第11話 レコーディング2日目

 レコーディング2日目。

ユニット曲の収録前に、もう一度音弥と歌合わせをした。


 スタンバイが整ったようで、スタッフが楽屋まで呼びにきた。


 『よろしくお願いします!』


 音弥と2人で歌うことは以前にもあったが、それは歌番組での中だけで、実際にレコーディングして発売することはなかった。

だから、ある意味新鮮だった。

事務所に届いているファンレターには、“音弥くんと純斗くんの2人で歌を出して欲しい”と言う声が来ている。


 こういう需要がある事は大切だと思った。


 このアルバムを引っ提げてライブツアーも決まっていた。

2人のユニットは、すごい反響になると思うわ、と桜田マネージャーが言っていた。


 『ありがとうございました。』


 昨日の練習の甲斐もあってか、収録はあっという間に終わった。


 「純斗が昨日練習に付き合ってくれたから、気持ち入れたよ。ありがとう。」


 ヘッドホンを取りながら音弥が言った。


 拳を出すと、音弥が拳をぶつけた。


 レオンと話している永人の姿があった。

これから3人で収録らしい。


 明後日のオフに永人と出掛ける約束をしていたが、忙しくてどこに行くか決めていない。

クリスマスは終わってしまったから、街中も正月モードに突入している。


 「永人、ちょっといい?」


 わざわざ呼び出さなくてもいいのだが、関係が関係のため呼び出してしまった。


 「明後日の事なんだけど。どこ行くか決めてなかったじゃん。」


 永人の顔が少しムスッとしているのは、気のせいだろうか。


 「海。」


 「海!?この寒いのに?真冬だよ?12月だよ!?」

 「うるさい!!声デカい!別に海に入るなんて言ってないでしょ。冬の海を一緒に眺めたいなって思っただけ。」


 予想外の答えが来たので声を張り上げてしまった。


 「いや、永人が行きたいならいいけど……。ってか、なんか怒ってない?」

 「怒ってない。」


 そう言いながらも、永人の頬は膨らみやっぱりムスッとしている。

朝早いから、機嫌が悪いのだろうと、深く突っ込まないようにした。


 「じゃ、また連絡するね……?」


 うん、と短く返事するレコーディングに行ってしまった。


 なんかしたのだろうかと自分に問いかけたが、全く心当たりがない。

連絡が最近できていないから?

でも、お互い忙しかったら出来ない事はよくある事だ。

それは、永人も理解してくれているはずだが……。

明後日、永人が笑ってくれたらいいな。

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