第9話 アルバムジャケット撮影

 わぁー、すごいセット、とレオンがはしゃいでいる。


 「SOLEILっぽい雰囲気が出てて、すっごくいい!」


 早くも待望の1stアルバムを3ヶ月後にリリースする事になった。

今日は、そのアルバムのジャケット撮影に来ている。

アルバムのテーマは、グループ名にもなっている“SOLEIL(太陽)”だ。

太陽をイメージしたキラキラした明るいセットになっている。


 オレンジ色の丸い大きなオブジェを中心に、左から、一輝、レオン、純斗、音弥、永人の順に並んだ。

これがアルバムのジャケット写真になると共に、公式の宣材写真にも流用される。


 5人でのショットが終わり、ソロショットに移る。

これを各セットで繰り返し撮影される。


 永人のソロ撮影中、レオンが何やらイタズラをしようとしている。

二人の掛け合いがほのぼのしていて、見ているだけで微笑ましい。

怒られちゃった、とレオンは舌を出した。


 太陽、星、月、地球などが飾られたセットに移動。

今回のアルバムには、ユニット曲が含まれる。


 ユニットは、純斗と音弥の二人と、レオンと永人と一輝の3人で行う事になった。

それぞれの曲にあった背景で撮影する。

曲は3種類あり、その中でどの1曲にするか、お互い話し合いで決める。

曲選びは既に済ませてあった。

純斗と音弥は“星”をイメージ、3人は月をイメージした曲を選んでいた。

そのセット背景にコンビで撮影。これからレコーディングも進めていく。


 太陽、星、月、地球それぞれが個々に綺麗に配置されているが、ある一点から見ると何とも言えない芸術的なものが感じられた。

その一点から撮影された写真は、5人の何とも切ない表情と上手くマッチしていて、まさに“芸術”だった。


 綺麗だね、と永人が言った。

言葉が出ない程の芸術とはこの事だと純斗は思った。


 アルバムのジャケット撮影が終わり、楽屋へ戻った。


 明日は何だっけ、とレオンが鏡で髪の毛を弄っている。


 レコーディングでしょ、と一輝が答えた。


 「待望のアルバムだからね、レコーディング頑張らないとな。」


 ユニット曲は、年上組と年下組に分かれている。

年下組が頑張っている姿が、微笑ましく思うのは、自分が年を取ったせいなのかとふと考えてしまう。


 それを言うと、音弥は、そんなに年変わらないだろう、と言った。


 「じゃ、俺帰るわ。純斗明日よろしく。」


 楽屋には、いつの間にか永人と純斗だけになっていた。

帰ろうか、明日も早いし、と純斗の言葉に返事がなかった。


 「どうした?」


 永人が勢いよく抱きついて来た。

純斗はバランスを崩してソファに倒れこんだ。


 「ビックリした!何、どうしたの?」


 純斗に抱き着いたまま、一言も話さず抱きつく力を強めた。


 「永人、痛い痛い。ちょっと……。」

 「純斗うるさい!充電中なんだから静かにして。」


 うるさいと言われても、そりゃ誰だってびっくりするだろう。

いきなり抱きついて来たんだから。


 充電完了!、と永人は純斗から離れた。


 「何て顔してんの?」

 「びっくりしたんだよ。いきなりで。」


 嫌だった?、と拗ねた顔で言った永人に、嫌じゃないけど、と純斗は言った。


 「急にしたら危ないだろう。びっくりするし、ソファがあったからよかったけど、怪我したら大変だぞ。」

 「ごめん、でも急にしたくなって。」


 永人の表情が可愛かったせいか、純斗は永人をギュッと抱きしめていた。


 「今度からは、そんなに飛びつかないで普通に抱きついてくれ。」


 うん、と純斗の胸で言った永人は可愛かった。


 「明日も早いし今日は帰ろう。」


 身支度をしていたら、純斗!、と永人が呼んだ。


 「もうすぐクリスマスじゃん?クリスマスは流石に仕事入ってるからさ……、次のオフさ、出掛けない?出掛けなくても、純斗と一緒にいたい。」

 「わかった、次のオフどっか行こうか?」


 永人は、楽しみ、とニコッと笑った。


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