第60話 〜あるカラオケシンガーのメモワール〜 


     〜フィリピン〜


     =一九八四年=


       十一月 



       〈六〇〉



  高野さんがまたタバコに火をつけているあいだに、わたしは、おかしなことに、あの人の部屋から愉しむことができるはずの光景をあれこれ思い浮かべていた。…空の青さに染められて波静かに横たわるマニラ湾。西空に広がる荘厳な夕焼け。沖に停泊する何隻もの大型貨物船。

          ※

  「僕がグラスに入れて出したオレンジ・ジュースを一口飲んだあと、アルは話しだした」。高野さんは話に戻った。「アルは、カスティーヨについては、事件が起きてから前夜まで、名前だけは何度も耳にしていたけれども、まだ直接会ったことはなかったし、どんな人物なのかの見当も、実は、あまりついてはいなかった。というのも、[ナヴァロ・メタル]のこの操業アシスタントは、彼の上司であるマルティネスと同様に、およそ一年前にサポーテに出向させられてきた[ナヴァロ貿易]の社員で、昔から町に住んでいる家の人間ではなかったからね。

  「だから、トゥリーナ、カスティーヨの家に着いたとき、アルの心は少し昂ぶっていた。前の日に僕と話したときに示した自信がいくらか揺らぎかかっていた。なぜといって、アルは、マカティで仕事をするビジネスマンたちがどういう類の人間であるかを知らなかったからね。彼らはアルが考えているものよりもずっと〔悪賢い〕かもしれなかったからね。アルの行為を逆手に取って、ほら、彼を一度襲わせたように、あとで何かまた、とんでもないことをやるかもしれなかったからね。

  「けれども、訪問者がだれであるかをメイドに告げられて玄関に出てきたカスティーヨをひと目見ると、アルはたちまち自信を回復した。カスティーヨの顔に恐怖心のようなものが浮かんでいたんだ。…〈思えば、ヒロシ〉とアルは言ったよ。〈カスティーヨにしてみれば、自分たちが襲わせた男がひどく腫れあがった顔をガーゼでおおって目の前に現れたんだからね。彼には、ひどいことをしてしまった、と後悔するか、仕返しされるんじゃないか、と恐れる理由が十分すぎるほどあったんだよね〉

  「アルは、自分はこの男をうまく扱うことができる、と直感した。カスティーヨはアルが予想していたものとは違って、都会の有能なビジネスマンというふうには見えなかった。むしろサポーテの〔小さな金物店の経営者〕ででもあるかのように、影がうすく見えた。アルが住む世界に近いところで生きている人間に見えた」

          ※

  「メイドが下がり、二人の会話を盗み聞きする者がいないことを確認すると、アルはカスティーヨに言った。〈わたしがここに来た理由は分かっていますよね?〉。カスティーヨがためらいながら〈さて?〉と答えたので、アルは単刀直入に言った。〈わたしの甥っ子が〔倉庫〕の中で、どういう状況で火傷を負ったかが知りたいんですよね。それに、ならず者にわたしを襲わせたのはだれかってことも〉。カスティーヨは少したじろいだようだったけれども、まだこう言い張った。〈何のことを言われているのかが分かりませんが…〉。アルは言った。〈おたくの従業員から情報を買おうとした際に用意していた金額の五倍をいまここに持ってきている、とわたしが言っても、まだ何も思いつきませんか?〉

  「〔五倍〕というのは、トゥリーナ、嘘ではなかったんだよ。僕は実は、前の夜アルに手渡した封筒にそれに相当する額のカネを入れていたんだ。アルは言った。〈僕が推測していたとおり、ヒロシ、カスティーヨはその〔五倍〕という額がいくらなのかがすぐに分かったようだった。やはり、それまでの僕の動きはすべて把握していたんだね〉

