第3話 ニュートン、エジソン、ブルースリー
3月14日、放課後二人で帰っていると、どこかそわそわした様子の安西に、初木は尋ねた。
「安西、今日のあなたはなにか変じゃない?」
「え? そ、そんなかな?」
明らかに動揺する安西を、初木は訝しむ。
「安西、あなた何か隠しているわね?」
「え、いや?」
下手くそなすっとぼけ方をする安西。
「……ふむ、まぁいいわ。歴史上の偉人達にも隠蔽、虚飾の疑惑は付き物だもの。たとえばニュートン。リンゴが落ちる様から万有引力の法則を見出したことで知られる彼だけど、実はその逸話は虚構で、彼にはフックというライバルがいたのだけど、そのフックが先に発見した万有引力の法則をパクったというのが事実らしいわよ」
「マジで!? ひでえしリンゴの話、創作だったのかよ! びっくりだわ!」
「しかも、ニュートンはそのフックの死後、彼の論文、原稿から肖像画に至るまで全て焼き捨ててしまったのよ。盗みを働いたことを隠すためだったのかもしれないと言われているわ」
「黒い! 黒いなニュートン! 毒リンゴ野郎だよ! 地球の引力に魂を引かれて堕落した人類だよ。シャアに粛清されるべきだよ」
「他にも、発明王エジソン。映写機を発明し映画の父とも呼ばれているけれど、実は彼より先に映写機を発明した人がいたのよ。ところがその人は突然の失踪。直後にエジソンが映写機の特許を申請しているの。エジソンが盗作して暗殺したのではないかと言われているわ」
「ダーク! ダークエジソン! 電灯の発明者なのに闇が深過ぎる! 真相は闇の中!」
「あと、マリリンモンローって不倫相手だったケネディに、不倫がバレるのがイヤで暗殺されたきらいがあるらしいわよ」
「ニューフロンティア! アメリカ国民にプライドと自己犠牲の精神を訴えたケネディがなぜ!」
「あと、ブルースリーって移籍されそうだったから、所属事務所の人間に暗殺されたかもしれないらしいわよ。よそ行かれるくらいなら今死んでくれれば伝説となって儲かるということで」
「死亡遊戯と笑えねえ!」
「と、このように名だたるレジェンド達にも隠蔽疑惑が付いて回るのよ。だから安西も隠し事をしていることを後ろめたく思う必要はないのよ」
露骨に咎められた安西、仕方ないなとばかりにため息を一つついた。
「わかったわかった。今出すから。ホラ」
そう言って彼はカバンの中からリボンの付いた包みを取り出し、初木に手渡した。きょとんとする初木。
そう、今日はホワイトデー。バレンタインに友チョコをもらっていた安西。お返しを用意してきたのだが、初木に手渡す品が彼女に気に入ってもらえるかが気が気でなく、渡すに渡せず、ずっとそわそわしていたのだった。
数拍の間の後、ああ、そういえばホワイトデーなどというイベントがあったわね、とはたと気が付いた初木。
「ふふっ、ありがとう安西」
「お、おぉ……」
初木がふっと微笑む表情を見せるのは、結構珍しい。それを見た安西、なんだかドキマギしていまい、むしろよりギクシャクした感じになってしまった、帰宅の途なのであった。
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