18話 球技大会 その2

 本日は1日、球技大会が行われるので、通常授業はお休みである。お昼休憩を挟んで、また試合再開となる。さあ、今のうちに作戦会議をしましょうか?

私達のチームは、夕月ゆづがチームのリーダーである。そして、夕月ゆづが、主に作戦を考えてくれている。


鷹野たかの君が、やけにサッカーの試合ばかり出ているみたいね。そう思っていたら、うちのクラスのバレーチームは、っくの昔に負けていたようである。

相手チームには、バレー部員が居なかったものの、対戦相手はようですわね。呆気なく負けてしまったらしいの。


詳しく話を聞いて分かったことは。どうやら対戦相手はB組のチームで、飛野ひの君が出場していたそうである。その話を聞いて、なるほど、と納得してしまう。

飛野君ならば、バレーボール時の跳躍力は半端ないのだから。B組の場合は、これは他を捨てたということね?


B組のように、1つの競技に絞って、強いチームを作るクラスは意外と多い。

3競技とも優勝するわけがないのだから、どれか1つに絞って勝利を目指すのだ。

つまり、他の競技は、最初から捨てていることとなる。内部生のクラスでは、よく使う手でもある。外部生のクラスは、初めての経験であるから、全ての競技にきっと全力で取り組んでいるだろう。


我がAクラスは、どちらかというと、当初からバスケとサッカー2競技に、絞り込んではいた。サッカーは、鷹野君が割と得意だと言う話であったので。最終的にはどちらかがある方に、賭けるつもりで。流石に、私達も2競技とも優勝できるとは、思っていない。…バレーボールは、負けるのが前提だったのよ。


今のところ、バスケとサッカー両方が勝ち残っている。バスケは、今現在対戦しているこの試合、C組との対戦試合が、学年別では最終試合となる。やはり強敵は、C組のようである。特に、アコたんの活躍が凄い!そして、古河こが君も同様である。2人の連携プレーが強過ぎる。


C組は、このバスケに全て賭けていると見た。夕月ゆづが漸くゴールを決めても、すぐにアコたん達も点を取り返しに来て。皆、必死に相手チームにパスさせないよう、徹底的にマークをして阻止しているのだけれど。


それは、C組も同じ条件であり、中々の接戦状態である。どちらかのチームが、終了までに1回でもシュートに成功すれば、分からない状態なのである。今は、それ程の僅差しかない。

夕月ゆづも完璧にマークされており、なかなか相手の隙をつく動きが出来そうにない。


相手チームがドリブルしていたボールが、我がチームのパスの阻止で、偶々というか偶然というか、私の所に飛んで来た。私の心臓は、早鐘のようにドキドキしたけれど、何時ものように、投げたいと思う方とは違う方向へ、何とかボールを投げ飛ばす。少しでも遠くへ飛びますようにと、祈りながら。


必殺技として飛んでいく筈の本来の位置とは、ちょっと思ったよりも外してしまったみたい。私が狙った場所には、夕月が居る。夕月なら、絶対に取ってくれる。

外したと思った時は、青ざめたけれど、夕月ゆづは予測してくれていたようで。

見事、無事キャッチしてくれていた。

そして、そこからロングシュート!間に合って!決まったの!?


その時、ピーと笛が鳴る。試合終了の合図であった。シュートが決まったのと、ほぼ同じぐらいだったと思うわ。周りの歓声が、一気に大きくなった。「北岡君のチームが勝ったわ!」と、クラスに関係なく見学していた女子が、きゃあきゃあ騒いでいる。う~ん、自分のクラスは応援していないの?


 「やった~!学年優勝だ ‼」

 「やったぜ!これで2・3年の代表と、対戦出来る!」


周りでは、A組のクラスメイト達が、ハイテンションで大騒ぎしている。飛び上がって喜ぶ者、友人と抱き合って喜ぶ者、私達に駆け寄って来て抱き着いたり、手を握ってブンブン振ったりする者、嬉し泣きしている者、皆様々な喜び方である。


既に、全試合が全滅したクラスもあるようで。その為、今の私達の試合には、見学者が大勢いた。内部生は兎も角、外部生も沢山おり、皆、夕月が目当てで応援していたらしい。夕月ゆづが最後にシュートを決めたことに対し、うっとりした様子で見つめている。そして、自分のクラスのごとく勝利を喜んでいた。