  「カスティーヨはアルの背後に探るような視線をやりながら応えた。〈だれにも見られていませんか〉。アルは答えた。〈見られたとは思いませんが、どちらにしろ、わたしはあした、昨夜カスティーヨの家に押しかけてみたけれども、〔会社に忠実なあの男〕からは結局何も聞き出すことができなかった、あんな堅物で融通の利かない人間はほかにはいない、みたいな話をあちこちでするつもりでいますよ〉。カスティーヨは家の中へ身を退きながら言った。〈中で話しましょう〉」

          ※

  「小さな居間で二人きりになると、トゥリーナ、カスティーヨは急に大きなため息をついてアルを驚かせたそうだ。アルは手にしていた封筒を、故意に、二人のあいだのテーブルの上に置きながら、カスティーヨの表情をうかがった。カスティーヨの顔は苦痛のようなものでゆがんでいた。アルは僕に言った。〈カネを受け取って会社を裏切るか、受け取りを拒否して会社への忠誠を保つか、という選択に悩んでいるのだと僕は思っていたんだけども、ヒロシ、どうやら、そうじゃなかった。彼は唐突にこんな告白を始めたんだ〉

  「カスティーヨの告白というのは、トゥリーナ、手短に言ってしまえば…。ルーベンの事故に関する[ナヴァロ・メタル]の対応には、実は、自分はうんざりさせられていた。アルへの襲撃のことでは、アルにはすまないことをしたと思っているし、[ナヴァロ]のそんなやり方にはがまんならない。アルを襲撃させてまで会社の利益を守ろうとした幹部たちの経営スタイルにはすっかり懐疑的になってしまった。…そういうものだった。その段階でのアルはまだ、カスティーヨはカネを受け取る自分を正当化したくてそんなことを話しているのだろう、と思いながら耳を傾けていた。

  「カスティヨはそのあと、トゥリーナ、自分が懐疑的なった経過と理由をこんなふうに説明したそうだ。…[ナヴァロ・メタル]の操業責任者であるマルティネスとそのアシスタントであるカスティーヨ自身は、アルとその仲間が最初に〔倉庫〕にやって来るまで、ルーベンの火傷のことは何も知らなかった。だから、マルティネスは、事務所に顔を出したガードマンの一人に〔七、八人の男女が訪ねてきて面会を求めている〕と告げられたときも、それが何のための面会要求かはすぐには分からなかった。カスティーヨもしばらくは、そのガードマンの報告を聞きながら、のんびりと紅茶をすすりつづけていた。

  「マルティネスのオフィスのそんな雰囲気を一変させたのは、ガードマンが〔彼らは、ルーベンという名の子供が酸で火傷を負ってどうのこうのと言っている〕と報告したときだった。マルティネスはたちまち表情を固くして、ガードマンに、アルたちを門の外に出して〔俺はきょうはだれとも会わない〕と伝え、あとは、彼らとは一言も言葉を交わさずに、門を固く閉じておけ、と命じた。

  「それでも、アルたちは門前から立ち去らず、面会要求をくり返した。マルティネスはカスティーヨに〔[ナヴァロ・メタル]の建造物・敷地内に不法に侵入した者に起こったことについては、[ナヴァロ・メタル]はどんな責任からも免除される〕という主旨の声明文を、とりあえず、訪問者たちに手渡すよう命じた」

          ※

  「マルティネスの動きはすばやかった。彼は次に、門前のグループにはどこのだれが加わっているかをガードマンたちに確認させておくようカスティーヨに指示した。カスティーヨ自身も、門と扉のすき間から外を覗いてみて、何人かの身元を確認した。ガードマンたちとカスティーヨ自身が確認したところでは、門前のグループは、ルーベンの親類が三人、近所の住人が五人という構成になっていた。マルティネスのカスティーヨへの次の命令は〔ルーベンの親類の三人は外して、ほかの五人をその日の内にも訪ね、この出来事には首を突っ込まない方が賢いということをよく言って聞かせろ〕というものだった。マルティネスはさらに、〔倉庫〕内の数個所に〔会社の操業内容については、外部の者には一切、何も話さないように。この命令に背く者は即刻解雇されることがある〕という内容の警告文を改めて張り出すようカスティーヨに命じた。カスティーヨは指示、命令されたとおりに動いた。

