4話 一番大切な人
私にとって、1番大切な人。
私と違って、年齢より若く見られる幼顔。美人と言うよりも可愛い感じで、男女どちらにも見える、中性的な容姿をしている。背も165ぐらいあるから、男性役していても、そんなには違和感が感じられない。
男性役の時は、声をいつもより低くして、男子でも通じるような声色を出すのだ。
そして、完璧な男装する時は、もっと声を押さえていて、全然違和感がないのよ。
その為、誰も夕月が男装した女子だとは、全く気が付かないの。最も、その事を知っているのは、私だけ。流石に、夕月の家族や私の家族は、気が付いているかもしれないけれど、学苑の生徒は誰も知らない筈である。
普段は、ロングヘアをポニーテールにしていて、体育の授業では、さらに三つ編みに結っている。バイク運転中や学苑以外では、髪を縛らず下ろしていることが、多いのだけれど。本当に綺麗なサラサラヘアーの黒髪で、憧れちゃうわ。
男装の時は鬘を被るから、隠してしまうのが勿体ないぐらい。仕方ないけれど。
実は、
本来は、私より1つ上の学年になる筈の
嫌な事も何でも、楽しんでしまうような明るい性格で、根っからの負けず嫌い。
だから、今まで出来ないことなんて、全くなかった、と思うわ。
その時に出来ないことでも、すぐ努力していたから、何でも自分の努力で出来るようになっていたわ。本当に、物凄い努力家なのよね。
普段の服装は、その時々の状況によって、全く異なっている。
自宅に居る時は、女性らしいスカートを履いている時もあれば、短パンのような男女問わないような、中性的な服装でもあったり。場合によりけりではあるのだけれど、この2通りが多いと思う。
私と出掛ける時は、基本的にパンツルック姿である。女性らしさより、男の子っぽい演出をしてくれる。プラス動きやすさといった感じなのだろう。
時々、男の子変装時の鬘を被って、完璧な男子になるという、出血大サービスまでしてくれるのよ!私的には、これが1番美味しいですわ、ホホホ。
もう似合っているの何のって、というぐらいなのです!見た目は、可愛い年下の男の子風なのに。女の子の扱いが、兎に角スマートで上手過ぎるの!
歩く時は常に、さり気無く自分が道路側を歩く。私が石か何かに躓けば、転ぶ前に支え。椅子に座る時は、相手の椅子を引いて、立ち上がる時や危ない時には、必ず手を差し出す。お店などに出入りする時は、必ずと言ってもいい程、ドアを開けて待つ。兎に角、何かとレディファースト扱いしてくれるのだ。
至れり尽くせりで、お姫様になった気分である。実際に時折、「では、お姫様。お先にどうぞ。」とか、ふざけて言うし…。このセリフを、普段より一段と低い声で言われると、グッとくるのよね~。はあぁ。(瞳をウルウルさせて)
まさに、
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「そろそろ行こうか?」
私の背が低すぎて、一緒に並ぶと差があるから、
「今日は入学式だから、そんなに混んでいないと思うけど。後1年は、電車通学我慢してほしい。」
「ええ、私は大丈夫。
「分かった。一応進学手続きの時に、バイク通学の申請書は出したよ。この分だと、来年は、2人乗りも許可が下りそうだよ。」
2人乗りの時点でお分かりだろうが、
私は、バイクのことに詳しくないから、よく分からない。バイクには、赤と黒の色が入っていて、ヘルメットも赤と黒の同色で統一されている。
私専用ってことは、私しか後ろには乗せないって意味だといいなぁ。うふふ。
1日も早く、一緒にバイクに乗ってみたい。運転するのは
本来なら、バイク通学は、どこの学校でも禁止だと聞いている。でも、私達が通学する学苑、『
今、私達は歩いて、最寄りの駅に向かっている。駅からは、電車に乗って5駅目で降りる。そこからは、『名栄森学苑』専用のバスが出ており、15~20分ほどで学苑に到着することになる。
中等部でも、私達は同じように電車とバスで通っていた。中等部は、高等部と同じ敷地内にある。只、中等部と高等部では、乗車するバスが完全に分けられている。
駅に着くと、何故か周りがざわついた。チラッと横目で見れば、まだ少数しかいないうちの女子の一部が、
彼女達の着用している制服が、私達が通う『名栄森学苑』の制服とは異なっているから、
その他の他校の女子や男子は、何だろう、という不思議な表情をしている。まだ知らないのかもね。同じ学苑の生徒はまだいないし、今日は平和な方である。
今日は、入学式だからだろうか?在校生と登校時間がずれている為もあり、電車もバスも席に座れるぐらいに、空いていた。お陰で密着しなかった…。いつもなら混み過ぎていて、低い背で潰されそうになる私を、守るように
私が知らない生徒ではあるけれど、その内の何人かには「おはようございます。」と、挨拶された。
その他の生徒は、目が合っても全く挨拶して来ないから、今年『名栄森学苑』に入ったばかりの、高等部からの新入生だろう。でなければ、
何故そんなに、
それは、…。もう少ししたら、分かるわね、きっと…。
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