も引かない攻防。それに焦れたのか、魔族は爪に魔力を集中させた。おししょー様も負けじと魔力を剣に集め、激突!


「くっ……!」「ぐぉっ!」


 もの凄い衝撃波が生まれて、どっちも吹っ飛ばされた。でも、吹っ飛んだだけでどっちも無傷っぽい。

 おししょー様、こんな魔族が相手でも対等に闘えるんだ……! って、おししょー様の上着の裏から何か落ちた……?


「……冒険者証?」


 間違いない、おししょー様の名前だし。それを拾い上げたボクは、一つおかしな事に気付いた。


(ランクが……Sランク?)


 どういう事だろ。ランクはAからJまでしかないはずなのに。

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