  「その警告は、トゥリーナ、もともとは、だれかが〔倉庫〕に忍び込んで選り分け済みのスクラップメタルを盗み出そうとするのを防ぐために出されていたものだったそうだ。だけど、今度の警告は、明らかに、〔倉庫〕内で〔酸〕を使用していることを隠す狙いで出されたものだった。…カスティーヨはそう受け取っていた。マルティネスには〔酸〕の使用を外部に知られないようにしなければならない理由があったからね」

          ※

  「アルの勘は当たっていたよ、トゥリーナ。つまり、〔倉庫〕の中では、やはり、〔不法なこと〕が行なわれていたんだ。カスティーヨがアルに話したところによると…。

  「僕たちももう知っているように、トゥリーナ、[ナヴァロ・メタル]が創設されたのは、小さく切断された自動車のスクラップメタルをアメリカから輸入して、それを作業員の手でメタルの種類ごとに選り分け、分けられたメタルを日本の精錬所に売るためだった。その選り分けを〔倉庫〕が受け持っているのだけれども、この作業が案外に手間のかかる仕事だった。切断されたそれぞれの塊に数種類のメタルがくっつき合っていることが多いからだった。ところが、アルミニウムに関しては、ほかのメタルから分けるための、手作業よりももっと簡単で経済的な方法があった。ほかのメタルは残してアルミニウムだけを溶かす〔酸〕を使用するというものだった。この方法だと、アルミニウムはあとで簡単にアルミニウムだけの延べ棒にすることができるそうだ。…で、[ナヴァロ・メタル]はこの方法を採用した。そして、この方法自体には何の問題もなかった。

  「問題は…。僕はいま、〔経済的な方法〕と言ったけれども、トゥリーナ、酸の使用を―カスティーヨの言葉によると―〔さらに経済的〕にする方法があった。使い終えた酸の中和処理工程を排除するというものだった。…そして、実際に[ナヴァロ・メタル]は、当初の設備費用を省くため、さらには、操業開始後の選り分けコストを低く保つために、アルミニウムをほかのメタルから分ける際に使用した酸の中和処理を一切やらないことに決めていたんだ。…法律と企業倫理に反していることは承知の上で」

          ※

  「カスティーヨによるとトゥリーナ、マカティの[ナヴァロ貿易]と日本の[東海メタル・リサイクリング]とのあいだで重大な討議があったのは、一年と少し前、カスティーヨがまだその貿易会社に所属しているころ、選り分け作業が現実に始まる数か月前のことだった。議題になっていたのは〔酸の中和設備はいますぐ必要か〕ということだった。[東海]が急に、それまでの計画を変え、その設備の備えつけを二年後に延期する、と言ってきたからだった。

  「[ナヴァロ貿易]は、中和設備は何としても、できるだけ早く必要だ、と主張した。第一に、天然の土地に―たとえ使用ずみのものであるにしろ―酸を投棄するのは違法行為だった。第二に、酸を投棄したことが原因となって、将来、不測の事態が起こるかもしれなかった。周辺の池や小川、地下水の汚染。農地への影響。

  「[ナヴァロ貿易]の幹部の中で最も〔中和設備〕を求めたのは、トゥリーナ、カスティーヨによると、あのミスター・チャヴェスとカスティーヨ自身だった。ミスター・チャヴェスは[貿易]の衣料部門での経験から〔品質管理〕の信奉者だったから、中和施設なしでは絶対に操業を開始するべきではない、とまで言いきっていた。

  「一方、[東海]は頑迷に、操業初年度に利益を出すことがこのヴェンチャーにとっていかに重要かを強調した。[東海]は、最初の二年間に利益がでないようならこのヴェンチャーから撤退することになる、と[貿易]を脅すこともいとわなかった。

