田舎者さん、未知なる冒険へ
なんか道行く人達がちらちらとボク達を見ているような気もするけど、まぁいっか。ボクは気を取り直す。
「で、これからどうするのぅ? まずは冒険者協会、ってとこに行くんだよね? おししょー様」
「あ、あぁ、そうだな。協会の本部で君の冒険者登録手続きを済ませてしまおうと思っていたんだが……」
おししょー様の声がしぼむ。ボクは首を傾げた。
「どしたの? おししょー様」
「いや……ここネスティスは私の生まれ育った街でな。戻って来た時に最初に立ち寄る場所があるのだが……」
「そーなんだ!? へ~、ふぅ~ん?」
何となく、おししょー様も王都ラドンの出身だと勝手に思ってた。おししょー様が生まれ育った場所だって聞くと、この大都市もちょっとだけ違う感じに見えてくる気すらする。
「じゃあ、まずはそこに行こっか! で、その後に冒険者協」
「いやいや、お待ちなさいな」
と、ディアーネが割って入る。むぅ、まぁたそうやって水を差すんだからぁ。
「なんだよぅ」
「なんだよぅ、じゃありませんわ。あなた、リューネさんの弟子を名乗るのであれば、今の口振りからそこにアスミアさんを連れていきたくはない、と思っている事ぐらいは察しなさいな」
「ほぇ? えっと、そうなのぅ?」
「いや、まぁ、イヤとかいうわけではないんだが……」
頬を掻くおししょー様。あ、うん、確かにちょっと困ってる感じのおししょー様だ。
ボクってば、この大都市の空気に当てられちゃってたのかな? こんな事にも気づけなかったなんて、弟子失格だよぅ……!
「うん、分かったよぅ! じゃあボクとディアーネで冒険者協会の方に先に行ってるから、おししょー様は後から来てよぅ!」
「はぁ!? 何を勝手に、あたしも一緒に行く事を決定してくれちゃってますの!」
「? ダメなの?」
「……いえ、まぁ。元から依頼の報告を協会でするつもりではありましたが」
「じゃあいいじゃん。いちいち騒がないでよぅ」
「あなたがいちいち強引だからですわ!」
ふー、ふー、と息を荒くするディアーネ。むぅ、貴族ってもっと物静かな人のイメージだったけど、ディアーネのおかげでそのイメージがめちゃくちゃだよぅ。この方がボクとしては楽しくていいけどさ。
おししょー様がボク達に頭を下げ、小さく破願する。
「すまない。そう時間は掛からないはずだから、協会の中で待っていてくれ。それと、ディアーネ。アスミアの事をよろしく頼む」
「ええ、任されましたわ。こんなじゃじゃ馬を街に解き放ったら、何をするか分かったもんじゃありませんし」
む、こんどは馬扱いだよぅ……まぁイモ扱いよりはマシかな? 全然嬉しくないけど。
「では、また後でな」
「うん! いつか街を案内してね、おししょー様!」
「あぁ、落ち着いたらな。約束しよう」
「ほら、協会はこっちですわよ。ぐずぐずしないで!」
「わ、分かったよぅ」
見渡すたびに、一歩歩くたびに、何か新しい発見がある。この街を歩くことは、ボクにとっては全部新鮮で、冒険をしてる! って感じしかしないや。
何となくヘルサイスを握り締めて歩きたくなるけど、さすがにそれがマズい事はボクにだって分かる。ボクはディアーネの先導に従いつつ、この平和な冒険を噛み締める事にした。
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