猫と和解せよ

 アメリカの研究機関アーティファクトテクノロジー、通称ATでは兼ねてよりある物質の研究が行われていた。

 今から五十年ほど前、宇宙から落ちて来た隕石から未知の物質が発見される。そこから検出されたエネルギーはアンノウンエネルギーと呼ばれ、実験の中でそのエネルギーが枯渇する事の無い恐るべき存在であることが明らかとなった。

 このエネルギーを使えばそう遠くない未来にやって来るエネルギーの枯渇問題が回避できる。しかし、それは同時にこのエネルギーが戦争の火種になることも意味していた。

 もし公表すれば各国がこぞって欲しがることだろう。無限エネルギーとも言うべきアンノウンはしかし、生み出すエネルギーが一定であり、日に家庭一つ分程度のエネルギーしか生み出すことができない。アンノウンエネルギーを生み出す物質を増やすことができないかと研究が続くも、やはりそれは不可能だと結論付けられた。

 研究開始から十数年が経ったある日、生きたままの宇宙人の捕獲に成功したことでアンノウンエネルギーの研究は放置され、其方の人体実験が優先的に行われるようになった。

 もしかするとアンノウンエネルギーと何等かの関係があるかと思われ最初の内は同時に研究されていたが、微量なエネルギーを一定量発生し続ける物質と比べられた結果、宇宙人の方を優先することになり、エネルギー研究は放置されることとなった。

 しかし今より十年ほど前、宇宙人研究の第一人者であったスコットランド・ホプキンス研究長の愛娘、レイアが突然「前世を思い出した」と言ったところで状況が変わる。

 レイアは前世において天神帝国に所属していた軍人であった。当時の名前をミオ=アスカと言った。当時と名前と同じ名前の奏や源十郎と違うことで転生者は前世と同じ名前説は無くなった。提唱していたのは奏である。そうと知らない奏はクラスメイトの飛鳥あすかみおを勝手にミオの転生者だと結論付け前世の記憶が早く戻るようにとロボットゲームを薦めていた。一部の大会ではリアルマネーの賞金が出るゲームで、僅か数か月でプロの仲間入りを果たした澪は人生が変わったと感謝してるとか。


 閑話休題。レイアはマシンナーズの開発に携わっていた前世を持つ。そのエネルギーとは違う消費されるエネルギーを中心にマシンナーズは動いていたが、このエネルギーを使えば一機くらいなら無限エネルギーを中心に永遠と稼働させ続けることが可能だと言う。

 一機で家庭一戸分のエネルギーを一日に必要とする。武装はまた別。もしレーザーを使えばそれだけでエネルギーは無くなってしまうだろう。前世でもレーザー兵器は大飯食らいの武装だとされ、天神帝国ではあまり使われることが無かった。

 あくまで飛んだり跳ねたりレベルで稼働させ続けることが可能なだけであるものの、武装のエネルギー源は別に用意できるし、実弾だって作ることができる。何より今生でもロボット大好きなレイアとその父である。ロボットが作れるなら作らない以外に無いのだ。

 スコットランドは日本の愛好家であった。寿司に侍、腹切り忍者。未だに日本では腹切りが行われると思っているちょっと頭があれな人でもあった。

 レイアが前世では腹切りしてたと言っちゃったものだからやはり日本ではそれが当たり前だと勘違い。研究者として頭が良いのに変なところで頭が悪い男である。周りの研究者たちも大丈夫かこの人と思ったとか。


 レイアは多忙なスコットランドに代わりロボット作りの第一人者として開発チームを率いた所長を任命される。集まったのはそのどれもがロボット大好きアニメが好き侍忍者も大好きというメンバーだった。

 最初は機動な戦士の白いやつでも作ろうかとしていたが、著作権的にヤバくねと何故か日本の著作権を気にしオリジナリティ溢れるかっこいいの作ろうぜ! となった結果、じゃあ侍イメージして刀とか持たせちゃおうぜと刀と言う名の別の何かを作り出し、鬼のような顔に兜、その頃から映画界はヴィランブームであったことで真っ黒な悪役みたいな機体が開発されることになった。

 レイアが所長になったのは九年前。紆余曲折を経て、九年目である今日、遂にそれが完成する。

 何度も重ねた試行実験の結果、問題なく稼働することとなり、その研究の中でレイアと結ばれた研究員、ジャイアンがパイロットとして登録された。 

 レイアのマシンナーズ開発部門は何時しか政府公認のものになっていた。戦争でこのロボットを使わない手は無いと判断され、サムライオーガと名付けられた機体とは別に量産型の機体製造に着手している。

 サムライオーガを中心とした部隊編成をする予定だからか、量産型は鬼をイメージした灰色の機体で作られる予定だ。機体名はニンジャオーガ、敵のレーダーに感知されない隠密型の兵器で忍術も使えるようにする予定だが、彼らの言う忍術は某アニメに関連するもので、言い方を変えれば魔法である。本当に搭載されるかは未定だ。

 

 スコットランドの方の宇宙人研究も進み、イティーと愛称が付けられた宇宙人には仲間がいる事、その目的が地球への移住だと言う事、地球で何度も観測されているUFOの一つはイティーの仲間のものも含まれているということが明らかとなった。

 イティーたちの目的は既に完遂しており、地球は我々のものだと言った。イティーの見た目は猫で、宇宙人と言うより宇宙猫だ。UFOも玩具のような小さいものなので、彼らの仲間は地球各地に野良猫として住み着いているとか。全部で数万いるイティーの仲間、見た目まんま猫なので知らずに見たら全く気付かないこと間違いなし。UFOとセットじゃなかったらただの猫だと思ってたね。

 そんな猫であるイティーの仲間たち、見た目がスコットランドの飼い猫であるベイダーに似ていたことからベイダー人と名付けられた彼らの寿命は百年ほど。イティーも五十のおじさんらしい。

 生きたまま解剖した結果、内臓などの位置はほぼ同じ、脳が頭の胸にそれぞれ二個あることが明らかに。

 宇宙言語が話せる以外はただの猫。UFOの技術は未知の部分も多く、研究が続けられている。

 そんなイティーの研究と対話の中、地球付近には未だ未知の部分が多いワープ機能でやって来たこと、イティーの母星が別の宇宙人によって滅ぼされていることも分かった。

 その宇宙人は見た目で言えば蜘蛛に近く、しかしサイズは象と同等。繁殖性は低いものの、装甲のような体を持っており、非常に獰猛。知能は低いが宇宙空間でも生存可能。執念深く一度狙った獲物は絶対逃がさないハンターだと言う。

 

 イティーたちが地球にやって来たのは二十年前。ノストラダムスの大予言の年だ。

 恐怖の大王は来ないし人類も滅亡しなかったが宇宙人の移住は完了していたらしい。

 恐怖の大王がその蜘蛛、アンチイティーと名付けられた存在かとも思われたが、それらしい蜘蛛の報告は上がっていない為、無事彼らは逃げ延びることができたようだ。人間に捕まってしまったものの、捕獲当初に行われていた非道な実験もその最初の一年だけで、後は普通の飼い猫のように扱われている。キャットフードが苦労することなく手に入るのでイティーも随分丸くなった。二重の意味で。


 UFOのワープ技術はイティーも良く分からなかった為、それを知っているベイダー人の捜索、そして研究が続けられている。

 そんな中、政府にアンチイティーらしき存在が国内に複数出現したこと、現在、警官隊と交戦状態にあること知らされる。

 それは日本で雄介の前に現れたものと同じ悪魔。彼らはベイダー人を追って、地球の遥か彼方より遂に到来したのである。

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