第9話 初陣
俺はとうとう人を殺したんだ。・・・、これが、戦い。
今までに見たことのない大軍がこちらに向かってくる。腰が抜けている者もいた。
「俺はまだ、死にたくねぇ・・・」
悲鳴やうめき声が響く。
「お前たち、何をしている!死にたくないなら剣を、弓矢をとれ!」
トゥーティさんに叱咤され、恐る恐る武器を手に取る新米騎士は叫び声を上げて戦いに身を投じる。そんな中、突然にトゥーティさんは少女の元へ行く。
「おい!何をしている!?お前の能力を早く使わないか!」
トゥーティさんのこんな怒りの形相は見たことがなかった。そして彼女は怯えながら言った。
「私…私、分からない。」
「何?」
トゥーティさんが訊く。
「私、どうやったらいいか分からないんですっ!」
彼女の叫び声が、戦場の騒ぎの中に小さく響いた。トゥーティさんは意を決したように立ち上がり、全軍に告げた。
「この砦を放棄する!後退の体制をとれ!弓矢を持った者は一波が崩れたその時に後退せよ!」
彼女は幹部たちに伴われこの場を後にする。俺たちは必死に矢を放った。迫り来る波が徐々に崩れて行くのを見ながら敵兵に矢を放った。しかし、敵兵も必死だ。騎乗から放たれる矢はこちらの兵を貫く。仲間が倒れていく。その時、後ろからアチェルさんの声がした。
「退却だ!早くするんだ!」
アチェルさんの号令に一目散に退去を始める兵士たち。
仲間の死体に躓く者、背後から迫り来る矢に貫かれ倒れる者で交錯した砦は、今では敵の最前線の砦となった。そんな中、騎士たちが口々に言い始めた。
「あの子は一体なんだ?何の力を持ってるって?嘘じゃないのか。」
「そうだな。あのプレストさんもよく言ったもんだぜ。何がナイトメアだ。所詮は伝説にすぎねぇ。」
多くが彼女の力とやらに疑念を抱き始めた。
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