ぺらぺら4枚目

 

 これはバイトの先輩から聞いた話。


 その人には誕生日ごとにバースデーカードを送ってくれる知り合いがいるらしく、毎年春になると可愛らしいカードがその人の所にやってきていた。

 先輩もマメな人であったから、そのバースデーカードが届いた数日以内には便せんに返事をしたため、近況報告などをして、返礼をしていたそうだ。

 その年もそのバースデーカードが届いたらしいが、その時ちょうど先輩は風邪をこじらせていて外出することがかなわなかった。そうして、一週間ほど経って体調が戻ってから、返事がおくれたことの詫びと、近況の報告をして、近所のポストに投函しようとしたその時だった。

 ポストの投函口から二つの女の目玉がぎょろりと覗いていたという。

 入り口は薄っぺらい投函口しかないわけだが。

 手紙は無事にたどり着いたのかと聞けば、


「さぁ? 知らない」


 とのんびりとした声が返ってきた。

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