別に同じリアクションをしたっていいじゃない
「……まったく。あっちにふらふら、こっちにふらふら。あなたはどこの気ままな蝶々ですか」
「あ、お馬さんの次はちょうちょ? にしし、一気に可愛くなったね!」
「いえ、そういう話では……はぁ、もういいですわ」
おししょー様と別れて一時間くらい経った頃。
ボク達はようやく冒険者協会とやらに辿り着いた。
寄り道し過ぎだ、ってディアーネはうるさいけど、こんなにすごい街を作っちゃったネスティスが悪いと思う。ボクは悪くない、うん。
一つ頷いたボクは、目の前にそびえ立つ建物を見上げる。ここが冒険者協会かぁ……、
「……
「そのリアクション、二回目ですわ!」
もの凄い正論なツッコミと一緒にディアーネがボクの頭をぱしんと叩く。
ボクだって、それくらいは自覚してるもん。でも、この冒険者協会ってとこは、この街のどの建物よりも大きくて。
二階建ての建物、ってだけでもボクからすれば物語の中でしか見た事なかったのに、冒険者協会は何と六階建て! しかも高さだけじゃなくて横もめっちゃ広い!
正直、遠目でここを見ながら『あれがお城かなぁ』とか考えちゃった。お城があるのは王都ラドンだけ、って知ってたのに勘違いしちゃうくらい、この大きさは衝撃的だったわけで。
「まぁ、間違ってはいませんけど。この冒険者協会は王国で二番目の大きさを誇りますもの。勿論、一番はラドン王城ですわ」
「へぇ~~。ボク、中に入ったら絶対迷う!」
「自信満々に言わずとも、あなたが迷う事ぐらいあたしでも分かりますわ。だからほら、しっかり付いてきなさいな」
「あ、待ってよぅ!」
大声を出したせいでちょっと目立ってしまい、少し恥ずかしそうに中に入っていくディアーネ。ボクも遅れて中に入る。
外にも少し人はいたけど、中はもっともっとたくさんの人がいた。目に見えるだけでも20人くらいはいると思う。
背のちっちゃいボクは向こうから見えにくいみたいで、何度もぶつかりそうになる。避けるだけでちょっとした訓練になりそう。
「むぅ、この人達ってみんな冒険者なのかなぁ」
「それだけじゃなく、依頼をしに来た人、あとは皇国から逃げ延びてきた人達、ですわね。最近、魔物の被害が各地で出ているので、集まる人も多くなっているのですわ」
「そっかぁ。みんな、ラングさん達みたいに生活に困ってるのかな」
「程度の差はあれ、そういう事ですわ。そのおかげであたし達冒険者が生活できている、と考えると少し複雑ですけど」
もふもふの何かが敷かれた床を踏みしめ、ボク達は階段を上って二階へ。
「うわぁ……」
窓の外に広がる景色は、やっぱりボクにとって未知のモノ。街を歩いている時は少しごちゃごちゃして見えた景色は、少し上の視点から見下ろすと全然違う顔を見せる。
二階でこれなら、六階まで上がったらどんな景色が見えるんだろう? 胸を躍らせるボク、でもディアーネは足を二階で止めた。
「リューネさんは……まだ、みたいですわね。あれだけ無駄に寄り道をしたから先に来てしまっているかも、と思っていたのですが。お師匠様を待たせなくてよかったですわね、アスミアさん?」
「結果オーライ、だね!」
「怪我の功名の間違いではなくって?」
「ボク、そんな難しい言葉分かんないもん!」
「そうでしたわね、おバカっ娘のアスミアさん」
とりあえず、この二階でおししょー様を待つみたい。この階は冒険者が色々情報交換をしたりする場所らしく、協会で待ち合わせをする時は大体ここになるみたい。
確かに一階よりもすっごく人が多いし、冒険者っぽい体の大きな人、丈夫そうな服を着てる人ばっかりだ。この人達が冒険者としてのライバル、って事だね。
ボクはまだ冒険者になってないけど、あと数十分後にはなってるはず。となると、新米の冒険者として挨拶回りとかした方がいいのかな……?
「よぉディアーネ!」
そんな事を考えていると、すっごい騒がしい感じの声が響き渡った。
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