第39話 常識がおかしい皆さん
ある程度魔法を試してみて、そして気づく。
どう考えても奴らの着替えは終わったよな。
考えてみればここへ来る移動中にとっくに終わっていると思うけれど。
魔法を色々使ってみたせいか何となくアッチの方もすっきりした。
だから来たルートを辿って小屋へと帰る。
てっきり小屋付近の海で遊んでいると思った皆さんの姿が見えない。
どうしたのだろう。
車の付近にも誰もいない。
小屋の中かな。
そう思って小屋の方へ意識を向けると、確かに6人分の気配を感じた。
どうも今回の合宿でそんな能力まで知らずに身についていた模様だ。
思ったより色々役に立って……実生活で役に立つかは不明だよな。
そんな事を思いながらハシゴ状の部分を上り小屋の入口を開ける。
「ただいま」
ふと見えたものが何か、認識するまでちょっとだけ時間がかかった。
理解して慌てて回れ右。
「出かけてくる」
取り敢えず理解したのは愛梨と有明透子と桜さんの全裸だ。
どういう状況かまでは理解していない。
「あ、お帰りダーリン」
愛梨の声はいつも通りだ。
「どういう状況だよ、それは」
「だってずっとお風呂に入れなかったじゃない。だから水着に着替える前にやっぱりお風呂に入りたいなと思って」
「先輩達が大型ビニールプールを持ってきてくれたのよ。ここのお風呂は狭くてあまり綺麗じゃないから。水はホースで引いて、私が魔法を使って温めて」
「なかなか気持ちいいですよ。正利さんも一緒にどうですか」
どうですかって、桜さん本気ですか?
愛梨や有明透子は常識が狂っている認識があったけれど、桜さんまで。
「先生は知っているんですか、この事は」
「気持ちよさそうでいいわね、そう言っていました」
「今は2階の何処かの部屋で寝ているよ。2年生の試験監督をやって寝不足だって」
おい先生仕事しろ!
といっても無理だな寝ているのでは。
「ダーリンも一緒にさっぱりしようよ。気持ちいいよ。ビニールシートを敷いて洗い場の場所も確保したし、高床式で水はけもいいしね」
「ボディソープもシャンプーもリンスもあるし。洗面器はここのを拝借したし」
痴女勇者と愛梨の常識はおいておいて、俺は唯一まともそうな桜さんに賭ける。
「でも高校生で男女混浴はまずいだろ」
「正利さんなら問題は起こさないと思いますから大丈夫です」
「そうそうダーリンなら問題ないって」
「むしろご褒美……じゅるっ」
おい有明透子何だ今の舌舐めずりの音は。
「有明は女の子専門じゃなかったのか」
「気持ちよければどっちだって。特に男相手は経験ないからちょっとだけでも……」
やばい、変態だ。
「ちょっと透子さん、ダーリンは私のだよ」
「わかってるわかってる。基本的には手を出さないから安心して」
「基本的というのが気になるんだけれど」
「世の中には時の勢いと若さ故の過ちというのがあって……」
「それ駄目、絶対!」
俺は悟った。
こいつらにつきあったらヤバいと。
幸い俺の荷物は玄関横に置いてあった。
それを手にして逃走を開始する。
「あ、ダーリ……」
間違えても追いかけてくるなよ。
俺は
気がつけば先程魔法を練習した海辺の浜だった。
うん、ここで少し頭と体を冷やそう。
着替えて海パン代わりの短パンとTシャツ姿になる。
泳ごう。
泳いで魔法も使って消耗して、ムラムラを抑えよう。
悪いが俺だって健康な男子高校生なのだ。
色々限界がある。
そんな訳で俺はしばし体力を消耗すべく、泳いで泳いで魔法を使って使いまくるのだった……
◇◇◇
泳いで潜って魔法を試して色々何して。
すっきりさっぱり賢者モードになったところで雲行きが怪しくなる。
一雨来そうだ。
俺自身は濡れてもいいが荷物が濡れると悲しい。
仕方無いので小屋へと戻ることにする。
ダッシュで帰ると玄関先でちょうど豪雨が降ってきた。
何とか間に合ったなと扉を開けようとしてふと思う。
もう風呂、終わっているよな。
そう確信できる証拠は何も無い。
でもこのままでは荷物が濡れそうだ。
南国の雨、無茶苦茶激しい。
いざとなったら荷物だけ置いて逃げよう。
そう決めて扉を開ける。
「ただいま」
「あ、ダーリンお帰り」
良かった。
既に風呂モードは解除されていたようだ。
Tシャツにショートパンツという姿だけれど着ていないよりはよっぽどまし。
「そろそろ夕食作ろうと思って。お昼食べていないしここはもう少しで夕方みたいだから」
まだ時計では……そう思いかけて気づく。
どう見ても日本じゃないものな、ここは。
時差があっても仕方無い。
「材料は大丈夫なのか」
「色々買ってあったから大丈夫だよ」
なお他には有明透子が揚げ物を何か作成中で、更に桜さんはサラダか何かを作っているようだ。
残り先輩方や先生はまだ起きてきていない模様。
よっぽど疲れているらしい。
「俺も何か作ろうか」
「3人いるから大丈夫だよ。ダーリンはその辺で適当に休んでいて」
そんな訳で俺はお言葉に甘えて休ませて貰う。
この小屋のは基本的にはログハウス的な造り。
だが全体が高床式になっている。
高さは地面からだいたい1メートル位かな。
床は一応平らにはなっているが結構隙間がある。
鉛筆くらいの太さのものなら落ちそうな位だ。
なおかつここは靴をはいたまま入るらしい。
靴を脱ぐ場所とかも無かったしな。
1階はトイレと風呂らしい場所以外は柱はあるけれど一部屋でかなり広い。
2階にいくつか個室があるようだ。
「そう言えばダーリン、散歩で何かあった?」
「特に面白い物は無かったな。島自体もこの前の島より小さい感じだし」
そう言ってふと疑問を生じる。
「そう言えばここの水、何処から引いているんだろう。水らしいものは無さそうな感じだったけれどな」
高い山も無く島自体が小さい。
一周した訳じゃ無いから断言は出来ないけれど真水は無さそうだ。
「あの短絡路経由で他の場所から引いているんだって。先生が言っていたよ」
それはなかなかチートだと思う。
「そう言えば少し遠くで魔法の気配を感じたのだけれど、あれって真鍋君かしら」
有明透子、気づいていたか。
「ああ。何となく使えそうな気がして、安全そうな処で試してみた」
「えっ、ダーリン魔法使えるようになったの?」
愛梨が反応する。
「簡単なのだけな。あと有明さんほど色々使える訳じゃない。
「いいないいな。後で教えて」
「私も教えて欲しいです。体質的に正利さんと同じような魔法が使える筈なので」
確かに狼女と
愛梨は邪視持ちで魔法使い系統だからもっと色々使えるだろうし。
「なら明日な。どうせ時間はあるだろうから。ところで今日の夕食って何だ?」
「私が作っているのはカレーだよ。久しぶりにご飯をがっつり食べたい気分」
「こっちはとんかつを揚げているところ。カツカレーにしてもいいし、卵でとじてもいいかなと思って」
「生野菜を食べたいからサラダを作っています」
なるほど。
それぞれが欲しいメニューを作っている形か。
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