第3話 雑誌の撮影③

 光沢のある黒革のソファーに5人全員で座り、クールな表情で撮影が進んでいく。

真っ白なシャツを第3ボタンまで外しエロティックさを出す。

全部外すより少し露出させる方がエロティックさが増すらしい。

 クールな表情や笑顔、時には悲しい儚げな表情を写真という画像1枚で表現しなければならないのが雑誌の撮影である。

カメラマンの指示で顔つきを変えることもあれば、自分で変えることの方が多い。

デビュー当時は、恥ずかしさもあり、中々顔を作る事が出来なかった。

何度鏡の前で練習したか。


 「いいね〜。いいね〜。」

 テンションアゲアゲな男性カメラマン。

対象者のテンションを上げるのがカメラマンの仕事で、純斗もそのテンションに何度助けられたか。

ソファーに真っ赤な薔薇の花びらを散りばめ、さらにメンバー同士の密着。

お互いのシャツをはだけさせ合う今の状況。

雑誌に載っている“メンバーのこれが見たい!”という雑誌のコーナーにファンの子たちから寄せられたアンケートで“メンバー同士の絡み”というワードが多かったらしい。

はだけさせるというのが果たしてそれに該当するのかはわからないが、編集者たちが満足げな顔を見せている。


 5人でのカットは以上のようで、個人撮影に移る。

目に入った光景は、ベッド。


より一層エロティックさを出すために霧吹きで髪の毛とシャツを濡らす。

“官能的”という言葉がこれまたしっくりくる。


 デビューしてから初めて体験する撮影に純斗は内心焦る気持ちでいっぱいだ。

クールな顔は何度か鏡の前で練習してきたが、こういう官能的な顔は一切練習してこなかった。


 「じゃぁ、最年長順に撮影していくから、純斗くんから撮っていこうか。」

まさか、まさかの一番手で焦る気持ちを隠せない。何故最年長からなのか、純斗自身最年長である事を恨む。


 「セクシーな感じ……。エロティックな感じ……。」

 純斗は頭をこれでもかとフル回転させた結果……。


 「ちょっと〜、純斗くん!これじゃまるで、お馬鹿さんじゃない。」

 まさかのお馬鹿さん呼ばわり。


純斗なりに、セクシー&エロティック=口を開ける事だったのだが違ったみたいだ。


 「口開け過ぎだよ、純斗。」

 「あら、じゃぁレオンくんやってくれる?」

 はぁ〜い、と可愛らしく返事をしたかと思えば急に男の顔になった。


顔は、どちらかといえば中性的な顔立ちで、スカートを履いて綺麗にメイクをしたら確実に女の子になれる顔立ち。

栗色の髪がライトで照らされて、その色を一層際立たせる。

中性的な顔立ちの中に漏れ出す色気。

レオンいつの間に練習したんだ。


 「はい、OK。素晴らしかった。じゃぁ次、永人くんお願い。」


 戻ってきたレオンにそれとなく聞いてみる事にした。


 「練習とかじゃないよ。自分の中に秘めている“男”というものを出す。ただそれだけ。」

 「それが難しいから困ってんだろ。」

 「まぁ、あんま深く考えずリラックス、リラックス。」


 リラックスしたらまたアホズラになりそうで、レオンには申し訳ないが遠慮した。

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