第2話 雑誌の撮影②

「おっはよー。」と元気な声と共にドアが勢いよくバウンドし開いた。

純斗と音弥の身体が弾み、音の方を見ると飛びきりの笑顔で立っている人物がいた。


 「レオン、もう少し静かに入れないのか。」

 先程まで静かな空間で雑誌を見ていた音弥が少し呆れ声で言った。


 「ビビったけど、まぁ元気でいいじゃん。」


ごめん、とレオンは可愛く顔の前で手を合わせている。

これで許してしまうのがレオンの可愛さでもある。


 ドアを勢いよく開けるのは、多分レオンの癖である。

時に仕事で感触を掴んだ時や、いいことがあった時に起こり得る現象。

わかりやすく態度に出る。

みんながどんなに疲れていても、レオンの何気ない行動や発言で少しだけ元気になれる。

場の空気を明るくさせる天才とはまさにこの事だ。


 「レオン、これレオンのか?」

 しれっと楽屋に現れたと思ったら、何やらレオンに渡している。

 「あ!これ俺のだ!どこにあったの?」

 「廊下。」

 「全然気がつかなかったよ。しかも、これ最近新しく買ったブレスレット何だよ。ありがとう!一輝。」

 「みんな、おはよう。」

 軽く挨拶した一輝は雑誌を手に取り音弥の向かいに座った。


 「純斗、見て見て。これ新しく買ったの。」

 レオンは先程、一輝から渡されたブレスレットを持って隣に座った。


 「ブレスレット落とすか?普通。」

 「留め具の所が引っ掛けるだけだから、すぐ取れちゃうんだよね。」

 「何でそんなの買ったの。」

 「かっこよかったから!見てよ、この色合い。めちゃくちゃかっこよくない?それにここのワンポイントもめちゃくちゃオシャレじゃない?」

「確かにかっこいいけど、さっきみたく失くしたら意味ないじゃん。」

 「確かにね。じゃぁ、キーホルダーにでもしちゃおうかなー。」


そう言いながら楽屋に置かれているお菓子に手を伸ばした。

結局何でもいいのかよ、と思いながらレオンの行動を見ていた。

マイペース選手権があればナンバーワンに輝いているだろうな。


 それに比べて歳は、グループの中で一番下だが一番しっかりしているのが一輝だ。

何だろう、しっかりしているのもそうだが、大人という言葉がしっくりくるだろうか。

ある意味しっかりしているし、ある意味大人。

音弥とは別の冷静さもある。一般的な二十歳の子と比べれば。


 音弥はファッション誌を読み尽くしたのか、テレビを観ている。

その向かいには一輝が音楽を聴きながら雑誌を読んでいる。

純斗はレオンの最近ハマっていることや、オススメのブランド服、アクセサリーについて熱弁を聞いている。

意外とこの時間は嫌いじゃない。

自分の好きなものを語っている時のレオンの活き活きと、キラキラした目を見ると微笑ましくなる。


 「ねぇ。」

 「どうした?」

 「永人遅いね。」

 別の仕事が長引いているのだろう、と言った瞬間。


 「おはよう。いやー、長引いた。ぎりぎりじゃん。」

 「永人!おはよう。今、純斗と永人の話してたんだよ。」

 そうなの?と純斗を見た。

 「遅いなって、レオンと話てて。もうみんなメイクとか済んでるから。」

 「そうなんだ、遅かったよね。こんなにギリギリになるなんて思ってなかったからビックリだよ。」


 永人は用意されていたケータリングの水を飲みながら言った。


 「失礼します。全員揃いましたので、これから撮影を行いたいと思います。白井さんはメイクを、他の方は衣裳に着替えの準備をお願いします。」


 衣裳部屋には、モノトーンから派手な衣裳まで多種多様だ。

“大人”がテーマの今回の撮影。渡されたのはシャツにジーパンと少しラフな格好。

 撮影場所は、シンプルなスタジオにソファーが置いてある。


 「まず、グループ全員の撮影から撮りましので、ソファーまでお願いします。」

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