第5話 猛攻の悪夢
あれから一夜明けた。案の定、帝国軍の攻撃が再開された。王国に残された答えは一つ、戦うこと。
王座の間に集う国王、貴族に一報が入る。
「伝令!カンタンド丘陵にて、夜明けと同時に戦端が開かれました!」
数時間後____カンタンド丘陵
既にトゥーティ率いる騎士団は国王の命により再びカンタンドに派兵され、その剣を交えていた。激化する戦禍は止まるところを知らない。
「お前たちは正面を抜けろ!奴を討て!俺は後から続く!」
臆病にも声を上げる先輩騎士は新入りを前に押し出した。劣勢ムードが騎士団全体を包んでいるようだ。駆け出すアタッカたちに立ち塞がる帝国軍騎士。
(俺たちが正面を抜けたところで…こんなの、無理だ…!)
アタッカの周りでも王国軍騎士が次々と倒れていく。帝国軍との圧倒的な兵力差に王国軍は押されている。練度も侵攻を繰り返す帝国とは差が開いている。アタッカの体力もかなり消耗していている。
「くそっ…ここまでか…」
アタッカは刃競り合いで押し倒される。
「若いな、貴様!残念だが死んでもらおうか!」
その時だった。後方から怒涛の如く馬蹄音を轟かせる軍団が迫る。馬上から放たれた矢がアタッカの目の前の敵兵を射抜く。
「我が名はグランディオソ国王近衛騎士団長ガイウス・アストルガ!道を開けよ!」
王国軍勢の士気は一気に高まった。それもそ
のはず、国王に認められた優秀な騎士のみで結成された少数精鋭部隊だ。
「ガイウス!援軍に感謝する!」
トゥーティさんの声がした。向こうの奴らも片付いたみたいだ。あとはこのまま突破して本隊を叩くのみだ。
「おい!トゥーティ、それはそうとナイトメアはどうした?あの小娘はどこにいる?」
トゥーティさんは顔を俯けた。そうだ、彼女は力を発揮できずに後方にいるのだ。それにしても、形勢逆転したとはいえ、あの将軍ファイアリヒのことだから何を画策するかわからない状況で油断はできないのだ…。そこでまさかの報せがはいる。
「申し上げます!この先、敵将ファイアリヒの軍勢にあらず!あの少女がナイトメアを使いました!」
*
数十分前、王国軍後方部隊______
「おい、あいつまた仲間を見殺しにするつもりかよ。俺たちの仕事がこんな奴のお守りなんてよ。」
わかってる。わかってる、私の役目は。でもどうやって力を使うの…。お父様…お母様…。手を組み祈る様に嘆くと、両親がファイアリヒに斬殺されたときの様子が頭をよぎった。絶望と怒りの入り混じった感情はやがて彼女の力を目覚めさせたのだった。
「神よ…私たちの献身に、お示しを下さい…」
そう呟く少女を騎士たちが注目した。ハッとした様に辺りを見渡すと騎士に声を掛けた。彼女の予知能力により敵将ファイアリヒの策がわかったのである。先の砦での敗走から彼女の力を疑う者も多かったが、早馬を出してまもなくファイアリヒ率いる軍勢が王国軍後方の軍勢の前に現れた。しかし、この奇襲を予知できたものの、戦力差は埋めきれずにいたのだった。
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