17話 球技大会 その1

 今日は、全学年参加での競技大会当日である。公立の学校では、男女別で行うという話を聞いたけれど、この学苑では、男女混合でのチームを組むことになる。

ひと学級は、大体30~35人程にクラス分けをされている。

その為、バスケ、バレーボール、サッカーの3つに分かれて、1チームずつが丁度出来ることになる、計算である。


各々の学級でチーム分けした後、人数的に少人が余る学級も、偶に存在する。

体育委員が中心に準備を行っているので、チームに配属されなかった生徒は、その手伝いに回ったり、予備の選手として待機したりすることになっている。

体育委員も含め、全生徒参加なので、予備選手も交代して試合に参加するのだ。


各学年毎に対戦して、最終的に勝利したチームが優勝となる。でも、これだけでは終わらない。その後、他の学年の勝利チームと、更に対戦することになるのだ。

この試合に勝利をすると、何と理事長から、が貰えるらしい。


そのご褒美が何かは、毎年変わるという噂なので、よく分かってはいない。

他言無用と言う決まりがあるらしく、ご褒美を貰った生徒にしか分からない、という仕組みとなっているようだ。要するに、とされている。


試合は、バスケ、バレーボール、サッカーの3つに分かれているので、其々で勝利をすればいい、という条件である。学年別の優勝でも、チョットした筆記用具等のご褒美があるようなのだ。勿論、ただ単に、ご褒美が目当ての者もいると思う。

その事を覗いても、他の学年との対抗試合は、それなりに好評であり、毎年かなり盛り上がっているという話である。


我がA組では、夕月ゆづが、バスケとサッカーの掛け持ちをすることに決まっている。他には、『鷹野たかの』君という男子生徒が、サッカーとバレーボールの掛け持ちで、出場することになった。鷹野君は、確か運動部に所属していた筈で、運動神経が抜群なの。同じクラスになったのは初めてだから、あまり詳しい事情は知らない。


私は、バスケにのみ出場することに…。私の場合は、消去法なのですもの。

仕方ありませんわ。出来れば、どの試合にも出場しないことが、1番の望みです。

私が出場したところで、足を引っ張るのが目に見えていますもの…。

自分で考えていて、悲しくなるわ。


B組は、映像部の『飛野ひの』君と運動部部長だった『アユちゃん』、C組は、同級生だったことのある『古河こが』君と同じく『アコたん』、D組は、映像部の『木島きじま』君と、去年のクラスメイト『チーちゃん』が、それぞれ競技の掛け持ちするという情報が、入って来ていた。


試合中の途中参加は、可能ではある。しかし、試合中の途中退場は、どんな理由があろうと認められていない。試合の重複時には、どの試合を優先するのかで、負けてしまう場合も稀にあるのだ。だから、充分に気を付けないといけない。

競技の掛け持ちを担当する生徒達は、責任重大ですわね。


サッカーは運動場、バスケは体育館、バレーボールは多目的ホール(別名:第二体育館)で、おこなわれることになっている。各競技ともに、2試合ずつ同時に対戦可能なのである。競技の掛け持ちの生徒達は、その移動時間も考えなければいけないのだから、大変ですわね。


試合待ちのクラスメイト達が、待ち時間の間は、自分のクラスのチームの応援に集中出来るようにと、対戦の順番などは、体育委員が考慮してくれている。掛け持ちの生徒のことも、一応考慮されている。しかし、全く時間が重ならないよう対戦を組むのは、不可能であろう。


その上、勝てば勝つほど出番が多くなることになり、掛け持ちをしていれば、当然最終的には重なってしまう。だから、試合中のどの辺りで退場するとか、そういう駆け引きも必要となり、それがにもなってしまうようである。




        ****************************




 愈々いよいよ、私達が出場する試合が始まった。同学年の全てのチームと対戦する方式ではなく、勝ち抜き戦方式である。同点でも時間延長はなく、フリースロー方式で、ゴールにボールを入れたチームの勝ちとするらしい。にもしない、ということである。ご褒美などの問題がある為、引き分けに出来ないのだろうと思う。


今、私と夕月ゆづは、バスケの試合中である。私は、運動が超苦手である為、パスを繋ぐことぐらいしか出来ない。走るのも遅いのです…。

夕月ゆづは、常にマークをされていて、、マークをされていない私。


私は、クラスメイトからパスをもらったら、自分ではドリブルはしないですぐ、夕月ゆづにパスを繋ぐことになっている。今回の相手チームは、H組のチームである為、何故、私にパスを繋ぐのか理解出来ないだろう。この前のクラス対抗試合で、外部生の女子生徒達も、私の運動神経が相当悪いことに、気が付いているだろうから。初の対抗戦が、外部生のクラスで助かったのかも。


