第63話 舞台の詳細

 取り敢えず俺は教訓をひとつ得た。

「コウモリに変身する時は何処かに予備の服を用意しておくこと」

 なおあの後、桜さんが気付いてくれたおかげで俺は全裸公開を免れた。

「私も以前狼に変身した時、気が付くと全裸で外にいてという時があったんです」

 なるほど経験から気付いたわけか。

 なお桜さんより前に有明透子は気付いていたが積極的に無視していた模様。

 まあ有明透子だからその辺は期待していないけれど。


 さて、文化祭でショー形式でやるからには場所等も申請しなければならない。

 ある程度シナリオも作らなければならないし小道具や衣装も必要。


「メインは正利の脱出としてそれだけじゃ何だろう。他にもそれらしい種なし魔法を導入に組み入れないと間がよくない」

「衣装はやっぱり引き付ける方がいいよね。だから女子はバニー姿で真鍋君はふんどし姿で」

「透子さんそれ先生から怒られるからきっと」

「でも衣装は大事よね」

「なら魔術師らしく黒タキシードとか」

「でも作るのが大変だろ。ド●キとか通販とかで売っている安いコスプレ衣装で適当にそれっぽいのを買う事にしてごまかそう」

「脱出以外の魔法ですか。考えると難しいですね」

「バニーが駄目なら体操服ブルマとかスクール水着なんてのは?」

「いっそ正利も女装させてだな」

 カオスな話し合いが一気に始まった。

 それでも少しずつ詳細が決まっていく。

 ただどうも犠牲者は常に俺のようだ。

 大和先輩のナイフ投げならぬボールペン投げの的にもされる模様。

 女装なんてどんな格好させる気だ。


 川口先輩がパソコンを操作し始めた。

 何かをたたたと打ち込んで印字をかける。

 立ち上がって出て来た紙をデスクの中央へ。

 文化祭の使用場所申請用紙だ。

「場所確保。小ホールで2回公演。準備を入れて1時間を2回」

 確かにこれは早い方がいいよな。

 何をするにも場所を確保しないと。


「時間もそんなものだろうな。公演そのものは20分程度であとは搬入と搬出。皆もこれでいいか」

 確かに。

「いいと思います」

「そうですね」

「妥当だと思う」

 俺も頷いておく。

 時間は短い方がいいしな。

「先生のサインを貰って提出しておく」

 川口先輩はささっと申請用紙を紙挟みに挟んで立ちあがり部屋の外へ。


「香織が戻ってくるまでにおおまかな流れを確認するぞ。

  ① 司会者が登場して魔法でローソクに火をつける。

  ② 私のボールペン投げ。

  ③ 箱が出てきて正利を閉じ込める。

  ④ 透子に剣で箱をぶった斬らせる。

  ⑤ ガムテープで箱の断片を組み立て直し、呪文を唱えたら中から正利復活。

 今の話をまとめるとこんな感じでいいか」

「うん、いいと思います」

「面白そうですよね」

「私もいいと思う」

 俺も頷いておく。


「あと出来れば全員出場する方がいいよね。アシスタント役とかも含めて」

「音楽や照明はどうする」

「音楽はオリーブの首飾りでもかけっぱなしにすればいいし、照明は最初からディフォルトでいいんじゃない」

「でも担当1人はいた方がいいと思います」

「なら翠先輩にやってもらうか。それくらいなら手間かけてもいいだろう」

 なるほど。

 確かに文化祭の間はそれくらい時間があるだろうしな。

 

「じゃあ次は衣装でも考えようか。全員出るとなると衣装もその分必要だな」

 確かにそうだ。

 大和先輩が何かを思いついたというような悪い笑みを浮かべた。

「なんなら経費節約の為正利の衣装はうちの制服でいいかもな、ただし女子の」

 おい何だその発想。

「女装ですか」

「その方が見栄え的にもいいだろう」

 おいおい何故に俺以外女子ばかりなのにわざわざ女装する必要があるんだ。


「勘弁して下さい」

「何なら術で女性に化けてもいいぞ。でも合宿で女性化した時でも基本的に顔は同一だったしな。だからウィッグをつければ割と見栄えはすると思うぞ」

「ダーリンなら私の制服をギリギリ着れるかな」

 おいおい愛梨。

「拒否権を発動します」

「悪いが常任理事国扱いは2年以上だ」

「でも確かに似合うと思います」

 桜さん裏切るな。

「確かにダーリン、似合うかもね」

「どうせなら制服じゃなくて体操服とブルマーで」

 おい有明透子何を考えている。


 でも大和先輩が更に悪い笑顔をあらわにする。

「面白いかもしれないな。それに合理的だ。コウモリに変身した後、また復活する際に服を着る必要があるだろう。なら服は簡単な方が合理的だ。安心しろ体操服とブルマーとウィッグとパット入りブラは用意してやる」

 おい待て変なアイテムが増えていないか。

「慣れていないとブラは面倒だからスポブラにパット入れた方がいいんじゃない?」

「大丈夫よ。ちゃんとコスプレ用品で男性用パットを売っているから。何なら肌に直接貼り付けるシリコン製偽乳も売っているし」

 有明透子何故そんな事を知っている!

 なお大和先輩からボールペンが3本、有明透子方面へ飛んだ模様。

 先輩気にし過ぎだ!

 そう思ったら俺の方にも2本飛んできた。

 まったく。


「それじゃ安そうなコスプレ衣装を探すぞ。あと正利は脚の毛を剃っておけ」

 本気かよ。

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