第8話 枢機卿と悪夢の少女
祝勝の宴が終わるや否や、グランディオソに激震が走る。フォルツァ帝国が和平を申し出たのであった。昨日までの最大の強敵がいま手を取り合おうと言うのだから、無理も無いだろう。しかし誰もが思うことはただひとつ。謀略ではないかということだ。軍議の中でペザンテはこう言って高笑いした。
「さすがのやつらも正教会が派兵すると知り、神の御心に従ったのでしょうな」
貴族諸侯も合わせて高笑いする。
確かにグランディオゾ教会は正教会とされており、王国の中に自治領が認められている。ただし教皇はいるものの、実質の権力者は最早ペザンテそのものである。
「なあに、国王殿に力添えを申し出たのだ。これくらいではなくては務まらぬわ」
そうして国王と枢機卿は固く握手を交わしたのであった。
ところで、と枢機卿は国王に話を振る。
「あの娘だが力は使えとるようだな。」
国王はそうだとも。と返し頷いた。国王はすぐに別の話を始め、話を遮られたようでバツの悪そうな顔をする枢機卿をよそに、軍議を進める国王。長時間に渡る議論の末、王国としてはフォルツァ帝国の和平を受け入れることにした。その条件としては次の通りだ。
ひとつ、カンタンド地方の領有権復帰、ひとつ、ナイトメアについて一切の詮索と干渉をしないことである。しかし、フォルツァ帝国が脅威の認知を理由に後者についてを拒否したため再度、両国間の対談の場が設けられたが、当然の如くまとまらなかった。それを見た枢機卿が口を開く。
「そういうことでしたらここはひとつ、フォルツァ帝国王の望みを聞いたらいかがかな?ここでひとつ貸しを作っておいても良いかと思いますぞ」
それを国王は受け入れた。両国は和平の取り決めを交わすと早速、共同のナイトメア合同騎士団を編成した。戦勝国である王国騎士団を筆頭としての編成で合意し、さらにはグランディオゾ正教会枢機卿が顧問となることが承認されたのだった。
少女の日記3___
ナイトメア合同騎士団というものができたわ。また大きな組織ができた上に今度はペザンテ猊下が私を呼ぶようになった。私あの男が嫌いだわ。穢らわしい!力のことを聞いてくるだけに留まらず、最近はやたらと距離が近いの。やめてほしくて一度抵抗したのだけれど、「神の御心に背くのか」と怒鳴られたわ…。怖いわ…
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