第10話 悪夢の少女の決意

国王の前に片膝をつく一人の少女。国王の声により顔を上げると少女は真っ直ぐな眼差しを向けた。国王は用向きを尋ねると彼女は答えた。

「偉大なるグランディオゾ王よ、両親が死に絶えた今、その意思を継ぎカンタンド地方を治めるため王のお許しをいただきたく、ここへ参りました。」

国王は面食らったが、すぐに平静を取り戻す。参列した貴族諸侯たちも突然のことに驚いていた。身の程知らずで無礼だという声も上がる中、国王は重々しく口を開いた。

「そなた、覚悟は十二分に出来ているのであろうな…?」

彼女はゆっくりと息を吸うと、答えた。

「出来ております…!」

これを認めたのは偶然ではない。先の戦いで抵抗をしたカンタンド地方では多くの血が流れた為に後任の選出に苦労していた。そんな中で国王は既に地方議会に話を通していたのだ。彼女の歳はまもなく16となることから、地方議会の摂政を経て独立を図ることで話がまとまったところであった。

「では早速カンタンド地方へ赴き地方議会を束ねよ。そなたの護衛には王国騎士団のアタッカ・フォールテを当てがう。以後はそのように。」


一行はカンタンド地方へ歩みを進め、同日の遅くに目的地に到着した。

「ドゥルーチェ、久しぶりだね。まさか護衛の任に就くことになるなんて思ってもいなかったよ。」

アタッカは再会を喜んだが、ドゥルーチェは冷たく遇らう。何やら気に掛かることがあるようだった。

「そうね、私も思ってもいなかったわ。とにかくよろしく。」

そう言うと足早に父親の仕事部屋に向かうドゥルーチェに遅れをとりながらも追随するアタッカ。部屋に着くなり部屋を見渡す彼女は机に置かれた日記を見つけた。ゆっくりと椅子に掛け、耳に髪を掛ける仕草をして読み始めた。そこにはドゥルーチェが15になったことへの喜び、首長夫妻の一人娘がいずれは首長を立派に継ぐだろうという期待などが綴られていた。そして王国騎士団により王城に連れられた日に両親が大きな悲しみに暮れていたことも知った。そうして読み進める中で気になる文章を見つける。走り書きで書かれたその日記にはドゥルーチェの疑問にリンクすることが記されている。

"フォルツァ帝国との国境に近いこの地の防御は十二分に整えているはずだが、帝国騎士団はどのようにしてそれを潜り抜けたのか理解出来ない。"

ドゥルーチェは同じことを疑問に思っていた。突破したにしてもそのような状況が起これば少なからずカンタンド中心地への侵攻の足止めができた筈だからである。

「アタッカ!これ見てよ!私が感じていた疑問をお父さんも同じように感じていた!」

2人は目を見合わせこの謎を追い、真の悪夢を防ぐことを誓うのだった。

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