第2話 策士の罠

戦いが始まり短い時間で大勢が決していた。当然、戦況は火を見るより明らかだった。これは神聖スケルツァ国の策士・レイテリィの計略によるもので、グランディオゾ王国軍は圧倒的不利な状況に置かれている。

王国軍の損害は瞬く間に広がっていく。

「団長!このままでは…!」

騎士たちが訴え出るも王国軍に撤退命令は下ってはいなかった。ましてやトゥーティはこの劣勢に好機をもたらすためドゥルーチェの援軍が来ることになっていたが一向に到着しないことにも懸念を抱いていた。


カンタンド地方議会____

議会の最中に突如、扉が開かれる。

「無礼者!議会中に何事か!」

と長老が声を上げる。すると帝国軍騎士がゾロゾロとやってきては指揮官が続けた。

「フォルツァ帝国王の命によりカンタンド地方を護衛に来た。またこの中に敵国の内通者がいる疑いがあるから勝手な行動をしないように。」

議員たちは騒然としたが内通者との発言を受け帝国軍に協力することにしたのだった。長らくの間、議員たちの尋問が続くが一人として戻ってくる者がいない。ドゥルーチェたちは疑問に思っていた。そしてドゥルーチェ以外の最後の議員が議場を後にしたところで指揮官はドゥルーチェを民衆の集まる広場に連れ出した。既に多くの民衆が集っており騒がしい様だ。

「皆よく聞け!地方議会は内通者の温床であった!よって彼らは始末した。」

民衆の中にどよめきが起きる。加えて帝国軍は以後の摂政をフォルツァ帝が務めるとまで宣言したのだった。

「違うわ!みんな聞いて!彼らは内通者じゃないわ!」

世論が固まりつつある中でドゥルーチェは必死に叫んだ。しかし、指揮官はそれを遮ってドゥルーチェを糾弾した。

「何を仰っておられるのですか首長殿。これだけの内通者を出したのはあなたの管理不足…いや、さてはあなたも内通者ではありませんか?」

民衆は再びどよめき出す。悪夢姫と名声高い彼女ではあったが既に疑心暗鬼の民衆にとっては悪人に見え始めていた。次々に罵声を浴びせる者もいた。「違う…私は…私は…」震えた声で彼女が訴えようとするも牢へぶち込まれてしまった。


国境南部の戦場____

「何故、援軍は来ないのだ!」

確か王国地方駐留軍とドゥルーチェ首長を護衛してくるのは帝国軍のはずだ。奴らは一体なにをしているんだ。流石のトゥーティも焦りを見せ始めていた。

今回の作戦では王国の北側に位置する帝国が南下する途中にあるカンタンドから地方駐留軍と共にドゥルーチェを護衛して、ここ神聖国との南部国境にて奇襲を仕掛けることが予定されていた。しかし、いくら待っても帝国軍どころかドゥルーチェの姿もないのであった。何がおかしい…そう頭を悩ませていた時のことだった。そこに馬に跨った1人の男がやってきた。

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