第26話 武器を選ぼう
翌日の放課後、第一化学準備室。
赤色と青色の巨大なボストンバッグ2つとデイパック5つを持って大和先輩が部屋に現れる。
「随分持ってきましたね」
「これも別空間を使った特殊収納グッズだからな、軽いんだ」
なるほど。
「色々装備はあるけれどな。まずは武器といこうか。この部屋は狭いから第1実験室を使わせて貰おう」
第1化学準備室から第1実験室へは扉一つ。
「念の為部屋の外から見えないようにしておくぞ。外への出入りは準備室経由でやってくれ」
先輩がそう言うと同時に窓ガラスや扉の窓が真っ暗になった。
「便利ですね。それも魔法ですか」
「魔法じゃなくて簡単な術だ。短絡路に出入りしたりするのと同じで練習すれば誰でも出来る。透子も出来るだろ」
「一応は」
なるほど、まだまだ色々と知れば便利な事が多いようだ。
大和先輩は青い巨大ボストンバッグに手を突っ込み、中から様々な武器を取り出して机の上に並べはじめる。
日本刀が長いの短いのあわせて6振り。
シンプルな長剣が2本。
それよりやや短く軽そうな剣が2本。
コンバットナイフが色々な形で合計6本。
槍が長いの短いの先が刀っぽいの含めて6本。
薙刀2本。
杖があわせて7本
更に篭手のような防具が6個。
盾かさまざまなサイズで合計8個。
「随分入っていますね」
「この青いボストンバッグが
なるほど。
「銃は無いんですか」
「弾を仕入れるのが大変だからな。それに慣れないうちは銃より刀剣類の方が使いやすい。もし銃を使いたかったら自分で購入するんだな」
「買えるものなんですか」
「今は通販で何でも揃う。ただ購入は討伐免許をとってからだな。免許番号がパスコードになっている」
なるほど、そうやって一般人が武器を購入する事を防いでいるのか。
でも銃器類まで日本国内で、それも通販で手に入れられるとは思わなかった。
何かもう俺の知っている日本じゃ無いよな、これは。
「さて、武器選択だ。正利と桜は好きなのを選べばいい。腕力があるからどれを使っても何とかなるだろう。透子は聖剣があるからいらないな。愛梨はとりあえず杖にしておけ、それもあまり長くない奴」
「何故ですか」
「邪視持ちというのは魔女の典型的特徴の一つだ。そのうち魔法が使えるようになる可能性が高い。その代わり体力は魔法で強化しない限り元のままだ。だったら魔力を強化できる杖に慣れておいた方がいい」
愛梨と大和先輩が杖を選んでいる横で俺はどの武器にしようか考える。
格好いいのは日本刀、それも長い奴だ。
だがあれは使い方が下手だと折れるとか聞いた事がある。
剣道選択者なら別だが俺のような体力任せ派にはあっていない。
そして今度の舞台は
なら長い物だと邪魔だろう。
そう考えると適切なのは多分片手剣だ。
桜さんは有明透子と一緒に選んでいる模様。
「うーん、今一つしっくりきませんね。透子さんはどんな感じですか」
「薙刀形態か片手剣形態だね。こんな感じ」
参考になるかなと思って見てみる。
最初にすっと構えた時に両手に現れたのは薙刀形態だ。
両手把持で刀身の長さが30センチ位、柄の長さが身長くらい。
「これは敵対象が1体の場合に使う形態。間合いも長いし攻撃力もそれなり。慣れるとある程度自由に振り回す事も出来る。ただ
今度は刀身の長さ50センチ位の両刃で真っ直ぐな剣だ。
左手には手の甲から肘までをガードする革と金属製の籠手をつけている。
「これが乱戦や探索時等に使う形態でどちらかというと防御重視。この場合、私は籠手を盾代わりにして敵の攻撃を弾いたり捌いたりして、片手剣で攻撃範囲に入った敵を突くというのが基本パターン」
なるほど、籠手を盾代わりに使う訳か。
確かに小さな盾程度があった方がいざという時安心だな。
俺はそう思って机の上の籠手を試してみる。
うーむ、これで攻撃を弾くのもちょっと怖いかな。
大人しく一番小さいバックラーを使わせて貰おう。
透子の説明はまだ続いている。
「ただ私は回復役と援護役を兼ねているので基本的にあまり動かないの。桜ちゃんは動き回るし近接攻撃専門だからちょっと参考にならないかも」
「私のように基本速い攻撃メインの感じだとどれがいいでしょうか」
「桜ちゃんは軽快さ第一だね。だったら大きくて重い武器よりもナイフか短剣くらいがいいんじゃないかと思う。間合いの短さは速さでカバー。素手や体術メインにすると小柄な分威力が足りないから軽くても武器はあった方がいいと思う」
なるほど。
有明透子のくせに経験者だけあってなかなか正しそうな意見だ。
俺が片手剣とバックラーを試しているのを見た大和先輩から声がかかる。
「正利はそれでいいのか。確かに初心者でも使いやすい典型的なパターンだが」
「初心者そのものですから。それにしおりを見た限りそれほど攻撃力が必要な感じは無かったので」
「正利らしく面白みがない選択だな。バスターソードは男のロマンとか、攻撃力重視で防御なんて飾りですとか、もう少し遊んだ選択は出来ないのか」
「面白みより堅実さを取る主義です」
「つまらん男だな」
「何とでも」
ただ先輩の台詞の裏を読むと間違っていない選択ともとれる。
面白みが無いという事は堅実だという事の裏返しでもあるから。
「ダーリンは片手剣と盾か。RPGの基本って感じだよね」
「RPGじゃなくて現実だけれどな」
ちなみに愛梨が選んだのは40センチくらいの短い魔法杖だ。
「その杖を持てば魔法も使えるのか?」
「魔法はまだ全然。でも邪視の力は少し強化された感じだよ。試してみる?」
「謹んで辞退する」
帰りに交通事故なんて遭ったらたまったもんじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます