その名は、勇者
おべんきょー
〝
選ばれた者のみがそれを扱うことを許され、その神秘性も相俟って、神より賜りし贈り物だともされる。
言霊の特徴は大きく分けて三つ。
一つ目。すべての言霊は一文字の言の葉を冠する。その『一字の解釈』の仕方により、例え同じ言霊であろうとも扱える術式には差異が生じる。
二つ目。言霊は修練などによって習得できる類のモノではなく、ある日突然に使えるようになる。その性質、その扱い方なども、基本的な部分だけであれば言霊の発現と同時に自然と理解する。この現象は一般に〝目覚める〟と呼ばれる。
三つ目。言霊は、通常の現象と一線を画する。例えば〝火〟の言霊で魔物を倒せたとして、同じ大きさの火を熾して魔物に投げつけても望む成果は見込めない。同じ火のように見えて、言霊が生み出した火の方が遥かに強力な性質を備えているからだ。
以上の三つが知られている。言い換えれば、それ以外の事ははあまり明らかになっていない、未知の技術でもあるのだ。
言霊は『魔物に対する唯一無二の対抗策』としても知られるが、過信してはいけない。強力な魔力を帯びた魔物は、さらに強化した肉体で言霊を無傷で耐える事もあり、言霊を用いてくる個体すら存在する。
先に言った通り、言霊の持つ性質は我々の常識と一線を画する。並の魔物相手であれば通常の武器と魔力でも対抗しうるが、言霊を操る魔物相手にはこちらも言霊で対抗しなければほぼ勝ち目はない。
言霊を操るほどの魔物の数が、人間のそれと比べて極めて少ないのは救いだが、これから先もこの均衡が続くと楽観的に考えるわけにもいかない。我々人間も、言霊、あるいはその他の手段によって強大な魔物達に対抗する術を確立せねばならないのだ。
……ここで、最初に述べた前提について触れておこう。
言霊は神より賜りし贈り物。魔物に比べて圧倒的に非力な我々人間へと授けられた力。その考えを否定するつもりはないし、そうであって欲しいと切に思う。
だが、その言霊を使える者が魔物の中にも存在する。彼らのそれも魔力を媒介とし、一字の言の葉を冠する。
つまり、人間と魔物の言霊は、源流が同一のモノと考えられるのだ。
この事実を鑑みると、この世の不思議、あるいは不条理を感じずにはいられない。神は何故、魔物にまでこの奇跡を扱う事を許されたのだろうか―――――
「―――――ねぇ、ディアーネ」
「どうなさいましたの? アスミアさん。何か読めない文字でもありましたか?」
「バカにするんじゃないよぅ! 字は全部読めるんだけど……なんかすっごい小難しくって内容が全然頭に入ってこないだけ!」
「そっちの方がバカだと思いますわ!」
「ふふ……」
ぎゃーぎゃー騒ぐボクとディアーネ、そして横で静かに笑ってるおししょー様。
ねぇばっちゃ。今日もボク、元気にやってるよ?
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