第4話 雑誌の撮影④

 永人は、アイドルスマイルの持ち主だ。

カメラで撮られた笑顔からは、キラキラとオーラが出てくるほどだ。

これぞ、まさにアイドルという言葉がふさわしい。


 「お願いします。」

 相変わらずアイドルスマイルで対応している。

ベッドに入った瞬間、永人から笑顔が消えた。

 「男だ。」

 思わず声が漏れてしまった。

周りを見渡したが、誰も気づいてなくホッとした。

 みんなすんなり出来すぎてはいないか。

純斗がプロとして自覚が足りないだけか。

ションボリ落ち込んでいると撮影を終えた永人が隣にいた。


 「純斗、どう。いけそう?」

 「うん……。みんなを見て参考にするわ。」

 「じゃぁ、俺のも参考にしてよ。俺はね、好きな人をカメラに例えてやった。その人が自分以外に見惚れないように、挑発的な?感じで。俺以外を見つめないで〜、って。俺は、好きな人を思って作ったよ。」


 永人、好きな人がいたのか。

普段、メンバーとそんな会話をした事なかったから内心驚いたが、アイドルとはいえ20代の男だもんな。


 「ほら、次一輝だよ。」


 ハタチという年齢を感じさせない大人な雰囲気が空間に伝わった。

同い年のレオンとは別の魅力がそこにはあった。


 「次、音ちゃんよろしく。」


 相変わらずクールにベッドに上がる。

いや、ベッドに入る前から既に始まっているのか。

男の純斗が言うにはおかしいかもしれないが、エロい。

こいつこんな顔も出来るのか。

濡らした髪がより一段と、音弥の色気を引き立たせている。


 急に奇声に近い叫び声がスタジオ全体に響き渡った。

カメラマンが興奮して奇声をあげたらしい。

興奮するのも無理はない。

何せ純斗含め、3人も音弥の魅入ってしまっていた。

やっぱ持っているな、こいつ。

 関心と同時に、ライバル心が芽生えてきた。

昔から一緒にやってきたのに、音弥が一歩先を行こうとしている。


 「純斗、頑張れ。」

クールに肩を叩いた。

音弥に出来るのなら、純斗にも出来るはず。

“俺は出来る。”と、深呼吸。


 「純斗くん、いけそう?」

 「大丈夫です!」

 「あら?さっきよりもいいじゃない。」


 カメラマンも段々ノッてきた。

いいよ、いいよと掛け声も大きくなり純斗もノッてくる。

表情を変えてみる事にした。


 「あら、何だか挑発的な目ね。嫌いじゃないわよ。」


 どうやら上手くいき、今日の撮影は終了した。

無事に終わりホッと胸を撫でる。


 衣裳を着替え、帰る準備をしていると永人から食事に行かないかと誘われた。

明日は、早朝から仕事は無かった。

そういえば、永人とサシで呑みに行く事は初めてかもしれない。

珍しい、何か相談事でもあるのか。

そんな事を思いながら、個室がある居酒屋へ向かった。


*****


 頭が痛い……。それに寒い……。

ボーッとする頭でも分かった、見慣れない天井。

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