第8話 戦いと闘い


 アチェルさんたちの下、俺たち新米騎士はここに来てからというもの厳しい訓練に身を投じていた。あのアチェルさんとはいえ、やはり騎士の仕事として新米騎士に厳しく向かっている。悲鳴というか、叫び声というか、とにかく全員が必死に自分自身を鍛えている。

「本日はここまでだ!」

アチェルさんの声が響く。

「はい!ありがとうございます!」

という新米騎士の声も共に。

「よーし、みんな飯にするぞー!」

やっぱりアチェルさんはみんなに好かれる。訓練のときは新米騎士は縮み上がっているが、訓練が終わればみなアチェルさんとわいわいする。こういうときは、騎士になったことなど忘れられる、幸せな時間だ。


 今日もまたいつもどおり訓練を行おうとしていた矢先、監視が叫んだ。

「敵だ!敵襲!」

その場は騒然とした。そこに慌てた様子でトゥーティさんがやって来た。

「総員、迎撃の体制を取れ!」

俺やアルコは弓矢を持たされる。矢を掛け弦を張る。その一瞬が長く感じられ、俺の心臓の動きを強調する。初めて本物の戦いを味わう新兵の中には震えるものもいた。

「放て!」

トゥーティさんの合図で勢い良く矢が放たれた。その矢は真っ直ぐと突き進み、敵の首元を突き刺した。その敵兵は、馬から転がり落ちる。戦いに身を投じるには、自分自身とも闘わねばならないのか…。

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