第1話 雑誌の撮影①

 日射しが、少し開いたカーテンの隙間から射し込む。射し込む。

眩しさで目が覚め、洗面台で顔を洗った。そして、コーヒーを淹れる。

これが毎朝の日課だ。


 ソファに座りテレビを点けると、「人気アイドルグループ“SOLEIL”がまたも快挙達成です。」


朝の情報番組で目が痛くなるほどの照明を浴びている自分が映っている。


 2ndシングル売り上げ1位。初のライブで動員客数が上半期1位。

デビュー曲で1位、そして3カ月後に出した2ndシングルでも売り上げが1位になった。

それから、その5カ月後に自分たちが主役のライブが開催された。


 全然想像もしていなかった。結成してデビューまでが2年。

トントン拍子に進んでいき、正直怖いって思う時がある。

だか、それはとてもありがたい事だ。

しかし、一部ネットでは早すぎるんじゃないかと言う声が寄せられる。


 ボーッとテレビに映っている自分を観ていると着信音が鳴った。

画面には“桜田マネージャー”の文字。


 「あ、純斗?おはよう。あと5分で着くから準備して降りてきて。」

 「わかりました。」と短く返事をし、電話を切った。


 全身鏡の前に立ち、ニコッと笑う。これもいつもの日課。

その後、爽やかな中に男らしい香りのする香水を一振り。

これが毎朝のルーティンとなっていた。


 マネージャーの車が丁度マンションの下に着いていた。


 「お待たせしました。」


 マネージャーは、おはようと短く挨拶をした。

 年の割に童顔だから、学生に見られてもおかしくない。

初めて会った時、35歳と聞いて驚きを隠せなかった事を思い出す。

よく言われるのだろう、苦笑いをしていた。

顔は綺麗というより可愛らしいとい言葉の方が似合う。

ただ、顔とは裏腹に性格が幾分クールなため、根気を逃している。

現在、彼氏募集中出そうだ。

自分で探す事を諦め、お見合い相談所に通おうかとこの間話していた。


 「今日は雑誌の撮影だから。」

 「メンバー全員でしたっけ。」

 「そうよ。」と、相変わらずクールに答えた。


 ここ最近、仕事が立て続けに来ている事もあり、いつの間にか眠ってしまっていた。


 「着いたわよ。」


 だいぶ疲れていたのか、移動時間の約30分間、爆睡をしていた様だ。

まだ、重たい瞼を擦りながら、軽く伸びをしゆっくりと車の外に出た。


 「すごいいい天気だな。」


 行き交うスタッフに挨拶をした。まだ、メンバー来ていないのだろうか。


 「俺、もしかして一番乗り?」

 「いいえ、音弥が来ているわ。他のメンバーは別の仕事があるからそれ終わりに来るわ。」


 音弥、来ているのか。相変わらず早いな。

音弥は、クールな性格で、はしゃいでいる所や怒っている所をあまり見た事がない。

メンバーの中で一番長く一緒にいる。

結成以前から互いをリスペクトし合える関係だ。

ダンスや歌といろんな事を一緒に学んできた。

そして何より真面目で、今日みたいに別の仕事が入っていない時は、大体1時間前には着いている。


 楽屋を開けると思っていた通り、座って雑誌を読んでいる音弥が目に入った。


 「おはよう、早いな。」

 「別の仕事が入っていなかったからな。すみと、何だか眠そうだな。」

 「最近ありがたい事に、めちゃくちゃ忙しいじゃん。やっぱ疲れが溜まっているのかな。ここまで来る間、爆睡だったんだけど。」

 「まぁ、ありがたい事だけどね。でも、休める時は休むんだぞ。体壊したら元の子もないんだからな。」


 相変わらず、体のことにも気を使ってくれる所が優しいんだよな。

クールな上に優しいと来たもんだから中学生の頃、バレンタインで女子から30個もらったと以前インタビューで答えていた。女だったら惚れてたな。

 何の雑誌を読んでいるのか気になり雑誌を覗き込んだ。


 「ファッション誌しか置いてなかったから読んでいるだけ。」


音弥が急に純斗の方を見て言った。


 「何でファッション誌読んでいるの?って顔してたから。」


 昔から不思議だった。音弥は純斗が思っていることをズバズバ当てる。

一緒にいた時間が長い分、純斗も音弥が何を考えているのか大概わかる。

互いに言葉には発さなくても、思っていることがわかるってまるで熟年夫婦のようだ。

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