第2話 歴代総理、伊藤博文、黒田清隆

 少し前のこと、実は安西、球技大会を控えたある日のホームルームで、球技大会野球組のキャプテンに任じられていた。というか押し付けられていた。


 ホームルーム後、それに不安を覚えていた安西、初木に思わずこぼしていた。


「あー、大丈夫かな。俺なんてリーダーの器じゃないっしょ。もっとしっかりしてる人じゃないと。いくらクラス行事のキャプテンなんて形だけっつっても」


 それを聞いた初木、彼を安心させようと言った。


「大丈夫よ安西、リーダーがしっかりしている人ばかりとは限らないわ。たとえば日本の歴代総理」


「え? そうなの?」


「ええ。たとえば、二度総理を務めた高橋是清。彼は若い頃留学したくてアメリカに行き、ホームステイの契約を交わす書類にサイン――したつもりが、その家の奴隷になるという契約書にサインをしてしまい、結局3年間奴隷をしていたことがあるのよ」


「全然しっかりしてないな! それでも二度総理に選ばれてるんだ! なんか安心してきた!」


「他には、かの初代伊藤博文。彼は総理になる前は暗殺者だったのよ」


「ウソ――――ッ!?」


「加えて、イギリス公使館を放火全焼させ、そのことを自慢していたり、首相官邸主催のパーティーで人妻を裏庭で乱暴したりしているのよ」


「全然しっかりしてないとかのレベルじゃねえ! 初代なのにヤベェ奴じゃん!」


「他にも、原敬という総理。とある駅員の上司と部下が話をしていて、上司が『今の日本には腹を切る男気のある奴はいない』と言ったら、勘違いした部下が憤慨し『私は原を切ります!』と誓い、彼に殺されてしまったのよ」


「うん、可哀想だけどしっかりはしてないな! そんな経緯で……なんとかしのいで」


「あとは、黒田清隆。総理になる前、酒乱でたびたび暴力沙汰をおこしたあげく、ある日泥酔して戦艦の艦砲を発射。民家に当たり家にいた少女が死亡。さらに二年後、酒乱で妻を日本刀で斬り殺してしまったという」


「全然しっかりしてねーってか、そんなんばっかが総理大臣になってきた歴史で大丈夫なの日本!?」


「大丈夫よ安西。近年の総理もあんまりしっかりしていないから」


 リーダーってそんな感じで大丈夫なんだ。光明を見出した安西だったが、球技大会では初球でリタイア。そんな彼らのことを笑えないキャプテンぶりだったという。

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