第2話 悪夢のはじまり

 ナイトメアの少女と騎士の少年によって国王の生命は守られた。国王は二人の活躍を称え褒章を与えた。ただし王座の間で剣を抜いてしまった騎士の少年は、国王の情状酌量をもって3日間の牢生活となった。

「トゥーティさん、俺のために本当に申し訳ありません。」

アタッカは団長の上申により国王の情状酌量を賜るに至った。そうして格子の向こうに立つ団長に深々と頭を下げた。

「なぁに、国王も元からそのつもりでいらしたようだ。俺に気を遣うことはない。それに・・・」

微笑むようにして言いかけた。アタッカがぽかんとするが、トゥーティは続けた。

「それに…お前を守ると、父君と約束したからな・・・」

2人は微笑むが、なにやらその会話を聞いている者がいた。薄暗い向かいの牢の奥からその声が聞こえてきた。

「そうかぁ、お前が前騎士団長の息子かぁ。勇敢な少年だと思ったよ。だがな、俺をここにぶち込めば終わりだと思うなよ・・・」

皇太子フリオーソだ。そう言うと気味の悪い笑い声を上げている。何か予感がしたトゥーティは聞くなと制した。

「何か嫌な予感がする。また君たちを危険に晒すことになりそうだ・・・」


数日後のことだった。王都グランディオソ宮中は騒然としていた。

「何が起きている!近隣諸国が次々に挙兵しているだと?」

宮中の軍議は緊迫した空気の中で行われていた。プレスト軍事相の周りには貴族や将軍が詰め寄っている。どうやら近隣のフォルツァ帝国と神聖スケルツァ国がこのグランディオソへ向け進軍中との報せが入ったとのことだった。

「しかし何故これまで敵対関係だったこの2国が組んでいるんだ!」

次々と意見を述べる者たちで交錯していった。

「静まれ!貴様ら、王の御前ということを弁えろ!」

プレスト軍事相の一喝によりその場は静まり返る。それを見計らって王は口を開いた。

「まずは使者を遣わせるのだ。」

王の命は即日に実行されて数時間後にはその使節が王城を後にした。それを見送る民衆は不安げだった。

「長らく戦勝が続いていたとは言えまさかあの地が落とされるとはね・・・」

民衆が口々にそう言う。果たしてフォルツァ帝国の目的は一体何なのか確かめに行こう。

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