  「両者の電話での議論は、毎日小一時間ずつ、数日間にわたってつづいた。[貿易]はすでにサポーテに場所を確保していた。多くの時間と資金をこのヴェンチャーのために費やしていた。…決断を下したのは[貿易]のオーナー社長であるミスター・ナヴァロだった。彼は幹部たちに〔いまさらこのヴェンチャーを失うわけにはいかない〕と告げ、[東海]に、彼らの二年後設置案を承諾すると伝えた。ミスター・チャヴェスは〔[東海]には初めから中和施設をつくるつもりがなかったのかもしれない。二年後もまたおなじことを言い出すかもしれない〕と抵抗したけれども、〔その心配はそうなってからすればいいことだ。思えば、初年度から利益がほしいのはこちらもおなじなのだから〕と社長に一蹴された。ミスター・チャヴェスも結局は社長の決断に従うしかなかった。

  「僕と電話で話したときのミスター・チャヴェスは、トゥリーナ、サポーテでのヴェンチャーにすごく誇りを抱いているように聞こえたけれども、あの話の裏にはそんな確執が隠されていたんだね」

          ※

  「ところで、トゥリーナ、ナヴァロ社長の決断を一番熱心に、無条件に支持したのは、当時はミスター・チャヴェスのアシスタントとして働いていたマルティネスだったそうだ。…そのマルティネスには褒賞として、あとで、〔倉庫〕の操業責任者という地位が与えられた。

  「カスティーヨが急に感傷的な口調になったのは、話がそこまで来たときだった。彼はアルに唐突にこう言ったそうだ。〈ミスター・ナヴァロがまだ生きていられたら、あなたの甥も火傷を負ってはいなかったでしょうに〉」

  「アノ(何ですって)?」。わたしは口を開いた。

  「何を言われたのかは、トゥリーナ、アルにも分からなかった。アルがそこまで聞いてきた限りでは、酸の中和施設の設置を遅らせる決断をしたのは、つまりは、ルーベンの火傷の原因をフィリピン側でつくったのは、そのミスター・ナヴァロだったからね。

  「カスティーヨの説明はこうだった。…二年間は不法操業でいこうと決断したナヴァロは、三年前にこのヴェンチャーの件で[東海]と話を開始した[ナヴァロ貿易]の創業社長、ミスター・ナヴァロの実弟で、兄の方は、ヴェンチャーの操業が開始されるおよそ一年前、いまから二年ほど前に、胃がんで急死している。

  「カスティーヨはこうつけ加えたそうだよ。〈兄のミスター・ナヴァロは、積極的で意欲的な事業家でしたけれども、一方で、倫理感も人一倍備わった人物でしたから、こんな不法操業はさせていなかったはずですよ〉」  「ということは、高野さん」。わたしは小さな声で言った。少しだけ救われた思いがしていた。「あなたのお友だちの吉田さんが[東海]に紹介したミスター・ナヴァロはこの件には直接関わってはいなかったわけですね?」  「ああ、そうなんだ、トゥリーナ」。高野さんの顔にもかすかに笑みが浮かんでいた。「吉田が知っていたミスター・ナヴァロには、従業員たちに不法操業を命じる機会などなかったんだ。吉田の人物選択が誤っていたから、結果として、ルーベンが火傷させられてしまった、というわけではなかったんだ。…正直に言うと、トゥリーナ、アルの話を聞きながら僕はほっとしていたよ。いくらか免罪されたような気がしてね、吉田と僕自身が」

  わたしは大きくうなずいた。〔免罪〕という言葉は二人が置かれていた状況にふさわしいものではない、と感じながらも。

  「弟のナヴァロは」。高野さんはつづけた。「[貿易]を遺産として引き継いだんだ。…兄が[貿易]を動かしていたとき、関連する縫製工場の監督を任せられていたこの弟は、カスティーヨの目には、自分のビジネス能力を周囲の者に示すことに熱心すぎるほど熱心な人物に見えていた。カスティーヨは冷ややかに笑いながらアルに〔あの人のその熱心さが不法操業の承諾となって表われたのは不幸なことだ〕と言ったそうだよ」

