第41話 まずは魚を捕らえます

 本日は睡眠には大変理想的な環境だ。

 個室で、しかもちゃん干したした布団で寝る事が出来る。

 マット一枚下は地面のあの固さも無いし、寝袋の窮屈感も無い。

 寝相の悪い愛梨に襲われる心配もしなくて済む。

 そんな訳で久しぶりにぐっすりと眠れた気がした。


 翌朝。

 朝食を食べたら、まずは獲物取り。

 俺は愛梨と組みで魚捕りだ。

「比較的穏やかそうだしこの浮き輪でも大丈夫そうだよね」

 ちなみに浮き輪とは前の合宿で使った物と同じ網がついたものである。

 なお小屋の前の海は環礁の中央寄り。

 つまりサンゴで囲まれた比較的浅い海で海流もそれほど無い。

 なので浮き輪につかまってバシャバシャでもあまり怖さを感じない。

 勿論サメとかには気をつけた方がいいのだろうけれど。


 そんな訳で2人で浮き輪の上に乗っかる感じで環礁のやや深い部分まで移動する。

「あまり小さいのは狙うなよ」

「でもイワシ程度のがいたらまた干物作りたいな。あれ結構美味しかったし」

 そういえば確かに美味しかったな。

「あ、良さそうな魚群発見」

「いきなりやるなよ」

「もう遅い」

 仕方無いので俺が網を持って泳ぐ事になる。

 何せ死んでも魚が浮くとは限らない。

 前回の合宿で俺が確認した限りでは浮くのは3分の1程度。

 あとはそのまま海流に流されるか沈むか。

 海流に流されるのが一番多いかな。

 なので無駄死にした個体が少しでも少なくなるよう網で掬いまくる。


「なんだろうこれ。サンマっぽいけれど」

 まず最初に捕らえた魚は長さ30センチ程度のサンマっぽい形をした魚。

 ただサンマより目が大きく口も大きく更に体に2本線がある。

「サンマは寒い方の魚だから違うんじゃない」

「まあそうだけれどさ」

「あ、次は10メートルくらい先」

 ちなみに愛梨は浮き輪の上に身体を乗せたまま水中眼鏡で海中を見ている状態だ。

 一方で俺は泳いで掬ってという感じ。

 労働量にずいぶんと差がある。

 でも愛梨の邪視が一番魚を捕るのに適しているから仕方無い。

 それに俺の体力は常人と違うしな。


 そんな感じで30分もやれば大漁状態になる。

  ○ さっきのサンマみたいな30センチ定規サイズの奴 20匹以上

  ○ 赤くて鯛っぽいが何処か鯛と違う感じの全長25センチ位の魚 10匹以上

  ○ 形は鯛だが銀色でアジっぽい大型の魚 7匹

  ○ 前回合宿で俺が捕ったのと多分同じ40センチサイズで尾っぽが長い魚 3匹

  ○ ブリに似ているけれどやや細長い感じの魚 2匹

 何せ基本的に群れで泳いでいるので見つけたら数捕れてしまう訳だ。

 これでも愛梨は大分セーブしたらしい。

「さて帰るか。もう充分だろ」

「そうだね。これ以上捕るとさばくの大変だし」

「既に充分大変だと思うけれどな」


 そんな訳で帰ろうと行き同様バタ足で進もうとしたがなかなか進まない。

 ちょうど潮流が逆に流れている感じだ。

 網に獲物を色々入れたせいで抵抗が大きくなっているせいもある。

「このまま流れから外れるまで我慢かな」

 愛梨の言うとおりある程度動けば流れの少ない場所に行けるだろう。

 ここは環礁なので場所によっては流れがほとんど無いから。

 だが結構潜ったり泳いだりしたので俺もちょいと疲れ気味。

 そこで今回はちょっと魔法を試してみる事にした。

「俺の方の網の端を持っていてくれ。こっちで引っ張る」

「でもそれだとダーリン、疲れない?」

「ちょいと魔法を試そうと思う」


 まずは風の魔法を試してみる。

 進みたい方向と逆の風をイメージして吹かせ反動で進む作戦だ。

 あれ、思ったように進まない。

「何か逆に流されているよ」

 愛梨の言う通りだ。

 どうやら俺が風魔法を起こしても反動は生じない模様。

 むしろ風によって逆方向へ進む始末だ。


「風じゃ駄目か。なら」

 こんどは水の魔法だ。

 水が動いているイメージを思い浮かべる。

 よし、浮き輪が思った方向へ動き出したぞ。

「あ、速い速い」

 一度やり方を掴んだら簡単だ。

 波に浮き沈みしつつも割といい感じの速度で小屋前の砂浜へ到着。

 そして。


「ごめん、やっぱり重くて持てない」

 愛梨分の網も持って、代わりに愛梨が俺の分の浮き輪を持って小屋へ。

「やっぱり魔法、便利だよね」

「愛梨もやり方さえわかれば出来ると思うぞ。まあこの魚を捌いてからだけれどさ」

 多分それだけでも昼になると思う。

 それ位には魚の量がある。

 まあ大きいのが魚群で泳いでいる処に邪視をかけるわけだ。

 どうしても量が多くなるのは仕方無い。

 特にあのサンマみたいな奴なんて強烈な大群で泳いでいたしな。


 他の皆さんはまだ小屋に戻っていない。

 というか俺達が早すぎるだけなのだけれど。

 巨大クーラーボックスを引っ張り出して、魔法で氷を入れ、魚を入れる。

「私はこの細長いのからやっていくね。ダーリンはそれ以外よろしく」

 はいはい。


 なら次に多い鯛っぽいけれど何か違う魚というか。

 これも大きな群れで泳いでいたから数が多いんだよな。

 でもその前に。

「この魚って全部食べられるんだよな」

 それだけ確認しておく。

「大丈夫だよ。この目で見れば毒があるかどうかわかるから」

 なるほど、便利だ。

 さて、それではこの鯛もどきをさばいておくか。

 俺も前回の合宿で何とか魚を捌けるようになっている。

 あの後ネットとかで裁き方の動画も見たしさ。

 まずはウロコをガシガシととってと……

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