14話 健康診断 その2

 午後の健康診断が始まっている。A組は、午前中に健康診断が終了してしまったので、午後からはお手伝いに回っている。検診結果の数字を用紙に記入したり、使用する器具の補助をしたりと、様々な補助をおこなっている。


午後には、すっかり皆と顔馴染みになっていて、待っている間に、雑談したりしている程である。私は、自分から男子には話し掛けないし、男子から話し掛けられても困るけれど。女子同士であるならば、割と平気である。只、私は人見知りが激しいので、誰とでもという程、そう簡単なことではない。


完全に、夕月ゆづ目当ての女子生徒の中で、私達に話し掛けてくる時に、余りにも感じの悪い子には、睨んだりすることもあったけれど。(夕月ゆづにばかり話し掛けて、私のことは完全無視している、女子生徒とか。)

夕月ゆづが上手く躱しているのもあり、普段は特には気にしていない。


だけど、萌々香ももかさんの場合は、何かいつもと勝手が違うのよ。睨むまではいかないけれど、何と無く、余所余所しい態度になってしまう。萌々香さん本人には、気が付かれていないようだけど。というか、彼女って、他の人の気持ちとかに、かなり鈍かったりして…。


つい気になって、夕月ゆづを監視するように見つめては、それと無く、夕月ゆづを彼女から遠ざけようとしたり、している私がいる。萌々香さんが、夕月ゆづの側に居ると、私も変に意識してしまっている。一体、私はどうしてしまったのだろう?


私は首を傾げて、暫く1人で考え込んでいたようだった。行き成り耳元で「未香子みかこ様!」と、いくさんが話し掛けて来たのだ。私は、飛び上がる程ぎょっとして、振り返る。すると、少し興奮気味の郁さんが、私の真後ろに立っていたのである。

何?何でしょうか、今度は?私に用があるの?

あれ?今、私のこと、『様』付けして呼ばなかった?


 「はぁ、未香子様って、お雛様のお人形みたい~。超、可愛い~。実写の『みやび』様のような、憧れの人が見られて、光栄だよぉ!」

 「はい?えーと…、って…。私に『様』付け?!…えっ?実写?『雅』様?…って、誰かしら?」


今度は、私に『してきたのは、何故?

私は思わず、顔が引き攣ってしまっていた。えーと、郁さん。あなたは、誰にでも『様』付けするタイプなの?それから、実写って、何?実写って!?


話を聞くのが、物凄く怖いんですけれど。…『雅』様って、まさかと思うのですけれど、のことでは、ないかしら?

私は、心の中で必死に突っ込んでみましたわ。郁さんには、全く聞こえないのですけれど。郁さん。私、貴方のようなタイプに、初めて会いましたわ…。

ですから、あなたのことが、さっぱり分からないのです。


 「あっ!そうですよねぇ。未香子様は、知らないですよねぇ。あのですね~。『雅』様はですねぇ、『麻琴まこと』が出てくる漫画のヒロインなので~す!でねぇ、『麻琴』の親友で_____。」


あっ、やっぱりそうですか…。郁さんが、ずっと漫画の説明を話してきても、今一いまいち中身に付いていけないわ。右耳から左耳に、聞き流してしまいましょう。

実写の説明は、今のところ説明されていない。でも、大体言いたいことだけは、理解出来そうですもの。


萌々香さんとは別の意味で、反応に困ってしまうわ。漫画の中の人物に憧れる、ということ自体は、理解出来るのですけれど。

それを、私に置き換えられても…、ね。しかも、テンションが高過ぎっ!


多分、今の私は、になっている筈…。すぐ横で、私の様子を見ていた夕月ゆづが、「大丈夫?」と苦笑いしていたのだから…。

取り敢えず、郁さんには、私にも『は要らないと、言っておこうかな。




        ****************************




 やっと午後の健康診断も終了し、今日の授業は全て終了した。男子達も大分だいぶ白熱した様子である。他のクラスの生徒とも、仲良くなったようだった。

外部生とも、仲良くなるのは良いことだと思います。でも、だからって、何故そのような話になるのでしょうか?


