第30話 ちょっと燃費が悪すぎないか
装備そのものはほぼディパック3つに入った。
厳密にはマットが入らないが、これは軽いからいいとしよう。
そして問題は食糧だ。
「1回にどれ位食べる計算になるかな」
「ごめん。最低でも一食当たり肉を500グラム以上食べないと体力が出ない」
有明透子がとんでもない事を白状した。
でもまあいつもの昼食を見ているだけに嘘ではないだろうと思われる。
「桜さんやダーリンは」
「私もお肉メインですけれど、夕食で200グラムもあれば充分だと思います。他はパンとかでも大丈夫です」
「俺は標準かやや少なめで大丈夫だと思う。愛梨の昼の弁当の前はパン2個でも何とかなったしな」
うーむ。
それにしてもこれは結構面倒かも。
「有明は普段の飯、どうしているんだ。親に白い目で見られないか」
「足りない分はこっそり自分の部屋で作ってる。熱や水の魔法を使えるから自分の部屋で作れるし、魔法で冷凍や解凍も出来るから。学校帰りに業務系のスーパー2軒寄って豚の塊肉が安い時はそれを、安いのが無い時は輸入冷凍鶏肉2キロパックを買ってる。豚の方が好きだけれど冷凍輸入鶏肉は安いし」
経済的なのか非経済的なのか……
取り敢えず苦労はしているようだ。
「なら透子さんにメニューを考えて貰って、それを訂正する形でいきましょうか」
「1日目の昼夜、2日目の朝昼夜、3日目の朝昼でいいよね」
「それでいいと思う。予備食は別に調理しないで食べられるもので」
「私だとハム600グラムくらいのを一塊。でも日本ってハム高い。向こうの世界はこっちに換算してキロあたり千円程度で済んだのに」
「まあその辺は透子さんの計画を見て考えましょう」
うーむ。予備食がハム塊か。
俺とは発想が違うよな。
俺だとせいぜいバランス栄養食とか袋ラーメンとかだけれども。
有明透子の書いているメニュー表を皆で見ながら突っ込む。
「この『鶏ハム』っていうのは何?」
「ネットで見たレシピで時々作ってる奴。鶏肉を調味料に2日浸けた後軽く茹でるだけで出来る。味はサラダチキンとハムの間くらい。安いし結構美味しいしお勧め」
「美味しそうだね。でも量がちょっと凄いかな」
「業務系スーパーでブラジル産冷凍鶏もも肉が2キロ700円位。それで作るから大体作るのも2キロ単位。1袋にもも肉がだいたい7枚入っているからだいたい1食2枚ずつ食べてる。いつもは大体2袋買って3日持たせる感じ」
なるほど。
「でも3日で4キロだと計算あわなくないか」
「1食500グラムの肉ってのは何とか我慢できる限度の量」
「さいですか」
有明透子の小遣いエンゲル係数はとんでもなく高そうだ。
「鶏肉ばかりだとストレスがたまるから少しは豚も欲しい。安い肩肉でいいから3キロくらい。しっかり味付けした煮豚にして持って行けば3日位は持つし。夕食は鳥はむを主食に煮豚をおかずで食べればいいかなと」
えっ?
「ちょい待て。それは常識がおかしい」
「鶏肉は主食。さっぱりしているし」
うーん。
そんな訳でまずは有明透子的な食事計画が完成。
うーん。
何とも評価が難しい代物だ。
一応主食が肉というのは考え直しているようだけれども。
「主食はご飯だけじゃなくて色々考えているよね」
愛梨はいい点から確認するつもりのようだ。
乾麺のスパゲティというのは確かに面白い選択だと思う。
「このゆで汁を捨てないのは何か理由があるんですか」
「
なるほど。
その辺は流石経験者の発想だと思う。
「ご飯は1日目の夜だけ炊くの?」
「そう。夜に朝の分とお弁当の分まで炊いておくの。そうすれば朝にかなり時間を節約できるから。2日目の夜はきっと1日中洞窟内で疲れていると思う。だから簡単なスパゲティにして、朝もスパゲティ、昼は最後のパン」
野菜もそれなりに考えたようだ。
冷凍ほうれん草を持って行って粉スープに入れる等。
「乾燥物の野菜より冷凍の野菜の方が栄養価が残っているし。この気温ならタオル等に包んでおけば2泊目くらいは余裕で持つから。ちょっととけるから汁対策は必要だけれど、何なら途中で魔法を使って冷凍し直してもいいし」
そう、色々考えてあるいいメニューなのだ。
時間的にも早く作れるし
ただ問題もある。
「お肉がかなり充実していますよね」
桜さんのこの台詞はかなりオブラートに包んだ表現だ。
毎食鶏ハムが2枚とソーセージ6本がつき、2回ある夕食では更に焼き豚500グラムがつく。
なおこの場合の鶏ハム2枚とは薄切りハム2枚とは異なる。
鳥肉の塊2個という意味だそうだ。
塊1個でも市販サラダチキンの倍以上の大きさ。
それが2枚でだいたい600グラムらしい。
「鶏肉はタンパク質豊富だし鶏ハム状態で持って行けば比重はあるけれどかさばらないし、自作なら塩分の調整も出来るし」
「うーん、でも流石にお肉の量、多すぎないかな。透子さん以外は半分でも充分だと思うよ」
俺もそう思う。
肉だけでもう通常の1食分よりきっと多い。
「というか鶏ハムは朝はいらないと思うな。ソーセージとスープとご飯で余裕。昼は確かに早く食べる為にもいいと思うけれどさ」
「透子さんは食べないと持たないからそのままにして、他の人は朝の鶏ハムを無しで、昼の鶏ハムと夜の鶏ハムは1枚ずつでいいのではないでしょうか」
「それならちょうどいい量だと思うよ」
愛梨も桜さんも結構食べるから、その辺は妥協しておこう。
俺はそれでも多い気がするのだけれど。
「そうだな」
これは大和先輩だ。
「牛丼の並1杯の量がだいたい350グラム前後。いくら1日中動くといっても肉だけでその倍はやり過ぎだろう。ただそれ以外はなかなか良く考えてあるメニューだと思うぞ。昨年の私は菓子パンやおかずパンばかりだったからな。香織に至っては3食とも固形バランス栄養食だったし。一応カロリーを考えて2倍量にしていたが」
おいおい。
「バランス栄養食はともかく、パンだとタンパク質とか色々足りなくないですか」
「一応牛乳パックは持って行った。2泊3日だし後は他の日に調整するまでだ」
確かにそれも考え方の一つかもしれないなと思う。
簡単に手早く食べられて。
ただ味気なさそうだよな。
「うーん、そんなものですか。こっちへ戻って以来だいたい常にお腹が減っていて、やっと適量を見つけた処だったので普通の量がわからなくなって」
「でも私もメニューそのものはいい感じだと思いますわ。夜は御守りで安全ですし、一日の疲れをとる意味でもちゃんと食べておきたいですしね」
「そうそう。ただ事前に鶏ハムと焼き豚を作っておくのが大変かな。私も作るからレシピを教えてくれると嬉しいな」
うん、この点に関しては昨年同様にならなくて良かったと思う。
そういういい加減な食生活をやるから貧乳だという訳ではないだろうけれど。
あ、すかさずボールペンが飛んできた。
別に貧乳というのは悪い意味ばかりではないのだけれどな。
大和先輩はモデル体型でそれで似合っていると思うし。
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