内部生の女子には、私と夕月ゆづの連携はある程度知られている。私のボール捌きは、狙った場所とは違う場所に飛ぶことである。私の投げたこのボールを、取れる人は中々いない。唯一の例外は、夕月ゆづぐらいのものである。


しかも、夕月ゆづは、私の体勢から飛ぶ方向が、予測可能らしいのだ。

えっ?何それ?私、どのような変なフォームしているの?それとも、以心伝心で気持ちが通じているとか?きゃあ、恥ずかしい!(両手で自分の顔を隠すように)


という訳で、今日も私の技?が炸裂致しましたわ。普段から、私は、夕月ゆづの方に向けて投げないことにしていますの。夕月ゆづに向かって投げても、トンデモナイ所に飛ぶのなら、態といない方に投げた方がマシですもの。

コントロール出来ないのですから、仕方がないのです。


そして本日も、しっかり夕月ゆづがキャッチしてくれました。実はコレ、夕月ゆづのアドバイスから生まれた、私達の必殺技でもあるのです。やっぱり、夕月ゆづとは、以心伝心の間柄かも!?うふふふっ。

そのような必殺技でも、毎回夕月ゆづがキャッチするものだから、内部生達には、作戦と密かにバレている模様ですわ…。


しかし、初回は、そのような情報を全く知らない外部生のクラスで。外部生のH組との初戦で、かなり有利な試合となった。結果的には、夕月ゆづのお陰で勝ち進んでいるようなものだ。内部生の男子達でさえ知らなかったことであり、私の必殺技に「そんなのあり?」とか、叫んでおりましたわ。いやいや、有りですわ、ホホホ。


さて、私達のチームは、今はサッカーの試合を見学をしている。バスケの試合は勝ち進んでいるので、まだ終了してはいない。次の試合まで時間があるので、私達のチームは、A組の他のチームの応援をすることになったのである。

サッカーの試合は開始していたけれど、夕月ゆづが途中参加した為、同じチームのメンバーと一緒に、応援しに来たのである。先程から、女子の「キャーキャー」と騒ぐ声が聞こえている。


因みに、対戦相手チームはD組である。相手チームには木島君が出場している。

うちのクラスの鷹野君をマークしているようなのだ。

先程から暫く見学していると、色々な事が見えてくる。鷹野君も案外活躍しているし、夕月ゆづとも上手く連携を取っているし。いいアシストだとは思うのけれど。

私とのだろうけれどね!ふふっ!


木島君も運動神経は割と良い方で、背も175cmぐらいあると、以前に話していた。しかし、現実は、木島君よりも少々背の低い鷹野君の方が、いい動きを見せていると思う。流石は運動部部員ですわね!…え~と、何の運動部だったかしら?


鷹野君がゴールを決めても良さそうなのに。実際には何故か、夕月ゆづが何度かゴールを決めている。何かの策略なのかしら?それとも、…夕月ファンへのなのかしら?まあ、その方が、女子生徒達には目の保養になるだろうし…。


相手チームのゴールキーパーは、大柄の男子生徒だ。それでも、夕月ゆづは、他の男子にも負けないほどに力強くボールを蹴るだけでなく、コントロールも完璧な精確さであるから、全く問題がない。ゴールキーパーの男子は、逆に夕月がボールを蹴る際の足捌きに、翻弄されている。


どんな時にも冷静な夕月は、ゴールキーパーの一瞬の隙も見逃さなければ、周りのマークの動きも分析と観察をしていて、試合中も常に頭の中で計算しながら、動いているのだろうと思う。本人が以前に、そういう意味の話をしていたこともあるのよね。でも、実際にやり遂げるのだから、凄過ぎるわ。


何故か、夕月ゆづがゴールする度、相手チームのDクラスの生徒達が、特に女子生徒なのだけれど、嬉しそうに騒ぐのはどうなのだろうか?自分のクラスの応援は、しなくていいの?木島君って、割とモテる筈だと思っていたのに…。

彼を応援しなくていいのかしら?


試合の結果は、うちのクラスの勝利でした。まぁ、応援組の女子が、殆ど夕月ゆづ派でしたもの。あの応援の状態でD組の勝利となっても、夕月派の女子がブーイングする事を考えると、かも?

因みにこの後、夕月ゆづはバスケに専念する模様です。

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