          ※

  「[東海]と[貿易]のあいだにある種の妥協が成立した」。高野さんはつづけた。「酸の中和処理設備のために二年後に再投資することを[東海]が書面で約束するのに対して、[ナヴァロ・メタル]の操業に現場で当たる[貿易]は、当座の処置として、浅い、天日の当たるため池を、すでに買い上げていた選り分け作業所用地内にいくつか掘り、そこに使用ずみの酸を〔保管〕しておくことにしたんだ。…乾季には酸が自然に乾きあがってくれることを望みながらね。

  「話の公正さを保つためにつけ足しておくと、トゥリーナ、[ナヴァロ・メタル]は危険をいくらかでも小さくしようとはしていたそうだよ。〔保管〕している使用ずみの酸をできる範囲内で安価に中性化させるために、定期的に消石灰を池に散布するという形で。…池の水があふれる心配がある雨季には散布回数を増やして。でも、それでは足りなかった。その池で、ルーベンは火傷を負ってしまった。…そうとしか考えられない、とカスティーヨはアルに言ったそうだ。

  「ところで、トゥリーナ、〔倉庫〕の裏の板塀の下の部分に小さく開いていた穴には、[ナヴァロ]の人間はだれも気を配っていなかった。その池がある〔空き地〕とスクラップメタルが置いてある屋内作業場とのあいだは、ふだんは、鍵のかかったドアで完全に隔てられていたし、穴は、そこからおとなのだれかが忍び込んでスクラップメタルを盗み出すのではないか、と考えるには小さすぎたからね。〔空き地〕はガードマンたちの監視の対象にもなっていなかったんだ」

          ※

  「アルと彼の親類の者たちが二度目に〔倉庫〕を訪れたとき、マルティネスが一番恐れていたのは、酸の不法投棄が外部に知れ、当局に訴えられるようなことになれば、自分は解雇されるのではないか、ということだった。…罰金、操業停止、酸の中和設備の即刻備えつけ。当局が出してくるはずの命令は、[東海]と[貿易]に莫大な負担を強いるものになるに違いなかったし、一方、そのような公的措置を避けようとすれば、役人たちへの賄賂がまた多額なものになるのは間違いなかったからね。マルティネスはそんな事態になったことに対する責任を負わせられたくなかった。どんな手段に訴えても、酸のことは隠し通さなければ、と考えた。彼はカスティーヨに改めて、すでにこの件に首を突っ込んでいる数人の町民と従業員全員を脅して、アルといっしょには行動させないようにしろ、アルとは話させないようにしろ、と命じた。

  「マルティネスの〔脅し〕が功を奏して、ルーベンの近所の人たちはもうアルに近づこうとはしなかったし、従業員たちの中からも命令違反者は出なかった。マルティネスは、サポーテで起こっていることを[貿易]に報告する必要はないだろう、と考えた。その段階の彼には、町で〔騒音〕を立てることがいかに難しいかがアルにも分かっただろうから、〔倉庫〕がいくらかの見舞い金をルーベンに払うと言えば、彼はすぐにも事を収めるだろう、という読みと自信があった。当局に訴え出ても、アル自身には得るところが何もないのだから、とマルティネスは考えていた。

  「だから、トゥリーナ、アルが〔倉庫〕の従業員を買収して情報を聞き出そうとしている、という知らせは、マルティネスには、予期していなかった、事態の急変だった。マルティネスにとっては、だれかを買収するだけのカネがアルにあるということは、彼は〔いくらかの見舞い金〕ぐらいではおとなしくならないだろう、ということを意味していた。アルはそれぐらい〔危険な〕人物だということだった。しかも、マルティネスは自分自身が、カネでアルを黙らせることができるはずだ、と一度は考えた人間だった。彼は、アルが提供しようとしているカネを受け取る従業員など一人もいないはずだ、と楽観的に構えているわけにはいかなかった」

  

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