鳴き声
これはCさんの実家の話。
Cさんの実家は郊外の一軒家である。十数年前にそのあたり一帯で宅地開発が行われ、Cさんの住む地域には横並びに5軒の家が建てられた。
6年ほどして、Cさんの家の左隣の7人家族の家が引っ越して行き、左隣は二年ほど空き家だったという。
その後、左隣の引っ越してきたのは一組の老夫婦だった。前述したとおり、もともと左隣の家は7人家族が住んでいたので、なかなかの大きさがあったので老夫婦が越してきた時には二人には大きすぎるのではないかと周りの住人は心配していたが、その老夫婦はそんな心配は物ともせず、一回を居住空間にして、二階は趣味で小鳥を買う部屋にしていたようだった。
神経質だったCさんは初めは鳥の声が姦しくないかなどお心配していたが、よくよく考えてみれば、鳥は夜中は眠ってしまうので姦しく騒ぐなどということはなく、平和な日々が続いた。
それどころか、左隣の家の二階の窓から見える鳥かごに入った小鳥に癒されているほどだった。
それから数年して、老夫婦の旦那の方が亡くなった。喪が明けたころから、左隣の家はカーテンを閉め切るようになった。もちろん、鳥のさえずりも聞こえなくなったが、残りの四軒の中では奥さん一人で飼いきれなくなったから、どこかにやってしまったのだろうという話にが出回っていた。
それから数か月して、奥さんの方は引っ越していった。噂では介護施設に入居したらしかった。
引っ越しに際して、カーテンなどが取っ払われたが、二階の窓にはやはり鳥かごと鳥の姿はなかった。
それから、Cさんは数年実家を離れたが、最近実家にまた身を寄せているらしい。
風呂場が左隣の家に面しているそうだが、夜風呂に入っていると、鳥のさえずりが聞こえるのだという。
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