ぺらぺら3枚目
これは父から聞いた話。
父は整備工で、K県にある工場に務めている。
工場内は非常に広く、会社が用意した車で移動するわけだが、その車が非常にボロなのだという。
アクセルを踏めばガタピシと鳴き、ブレーキを踏めばガタツクと鳴く。あまりにも心配だからと、上司に何度か買い直せと進言していたが、色よい返事はもらえていなかった。
冬のとある日の事、とうとうその車がお釈迦になり、二週間もしないうちに新車がやってきた。
本当に新車だ。誰の手あかもついていない、扉を開ければ、あの座席の独特なプラスチック臭までする。
今まで会社に下げ渡されてきたものはすべて中古車だけであったから、父も驚いたのか上司にそのことを聞けばその人からは「あれは中古車だよ」と短い返事が聞こえてきた。
さて、それでも新車同然の車など、若いころの父は中々乗れるものでもなかったから、その感触を楽しんでいた。しかし、しばらくしてからだった。
車好きの父の先輩が「あの車変だ」と言い始めた。
その理由を尋ねれば、「車軸に何か巻き付いてる」とさえいうので、そんなわけあるはずがないだろうと確かめることになって、車の下にもぐってみれば。
後ろが透けるくらい薄く引き伸ばされた人の足がパーツの隙間から見えたという。
その後その車がどうなったか、父は教えてくれなかった。
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