 「北岡が、健康診断で居なくてよかったな。」

 「北岡が居たら、お前ら襤褸負ぼろまけしていたぞ。」


夕月ゆづが居なくて良かったなんて、どういう意味なの?

夕月ゆづって、一体、何の自慢をしているのかしらね?

まるで夕月ゆづが居なければ、勝てないような口振りね。呆れて白い目で見てしまう。


揚句の果てに、「連休前にある球技大会は、男女混合だから、覚悟しとけよ。」って、夕月ゆづが強いという事をバラしているし。何故、敵チームに塩を送っているの?

それって、情報流しているのと同じですからね!


あぁ、心の中の突っ込む声が、段々と増えて行く。最近、疲れ気味なのかしら?

美容に良くないわ。って、私、頭が混乱し過ぎよね。テレパシーが使える世界じゃなくて、本当によかったわ。


でも、男子って、どうして余計な一言を言うのかしら、ね?これで他のクラスが、対策練ってきたら、どうするのでしょう?

えっ、どうもしない?多分、そう答えそうですわね。はぁ~。


今日はこれから、部活に顔を出すことにした。勿論、夕月ゆづと一緒よ。

入学してすぐに、部活の説明会が行われた。その後、2週間後ぐらいまでは、部活見学や部活体験が出来ることになっている。

その期間も、今週中で終わってしまう。そろそろ、部活を決めなければならない。


この学苑は、部活か委員か、どちらかに入る必要がある。ただ、委員はクラスごとに決めるので、例えば図書委員になりたくても、男女各1名の枠しかない。

大勢希望者が居れば、じゃんけんとかくじ引きとかで決め、入りたくても入れないという状態にはなる。それに比べて部活は、定員オーバーだとしても、部の方が許容範囲と考えるのなら、入部可能である。


委員の選出は、入学してすぐの頃、既に決定している。公立では、委員もクラスの生徒全員が、何かの委員に必ず入らなければならないとか。また、部活も、学校によっては、全生徒が強制入部することになるのだとか。

最近、外部生から話を聞いて、初めて知りましたの。


名栄森学苑なさかもりかくえん』の委員としては、クラス委員、図書委員、風紀委員、体育委員、そして生徒会がある。生徒会は、クラス委員のメンバーで成り立っている。

まぁ、生徒会の仕組みは、大体どこの学校も同じみたいね。

図書委員は図書館の管理、風紀委員は、生徒の身だしなみや来客時の対応等、体育委員は体育祭の対応等、と役割が別れている。


生徒会は、委員と部活の全てに関わっている。各委員が全面的に行い、生徒会はその承認や、時には人手の確保など補助的な事を行う、というものだ。

部活に関しても、主に部活費用や承認と確認作業を行う、ということらしい。

生徒会が主体で動くのは、入学式・卒業式などの学苑の運営に関すること、と聞いている。


…話が逸れてしまったわね。私と夕月ゆづは、勿論映像部である。演劇部と何が違うのだろうか、と入部当初は思っていました。高等部では、撮影という方法を取り入れたらしい。だから、映像部に変更したのね。


部活の名称は、生徒が勝手に変えることは出来ない。しかし、名栄森学苑では、生徒会に承認されればいい、とのことである。こういう事も、生徒達に責任感を持たすという、学苑の考え方の1つなのである。


しかし、撮影なんて出来る人が居るのだろうか?そんな疑問を抱いていたのだけれど、外部生の先輩の中に、撮影カメラマンをやりたい人とか、映画監督をやりたい人とかが、入部したらしいの。


いやいや、将来そういう職業に就きたい人なら、分かるのだけれど。勿論、そう希望する生徒もいるだろうけれど。でも、うちの部のやりたい人って、ただ単に趣味的な部員も、意外と多いかも?


何というか、やっぱり、うちの学苑の演劇部に関わらず、学苑に在学する生徒の基準が、高すぎるというか、おかし過ぎると思いませんか…?

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