ロールシャッハテスト

 Mさんが子供の頃の話だ。

 Mさんの実家の近くには川があった。決して大きな川ではなかったが、農地の多かったその地域には必要不可欠な川だった。

 そんな川であったが、なぜだかごみが捨てられていることが多々あった。

 Mさんが知っている中でも一番大きいのはどこから業務用の冷蔵庫だという。その他にも空き缶から、扇風機まで色々な家庭ごみまでその川に投げ捨てられていたという。

 そんなある日、Mさんが友人と下校途中でその川にかかる橋に差し掛かるといつものように川にゴミが浮いていた。

 ぷか、ぷかと少しずつ移動しながら近づいてくるそれに目を凝らすと、そう大きくはないテディベアだと気が付く。

 右半分を水のなかに沈めているが、水面に出ている部分が水面に映っているので違和感はなかった。

 流されて少しずつ近づいてくるそれに釘付けになっていると、Mさんたちのわたっている橋のちょうど真下に差し掛かる。その時ようやく異変に気が付いた。

 水面に映るテディベアの顔が怒りに歪んでいるのだった。

 あっと思った時にはもう橋の下にもぐってしまっていて、テディベアの姿は見えなくなっていた。

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