第6話 告白の返事①

 思いがけない告白から三日過ぎた。

あの日から、永人の言葉が頭から離れずにいる。


そして、距離を取ってしまっている自分がいる。

最低だ……。


 勇気を出してくれた、永人の気持ちを踏み躙っている事は、自分でもよく分かっている。

自分自身、整理が付いていないから、どう話して良いのか分からない。

男から、告白を受ける事なんて今までの人生で一度も考えなかったし、これからもないと思っていた。


 「好きだ、純斗。」

 「えっと……。それは、メンバーとして好きって事だよね?」


 いつになく真剣な表情で純斗を見る永人で、確信した。

 恋愛感情で純斗の事が好きなんだと。


 「ごめん、すぐには応えられない。少し、時間をくれないか?」


 そう言ってしまって、変な期待をさせてしまっただろうか。

 すぐに、気持ちには応えられないと返事をしても良かった。

ただ、メンバーだから。

普通の友達とは違う。

小さい頃から何をするにも一緒。

長い時間、共に過ごしてきた仲間であり、家族のような存在。

それだけに、そう簡単には無理だと言えない。


 「どうしたの?ボーッとして。」

 「あ、いや。すみません、少し考え事してて。」


 車のバックミラー越しに、桜田マネージャーが心配そうに見る。


 ボーッとしていても、仕方ない。

変な期待は、何の優しさでもない。

自分の気持ちは告白された時から決まっている。

異性が好きだし、もちろん付き合うとなったら女性だ。

今まで純斗自身同性に恋愛感情を抱いた事はない。

それに万が一、付き合うとなっても自分達の置かれている立場を考えなければならない。

今、スキャンダルを起こせば、色んな所に迷惑をかける事は間違いない。

今や大人気アイドルまで成長を成し遂げたSOLEILにとっては、マイナスでしかない。


今日は、永人と番組の収録で一緒だ。

はっきり言おう、気持ちには応えられないと。


 「おはようございます!」


 楽屋に案内され、用意されているアンケートに目を通す。


3rdシングルのリリース告知で番組のゲストとして呼ばれた。

ひな壇に座って、VTRを観るだけの番組だが、結果を残すために頑張ろう。


 「おはよう。」

 「あ、お、お、おはよう。」


 心の準備していなかったから、めちゃくちゃ動揺して挨拶をしてしまった。

三日間、話す内容も仕事での確認事項のみ。

まともに会話をする事なくこの日が来てしまっていたのを今更後悔している。何を話せば良い、いや、まずあの事をしっかり伝えなければ。


 「永人。」

 「何?」


 めちゃくちゃ機嫌悪いじゃん。

そりゃそうか、ほとんど目も合わす事なく過ごしてきたんだから。


 「あのさ……、この前の事なんだけど。」

 「今、話すの?本番前に?」

 「ごめん。収録が終わったら少し時間もらえない?」

 「分かった。」


 それから、一言も話す事なく収録が始まってしまった。

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