料理の秘訣は皆殺し!

 村に着いたボク達を、村の人達はすっごく歓迎してくれた……まぁ多分、食材の方を歓迎してたんだろうけど。

 確かに、美味しいモノが食べられないってすっごくテンション下がるもん。って事で、ラングさんと助手さん達は長旅の疲れを癒す間もなく、村人達の食事を作る事になった。

 で、ボクはと言うと。


「嬢ちゃん、そっちの野菜系を適当に切り刻んどいてくれ!」

「任せてよぅ! ボクのヘルサイスで皆殺しに」


「待てぃ! それ、さっき魔物を斬ってたヤツだろうが! ってか草刈鎌で野菜切るバカがどこにいる!」

「村にいた時からずっとこれでお野菜を切ってるもん!」

「そいつは器用なこった! だけど今日だけはそこの包丁使ってくれや!」


 むぅ、仕方ない。ここは村の食堂の厨房、ラングさんはその料理長。従わなきゃ。


 とまぁ、こんな感じでお料理を作る手伝いをしていた。数十人はいるはずの村人全員分の食事を三人だけで作る、という無謀な挑戦を見ていられなかったのもあるけど、純粋に料理修業がしたかったから。


 野宿で食材を調達してくるのはボクで、お料理をするのもボク。おししょー様が飽きたりしないように、色んなお料理が出来るようにならなくちゃ!





 ひたすら食材と格闘する事、約二時間。

 日が暮れてくる中、ようやく全ての料理を作り終えた。ボクは三角巾とエプロンを外し、額の汗を拭う。


「ふぃぃ、つっかれたぁ。魔物退治よりもキッツイよぅこれ」

「はは、まぁ慣れれば違うと思うぜ? お疲れさん」


 ラングさんが笑う。料理をしている間は戦闘モード! みたいな感じで別人みたいな表情ですっごい手捌きを見せてたけど、今はもう元のおじ……お兄さんに戻ってしまってる。けどこっちの方がなんかホントのラングさんっぽい。


「アスミアちゃんはすげぇなぁ。ラングさんの料理ペースにちゃんと合わせてたし」

「確かに。俺ら、最初の頃は取り残されてばっかだったのに」


「にしし、お料理は得意な方だもん。けど、おししょー様にもっと美味しいモノを食べさせてあげたいから、もっともっと頑張る!」

「はは、嬢ちゃんはリューネの兄ちゃんがよっぽど好きなんだなぁ」

「うん、自慢のおししょー様だよぅ!」


 まぁ、まだまだ付き合いは短いし知らない事も多いけど、それはこれから少しずつ知っていけばいいもん。

 で、仲良くなるにはまずは胃袋から、ってカンナが言ってた。もっともっとお料理を練習して、おししょー様に食べてもらうんだ!


 ぐっと拳を握り締めて頷くボクを見て、三人が何やら顔を見合わせて笑みを浮かべる。と、助手さんが言う。


「ねぇラングさん。この際、リューネさんにアレ、お願いしてみたらどうっすか?」

「それは俺も考えたがなぁ……こんな貧乏な村じゃどうしようもねぇだろ」


「そりゃそうっすけど。あ、それならアスミアの嬢ちゃんに頼んでもらったらどうっすか? 弟子の言葉なら聞いてくれるかもしれないっす」

「へ? ボク?」


 何の話だろう。首を傾げたボクは、一斉にボクの方を見た三人の視線を受け止める。


「えと、村に泊めてもらえるんだし、ボク達でどうにか出来る事なら何でもやるよぅ?」

「そう言ってくれるのは有難いんだが、内容がちぃと重めでなぁ」


 頬を掻くラングさんが、口ごもりながらも続きを口にしようとする。


「でーすーかーらー! あたしにも都合と言うモノがありましてですね……!」


 その時、キンキンと耳に響く声。大勢の人で賑わってる食堂の方からだ。


「あーー……嬢ちゃん、とりあえずその話は後にしてくれるか」

「う、うん」


 ラングさんは一つ溜息、食堂の方へと歩いていく。ボクも早足でその後を追った。

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