第4話 二度と戻らない悪夢-後編
フォルツァ帝国の陣地に着くと、使者と数人の付き人のみ会見の場に進むことを許された。そこには何故かドゥルーチェと俺も通されたのだ。夥しい数の将兵がこちらを見つめている。恐らくドゥルーチェに向けられているのであろう淫らな視線もある。進んだ先には漆黒の鎧に身を包んだ騎士がいる。
「私はフォルツァ帝国の将軍ファイアリヒだ。王国使者の者よ、そちらに掛けられよ。」
交渉が続く中、彼らの後方で待機する護衛、付き人の前で事は起こった。ファイアリヒの命で一組の夫婦と思わしき男女が連れて来られた。見るからにこの地の長の風貌だ。二人はこちらの一行を見るなりすぐに顔を背けた。それを見たドゥルーチェも同じく顔を背けたのだ。
「そちらが帝国の要求を受け入れないということになれば致し方ない。」
ファイアリヒは立ち上がると剣を抜き、再び向き直ると今度は後方の一行に目を向けて続けた。
「残念だがこうするしかないようだなっ!」
勢いよくそういうと二人に剣を振り下ろそうとした、その時だった。
「やめてーーーーーっ!」
するとその剣はぴたりと動きを止めた。ファイアリヒは声の主を視界に捉えると嬉々として言った。
「そうかやはりいたか、ナイトメアを受け継いだ者よ。さあ王国軍よ、そいつを渡すか!?」
使者とトゥーティさんは顔を見合わせると意を決したように頷き合い、それを拒否した。わなわなとするファイアリヒを背に一行は去る。カンタンドの長夫妻は涙を浮かべながら、声にならない声で何かを言っている。時折その眼差しは申し訳なさそうにドゥルーチェに向けられた。
「うおーーーー!」
怒りに任せ振り上げられたファイアリヒの剣はドゥルーチェの両親を叩き切った。
「いやぁぁぁぁぁーーーーー!」
両親のもとへ駆けだそうとする彼女をトゥーティさんが制止しその場から連れ出した。
*
「陛下・・・停戦交渉は相成りませんでした。それと実は・・・カンタンド地方の長が、処刑されてしまいました。申し訳ございません。」
王座の間では使節団が国王に報告を行う。明日にでも帝国は侵攻を再開するだろう。報告を受けた国王は、暫く沈黙したのちに騎士団や侍従を下げさせ、一部の貴族だけを残していた。
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