第52話 霊園の迷宮
入った先は3級試験の
俺達が入った場所には小さな立て看板が立っていて、『21番入口・仮設事務所横』と表示されている。
また内部は所々灯りが点灯していて暗視能力がなくてもそこそこ見える状態だ。
「案外涼しいね」
「この前の試験場所ほどではないけれど結構涼しいくて楽よね」
外は今日も35度を越える猛暑だが、ここはおそらく20度以下。
人によっては涼しいと言うより寒いに近いかもしれない。
「ここからはこの地図を元に行けばいいんだよね」
「だな」
渡された資料の中から
「そこ右折の通路は3級討伐者は通らないで下さいだって。危険な通路なのかな」
「表の地図とあわせると13区画付近へ向かう通路ですね」
「通ると近道になりそうだけれど、ここは指示通り行った方がいいかな。確かに何となく嫌な感じが奥から感じるし」
そんな訳で迷宮を指示通り歩いて行く。
俺達が指示された区画は地上の区画に直すと7区画、28区画、29区画部分。
霊園のちょうど反対側、南西の角にあたる区画だ。
行くだけで1キロちょい程距離がある。
「結構遠いよな」
「でも案内がしっかりしていて迷いにくいのはいいわ」
確かにあちこちに立て看板があって地点番号が書かれている。
渡された地図とあわせれば迷う事は無いだろう。
17番南東角を右に曲がり直進。
今歩いているのは
照明も5メートルおきくらいに設置されているし足場もコンクリ舗装で歩きやすくなっている。
通路そのものも危険な感じは特にない。
「この
「それなりに歴史はありそうですよね」
電線なども通っているし観光用の鉱山跡のような感じだ。
ただ単なる洞窟と違うのは空間の雰囲気。
あの短絡路と同様の通常空間にない微妙な不安定さを感じる。
他にも例えばこんな場所が。
「このコンクリで塞がれているのは危険な通路なのかな」
「そんな感じね。お札が貼ってある場所もあるし。お札がそれほど古くないから定期的に取り替えているんだと思う」
「確かに奥から何か嫌な感じがしますね」
そんな通路を結構歩いて、やっと『7番東』地点に出た。
ここからがうちの班の担当だ。
「東側から順番に潰していこうか」
「そうだね。ならまずは南かな」
まだ比較的しっかりした通路を歩く。
でも歩いて10メートルもしないうちに俺の感覚がアレを察知した。
試験だの訓練空間だのでもうお馴染みの気配だ。
「最初は俺の魔法で行く」
「わかった」
近寄って何か別のものだったりしたら危険だしな。
それに俺のこの魔法は幾ら使っても力が減らず場合によっては自己回復までするという便利な魔法。
だから積極的に使っていく。
「エナジードレイン!」
岩陰にいた筈のヘビの気配は一瞬で消えた。
「この辺から出る訳ですね」
「だね。でもこのくらいなら全然平気だよね」
確かに全く脅威を感じない。
次に出てきたカエルの怪異も感じた直後に俺の魔法を発動。
ゆっくり歩くくらいの速さでバシバシと退治していく。
「今のところ怖いのはいないけれど数は出てきはじめたよね。ダーリン、疲れたら後退するから言ってね」
「大丈夫、それに俺のこの魔法は力を消費しないしさ」
「その辺
「羨ましいよね。私だと魔法を使うと確実に魔力を消費するし」
何せ50歩くらい歩くたびエナジードレインをかけている状態だ。
「通常空間だと門とか池があるせいかな。敷地の裏鬼門側だし集めやすい場所なのかもしれない」
「やっぱり集めやすい場所ってあるの、透子さん」
「ええ。水場とか谷、窪地になっている場所、そういった場所は色々集めやすいみたい。向こうの世界でもそうだったし」
200メートル程歩いて通路突き当たりを右折。
ここから通路は更に細くなる。
今までは普通自動車でも入れる位の広さだったのが、軽トラがやっと程度に。
灯りもちょっと少なめだ。
「ここから本番という感じだね」
確かに愛梨の言う通りだなと思う。
雰囲気も今までの通路と少し違って少しピリピリ感じる。
「どうしますか? ここで先頭を交代しましょうか?」
「私は結局何もしていないけれど、ダーリンはどう?」
「まだまだ大丈夫だな。次の次の通路で半分だからそこまではやるよ」
「でも怪異がだんだん強力になっていくなら、小まめに交代した方が訓練になると思うよ」
確かにそれもそうだな。
「なら前後交代しようか。この通路は桜さんと透子さん先頭で」
そんな訳で俺と愛梨は後へ。
「この通路も気配が多いようですから、先にある程度片付けますね」
そう言って桜さんはいきなり魔法を放った。
弱めの魔力の波が通路奥へと進んでいく。
熱魔法と風魔法の混合で威力はあまり無い
でもそれでかなり前方の気配が活性化した。
ヘビだのカエルだのコウモリだのがうじゃっと通路上に出てくる。
「
桜さんがもう一度魔法を放った。
今度は明らかな攻撃魔法だ。
出てきた怪異が多数の氷の刃を浴びて崩れていく。
一気に前方の気配が減った。
だがまだ幾つか気配が残っている。
どうやらさっきの通路よりしぶどい怪異がそこそこいた模様。
「なら次は私ね。
綺麗さっぱり気配が消え……てない。
まだ1つ気配が残っている。
それも心なしか強めの気配のような……
「
「本部に連絡入れる?」
「連絡機いつでもスイッチ入れられる状態にしておいて。もうすぐ出てきそうだから正体を確認する」
念の為俺もいつでもエナジードレインを放てる状況にしておく。
通路の左側、地図には無い通路から人間大の影がぬるり、と現れた。
「エナジードレイン!」
咄嗟に俺は魔法を発動する。
「お札使うよ。愛梨、連絡お願い」
「もう連絡済み」
エナジードレインの効きが微妙な感じだ。
一応力を吸っている感覚はある。
でも吸収力が弱い気がするし感じる奴のエネルギー量が大きい。
今までの怪異とは比べ物にならない程だ。
現にまだ吸収中なのだが奴の形が崩れない。
黒い影状の人型はゆっくりと俺の方を振り向く。
ヤバい、そう思った瞬間。
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