私の最愛の人は凄い人過ぎる

私の最愛の人……西園寺さいおんじ 遥香はるか。現在年齢は38歳で、後2年で40になる人と思えない程若く、100人中100人が20代前半と答えるだろうと言っても過言じゃないぐらいである。

彼女が高校生だった頃は、長い黒髪をなびかせていたけれど、今は遥美と同じぐらいのミディアムヘアーであるが、あの頃のサラサラでツヤツヤな感じは一切失われていない。

そして、現在彼女は目が悪い訳でもないのに伊達眼鏡をかけている。それは、彼女の職業的になんとなく似合うからという理由もあるのだが


「これで真由美とお揃いね♡」


と、滅茶苦茶いい笑顔で言われた。うん。遥香。確かに私も眼鏡かけてるけど、眼鏡かけて理知的美女になってる遥香と、地味眼鏡おばさんの私じゃ全然揃ってないよ……


そんな彼女は、現在尚も急成長を続ける大企業「西園寺グループ」元会長の一人娘という肩書きもあるのだが、現在は別の肩書きもあったりする。それは、彼女の現在の職業にも大きく関係している。彼女の現在の職業は生物学研究者である。


彼女は私と初めて出会った(本当は初めてじゃなかったけど、あの当時は覚えていなかったので)私立藍那高等学校を卒業後、生物学研究で有名だった某大学に入学。その後ひたすら一学生とし生物学を学び、そして、彼女は卒論の研究で世界を賑わした大きな研究成果を発表した。



それは、「精子と精子。卵子と卵子を繋げて、子を産みだす。MH技術」である。

これにより、男性同士・女性同士でも子が授かる事が出来る事となり、この発表に世界中が大いに湧いた。世界中のマスコミが西園寺 遥香と、遥香が連れてきた2人組の男性同士・女性同士のカップル。そして、そのカップルが嬉しそうに抱いてる我が子を見てマスコミのシャター音が鳴り響いた。


そして、私はそんな風に取材を受けている遥香をテレビで見ていた。1番の被験体である私が、成功例である産まれたばかりの遥美を抱きながら……

最初こそは私も取材を受けなきゃいけないんじゃないかと言ったのだけど


「嫌。私の真由美と私の可愛い我が子を晒し者になんかさせてたまるもんですか。全く……こんな騒ぎになるぐらいなら真由美に産ませた後海外に高飛びするべきだった……」


などと、本気の目をしながら黒いオーラを放ってブツブツ文句を言っていた。


最初こそ、遥香の発表に半信半疑だったが、世界中の同性カップルが次々とこの技術を試した結果、子を授かった事が分かり、それならばと、次々と影で尻込みしていた同性カップル達がこの技術を受ける事を志願した。

すると、どうなったかと言うと……日本では昔少子高齢化が騒がれていたが、同性カップル達が、次々とこの技術によって、自分達の愛の結晶を産んでいった為、これにより少子化という問題を日本は脱したのである。更に、この技術により、日本だけでなく世界中が同性婚を認めた。


以来、遥香は「同性カップルの悩みを解消してくれた女神様」「日本の少子化を救った女神様」なんて呼ばるようになった。その為か、遥香はその大学の研究員として在籍する事になった。本人は物凄く嫌がっていたけど、私の事を公表しない事と、私との時間を作ってくれる事を条件に在籍を承諾したという。



で、そんな世界中に絶賛された女神様は現在……私を完全に押し倒してマウントポジションをとっていた。遥香の目は完全に獲物に食らいつこうとしている獣になっている。マズイ……!?こういう目をした遥香は色々マズイのである……!?


「ふ〜ん……私は研究で忙しい中で久々に家族みんなで揃う朝ご飯時に、真由美は私を死んだものと扱うんだね〜……」


「えっ……いや……だから……そのアレはね……ちょっと遥美の冗談に乗っかってみようかなぁ〜……って思っただけで……」


私が冷や汗ダラダラ流しながら言い訳するも、遥香は私の言い訳を全く聞いてくれない。ふと、遥香の口元を見てみると……若干ニヤついていた。ちょっ!?もしかして遥香!?最初から私にそういう事するつもりで私のちょっとした罪悪感につけこんだの!!?


「そんな悪い事考える真由美にはお仕置きが必要よね♡」


物凄い妖艶タップリ笑顔でそう言う遥香。


「ちょっ!?まっ!?遥香!?ここは台所で!!?」


しかし、そんな私の言葉を遥香が聞いてくれるはずもなく、遥香の綺麗な顔がドンドンと私の顔に近づいていき……


スパァ〜ーーーーーーンッ!!!!?


そんな時、遥香の頭を誰かがスリッパで叩いた。この家で遥香にそんな事出来るのは1人しかいない。


「いい加減にしてください。遥香お母さん。もう真由香も席についてますよ」


片手にスリッパを持った遥美が自分のもう1人の母をジト目で睨んで説教する。


「どうせ今日一日お休みなんでしょう。真由美お母さんもそれに合わせて塾講師のアルバイトを休みにしてますし。ですから、そういう行為は私達を見送った後にしてください」


私達がこの後何をするのかも察してるかのよな長女の発言に遥香だけじゃなく私も押し黙る。


「それに、早くしないと真由美お母さんがせっかくの家族揃っての朝ご飯だと、鼻歌交じりで用意した朝ご飯が冷めてしまいますよ」


遥美はそれだけ言うとさっさと自分の席に座る。そんな遥美をしばし呆然と見送っていた遥香だったけど、無言でゆっくり立ち上がって自分の席についた。

私は思わず苦笑を浮かべながらも、若干乱れた服を整えて私も自分の席に座った。




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