女子達が騒ぐ傍らで、男子達が複雑そうな顔をして…。


そんな中、夕月ゆづは試合が終わると、すぐ移動の準備をしていた。そして私に対して、「先に行く!」と声を一言掛けると、急いで体育館を出て行った。

多分、サッカーの試合に、途中参戦するつもりなのだろう。




        ****************************




 体育館に居たA組のクラスメイトと一緒に、運動場へ移動する。サッカーの方でも、H組との最終試合をおこなっていた。前半はもう終了していて、後半が始まったばかり。夕月ゆづは、後半から途中参加出来たようである。まだ、どちらのチームも、点数はそんなに大差なかった。

一応、うちの組のチームが、リードしているようですが。


このサッカーの試合も、最終試合というのもあり、かなり注目されている。もう殆どの対戦試合が、終了していたから、仕方がないだろう。後は、優勝したチーム同士が、対戦するのみなのだから。見学者の中には、2・3年生と思られる人達も、見に来ているようである。


夕月ゆづと鷹野の連携は、とても素晴らしかった。鷹野のパスは的確で、自分が囮で引き付けてから、マークを振り払った夕月ゆづにパスをしている。

その頃に気が付いても、既に遅しという感じで、夕月ゆづは一気に加速して行き、あっという間にゴールする。の状態である。


対戦している相手チームは、ほとんど対応出来ていなかった。頭脳戦と心理戦を上手く利用して、肉体的にも追い込んでいるのだろう。この2人だからこそ、出来る作戦かもしれない。でも、相手チームも、やられているばかりではない。


H組には、かなりの運動神経の男子生徒が居たのだ。彼1人で、持ち堪えている感じがした。鷹野君の行く手を妨げ、夕月ゆづの動きに食らいついていく。

なかなか根性のある人物だと、感心する。しかし、鷹野君も夕月ゆづもファインプレーで、彼の上をいく勢いであった。


その時、ピーと笛が鳴り、サッカーの試合も終了となる。少なくとも、夕月ゆづが加勢してからは、敵チームが自滅するように負い込んだみたい。夕月ゆづ達の作戦勝ちですわね。結果として、A組は、サッカーも学年優勝したのよ。夕月の活躍が凄いですわ!流石に、2つの競技で優勝が取れるとは、思いませんでしたもの。


その後は、総合優勝を決めるべく、サッカーとバスケとバレーバールの3試合が一斉に、開始されていた。優勝したチーム同士の対戦である。各学年それぞれの競技で、1チームずつない為、勝ち抜けではなく、3チームの内で何回勝利したかで決まるらしい。3回全勝は勿論、2回勝利で総合優勝である。引き分けはなしなので、延長で先に点を入れた方が勝ちとなる。同時刻から試合が始まり、ここからの対戦は、掛け持ちは絶対に不可能である。


先程同様に、バスケは夕月ゆづが出場し、サッカーは鷹野が出場すると言う具合に決まった。経験豊富な2・3年生は、かなり強豪であった。流石の夕月も、パスが簡単には通らず、苦戦を強いられていた。私のパスは対策済みで、私もマークされていて、ボールに触れるのも難しかったぐらいに。結果的には、バスケは、何とかギリギリ総合優勝を勝ち取ったわ。


夕月も徹底的にマークされて、パスするどころか、身動き取れないぐらいに固められていたわ。でも、夕月は予想していたようで、代わりの他のクラスメイトが活躍していた。相手チームの守りが、夕月や私ばかりに集中し過ぎたのが、幸いだったわ。他の部員は、殆どノーマークみたいなものだったのよ。

一度、体勢が崩れると、意外と脆かったのです。まぁ、お陰で戦略勝ちですわね。


夕月ゆづは、其処を衝いて心理戦に持ち込んでから、後は頭脳戦にて追い込んでいく。夕月ゆづのお得意戦法の1つですわ。夕月ゆづって、敵には人物なのです…。容赦がなくて、ある意味怖い…。


残念ながら、サッカーのチームは、途中で敗退したようで。最終戦の後半ぐらいしか試合を見学出来なかった。応援していないから分からないけれど、やはり実力差なのだろうか?力一杯頑張って負けたのなら、実力差がある分、仕方がない。


鷹野君も頑張ってくれたようですし、夕月ゆづとの連携がなくなった分も、割と大きかったようですもの。パスしても次が続かなかったり、ゴールで失敗したりしたようで。鷹野君の言い分では、上級生の迫力に、皆が飲み込まれてしまったらしい。緊張が解れなくて、りきんでしまったようなの。残念だわ。


まぁ、ご褒美の権利を1つ貰えたのだから、良しと捉えましょう!

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