第15話013「魔力測定、そして……」



「さて、それじゃあ、早速だがこの『属性水晶』に手を置いてみてくれ」

「こう……ですか?」



 とりあえず、俺はアレイスターが持っている透明の水晶に手を置く。


 すると、手元の透明だった水晶の中が赤、黄色、青……といった七つの色が現れ、それがぐるんぐるん回り始めた。


「!? こ、これは……」

「?」


 アレイスターが水晶の動きを見て驚きの声を上げる中、水晶では七つの色が激しく回転しながら水晶全体を『虹色』に染め上げると、そこに『Ts/高』という言葉が浮かぶ。


「おいおいおい……『Ts/高』かよ。こりゃまた……」

「? な、なんですか?」


 俺は恐る恐るアレイスターに聞いてみた。


「『Ts/高』……属性は全属性持ちの『Transcendence(トランセンデンス)』、魔力は高魔力判定……これがお前の今の魔力状態だ」

「ぜ、全属性……ですかっ?!」


 魔法を使ったことが無い俺でも、アレイスターが言っていることがどういうことかくらいは理解できる。


「……恐らくだが、魔王ゾルティゼアである長髪男の魔力と同化したとき、かなりの量の魔力が同化したんだろう。俺や以前会った『蒼炎の悪魔持ち』の奴でも『Mt』の複数属性持ちだ。こんな『全属性持ち』なんて見たことも聞いたこともない」

「は、はあ……」


 凄そうなことはわかるがどれくらい凄いかはあまりピンとこない。


「昨日、お前と戦ったとき、かなりの逸材だとは感じたがまさかここまでだったとはな……であれば……ぶつぶつ」

「?」


 アレイスターは突然考え事をし始め、ひとり言をぶつぶつ呟き出す。


「……クライブ」

「!? は、はい」


 ぶつぶつ呟きながら考え事をしていたと思ったら、今度は真剣な顔をして俺に声をかけてきた。


「俺とこの国を…………世界を変えてみないか?」

「……え?」


 突然、アレイスターから思いがけない言葉が出た。


「俺はこの世界で身分制度(カースト)を無くしたい、と思っている。そして、その為に自分の力を最大限活用してこれまで生き、そして、今持っている『力』を身に着けた」

「今持っている『力』? 領主の権力ってことですか?」

「まあ、それもその一つだが……それだけではない。詳細はまた今度話すが俺は現在、『現センティエレメスト国王』に信頼を置かれている者の一人となっている」

「ええっ! こ、国王ですか?!」

「ああ。そして、現在の国王様は表立っては口にしていないが『身分制度(カースト)』を無くそうと考えていらっしゃる方だ……」

「な……?! で、でも、それって……」

「ああ。既得権益層……他の王族や貴族からすれば現国王はかなりの『危険思想の持ち主』だな!」


 ニカッと笑うアレイスターが更に話を進める。


「そんな、クソったれな奴らが胡坐をかき、調子こいて座っている『身分制度(カースト)』を破壊して俺と真っ当な社会を作ってみないか、クライブっ!!」

「え、ええええええーーーーっ?!」


 アレイスターが満面の笑顔で俺の両肩に手をかける。


「『魔力縛り』『忌み子』……そんな非常識のような常識がまかり通るのがこの世界だ。だが、俺からすればそんなのふざけんなって話だ。お前だってそうだろ?!」

「は、はい。それはまあ……」

「だから、お前も一緒になって協力してほしいんだ!」

「で、でも……俺なんかが何の役に……」

「バーカ! 全属性持ちのお前が役に立たなかったら誰も役になんて立たねーよ! お前が協力してくれるならその力の使い方も教えるし、それに、高等学院への進学も俺が全面負担してやる!」

「ええっ! マジっすか!!」

「ああ、まかせろ!」

「で、でも、それって……『推薦枠』ってことでしょう?」

「もちろん。だが、それでお前を奴隷みたいに飼い殺すなんてことはしない。むしろ、逆だ」

「逆?」

「……俺はお前をこの世界を変えるための『先導者(リーダー)』になってもらうつもりだ」

「はああああああ~~~?! リ、リーダーぁぁぁぁーーーー!!」


 話がだんだん大きくなることにもはや恐怖を覚え顔が引き攣るクライブ。


「心配するな。そんなのすぐにやれってことじゃなく……ていうか、そんなのすぐにできるわけないだろ!? そうじゃない。そうじゃなく……その為の準備をすぐにでも始めたいと言ってるんだ」

「準備……ですか?」

「そうだ! 力の使い方は勿論、それ以外にも、な。いずれにしても、高等学院が始まるまで時間がない。高等学院に入学するためにお前には教えることがいっぱいあるからな。だから、ぜひ、協力を……俺の力になってほしい!」

「アレイスターさん……」


 アレイスターが力強く言葉をかける。


「長髪男のことは一旦忘れろ。今、必要なのはこの世界を変える力だ! そして、お前にはその力がある!」

「……っ!!」


 アレイスターの言葉にさらに熱がこもる。


 そして、その言葉に俺もドクドクと脈打つ速度が増し、興奮を触発されているのがわかる。


「共に世界を変えよう、クライブっ!」


 アレイスターが右手を差し伸べる。


「……あの一ついいですか?」

「なんだ?」

「その……両親は……どうなるんでしょうか?」

「問題ない。お前同様、俺の管轄内で生活してもらうよう『取り計らう』つもりだ!」

「管轄内?」

「ここ……クロムウェル領の領都クロムスへ来てもらう。勿論、生活もこちらで保証するつもりだ」

「えっ! 領都に!」

「心配するな。ちゃんとそこまで俺はお前を面倒見るつもりだ! 当たり前だろ? お前の両親が俺の目の届くところにいないともしもの時、対応が難しくなるからな」

「あ、ありがとうございます!」


 俺は一番の心配事だった両親のこともちゃんと考えてくれていたアレイスターに感謝の言葉を告げる。


「今、俺に感謝の言葉を告げた……ということは、それが『答え』ってことでいいんだよな?」


 アレイスターがニカッと今日一番の笑みを浮かべる。


「は、はい! 自分にできることであれば…………よ、よろしくお願いします」

「こちらこそだ! これからよろしくな、クライブ!!」


 こうして、俺はアレイスターの『身分制度(カースト)の破壊』というほとんど『クーデター』のような行為に協力することとなった。



 しかし、この二人の出会いは『クーデター』どころか、後(のち)に世界を揺るがす『大変革(レボリューション)』へと発展していくことになるのだが、それはもう少し先の話である。


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