12話 4月、クラス対抗試合 その2
私達が離れた場所で休憩していると、1人の女子が近づいて来た。私達が手を伸ばせば、辛うじて届かない程度の距離まで、近づいて来て止まる。
顔を上げてその子の顔をよく見ると、先程、
「この前は、ハンカチを拾って下さって、ありがとうございます。今日の試合は白熱して凄かったです。こんな試合初めてで、対戦出来て凄く楽しかったです。」
物凄く可愛い子だけれど、何か残念系の感じがするわ。
「あぁ、この前の。
どうやら入学式で、
あの時が初対面だと話していたから、まだ知り会ったばかりの女の子を、揶揄ったりするなんて、
しかし、この『ももか』という少女は、違った反応を返してくる。
「っ!!あの時は緊張していたからで…。そんなにそそっかしくありません!」
流石に揶揄われたと分かって、真っ赤な顔で否定している。
…こんな
「折角、いい試合だったのに…。」
「ごめんね?君みたいな子を見ていると、つい揶揄いたくなるんだよね。」
「なっ!どういう意味ですか?」
彼女は、試合の好敵手として見ていた相手が、ふざけているのを残念に思ったようである。上目遣いに、恨めし気な表情で、言葉の端に文句ありげな口調で話す。
それに対して、
…昔、私にも、同じようなこと、言ったよね?でも、これは、
『ももか』さんって、人一倍真面目で、ちょっと抜けたところがある人みたいね。
5秒ほど考えてから、話し出す。
「ん?特に意味はないよ。あぁ、それと同期生なんだから、敬語は要らないよ。私は、
「え、はい。…あっ、うん。私は、
「うん、知ってる。今時、ハンカチに名前を書くのが珍しいから、覚えてるよ。いい名前だね。」
流石に恥ずかしいのか、萌々香さんの顔が再び赤くなった。ブランド物のハンカチに書いてあったらしいから、指摘されると恥ずかしいのだろう。それとも、いい名前だと面と向かって褒められた方が、恥ずかしくなったのかなぁ。
「あの…。何で、『北岡君』と呼ばれているんです、か……いるの?苗字も違うよね?」
「中等部で、演劇部に所属していてね。その時に、よく男装する役があってね。その役柄の名前なんだ。最初は、担任教師が洒落で呼んだのが切っ掛け。いつの間にか、この名前が、あだ名のように呼ばれることに、なったんだよ。」
「そうなんだ。じゃあ、高等部でも演劇部に入るの?」
「あぁ、そうだよ。ただ、高等部では映像部に変わったのだけどね。君は、部活決めたの?」
「うん。私は陸上部に入部するつもり。中学で陸上やっていたから。」
「そうなんだ。案外、お転婆なんだね。」
私を置いてけぼりにして、2人の会話が弾む。私も居ると、文句言いたいけれど、まだ頭も働かないのか、ボ~としていたようである。
突然、
彼女は、先程の
この時になって、やっと私の存在に気が付いたように、萌々香さんが私を見た。
そして、とても驚いた顔になる。
何?何で驚くの?そんなに驚くほど、私って存在感なかったの?
「あ、ごめんなさい。2人で休憩していたんだよね?邪魔してごめんね。」
「いえ、大丈夫。そろそろ、皆の所に戻らないといけないし…。」
「あっ!私も戻らないと。私、菅 萌々花。よろしくね。」
「私は、
まさか、私に話し掛けてくるとは…。自己紹介までしてくるとは、正直思っていなかったの。だから、少し戸惑ってしまった。
私が名乗ると、にっこり微笑んで、「じゃあね。」と、今度は私達2人に向けて言った後、自分のクラスの方へ走り去って行った。何となく、嵐が去ったみたいだと思っていた。
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あれから、何とか教室に戻ったけれど、
今日は金曜日だから、明日と日曜は学苑がお休みでよかったわ。だって、絶対明日は筋肉痛なんだもの。
学苑のバスに乗って駅までは来れたけれど、駅の階段がどうしても上がれないし、降りれない。本格的に、もう筋肉痛がやって来たんだもの。
私はその間、駅裏にある小さな公園のベンチに座って、待っていた。声を出しても、情けないことに「痛い、痛い。」しか言えないぐらい、意気消沈状態である。
「もう直ぐ、篠田さんが迎えに来てくれるよ。それまでだから、頑張って。」
「うん…。誰が迎えに来るって?」
「ん?電話出たのは、
そうか、真姫さんも心配性だから、こういう時は多分都合付けて、私を優先してくれるはずだわ。とっても有り難い。
真姫さんが来てくれるのなら、少しぐらいだらけても、大丈夫そうね。私にとっては、年の離れたお姉さんみたいな存在なの。同性でもあるし、この際、恥ずかしさは捨てるわ。
20分ぐらい待っただろうか?やはり、真姫さんが来てくれた。どうやら慌てて駆け付けてくれたようで、エプロンをしたままであった。
私が余りにも痛がるものだから、
本当に申し訳ないです…。今後は、2人に足を向けて眠れないわね。
自宅に着いてからも、2人で協力して降ろしてくれる。そして、私の部屋まで連れて行ってくれたの。私が、ベットに横になるのを確認してから、
それから、
余りにも痛くて眠れそうにないので、三千さんが、筋肉痛によく効く湿布薬を貼ってくれた。
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