第7話005「両親への告白」



「父さん、母さん。ちょっと話があるんだけど時間ある?」



 お昼休みにエマに高等学院進学についての話を聞いた夜、家に帰った俺は両親に進路についての話を切り出した。


「ど、どうした、クライブ……?」

「が、学校で何かあったの……?」


 父さんと母さんは俺が改まった態度で声をかけたことに、少し不安に駆られているようだった。


「あ、いや、別に学校で何かあったとかそういうのじゃなくて……その……学校を卒業した後の進路についてなんだけど……」

「学校を卒業した後の進路?」

「クライブ……あなたは学校を卒業したらお父さんの木こりの仕事を手伝うんでしょ? 前に言ってたじゃない?」

「う、うん……そうなん、だけどさ……」


 そう……転生する前のクライブは以前、両親に卒業後の進路について『父の仕事を手伝う』と言っていた。


 勿論、それはクライブの本心ではない。


 本心……ではないが、かといって高等学院への進学なんてできないこともわかっていた。


 結局、その両親に『父の仕事を手伝う』と言った時が、クライブが『高等学院への進学』という夢を諦めた瞬間だったのだ。


 しかし、今は違う。


 俺は、元のクライブの夢を叶えたいとも思うし、俺だってこの世界のことを知りたい。その為に俺はここで両親に想いを告げた。


「ごめん! 本当は俺……王都の高等学院へ進学したかったんだ!」

「「クライブ……」」


 初めて、本心……クライブの本心を両親に告げた。


「そ、そうか……やっぱり……そうだったんだな」

「?! と、父さん……?」

「お前が前に私の仕事を手伝うと言ってきてくれたときは本当にうれしかった……うれしかったが、お前が勉強好きなことは父さんも母さんもよく知っている」

「えっ?! そうなの?!」

「そうよ、クライブ。お父さんとお母さんはあなたの勉強好きなことはちゃんと知っていたわ。だから、もしかしたらクライブは……本当は高等学院へ進学したいんじゃないかって……お父さんと話していたのよ」

「母さん……」


 まさか、二人がクライブが高等学院へ進学したいと願っていたことを知っていたとは……。


「だ、だかど、高等学院へ行くには……その……」


 俺が『お金が必要』だと言う前に、


「お金ならあるわよ……クライブ」

「え?」


 すると、おもむろに父さんが立ち上がり、


「フフン! ちょっと待ってろ」


 そう言って、二人の寝室へと入っていった。すると、


「クライブ……あなた変わったわね」

「え?」


 一瞬、ドキリとする……が、


「魔力縛りのせいかもしれないけど、ずいぶん……たくましくなったというか……すごく大人になったわ!」

「母さん」

「今のあなたは、病気の前のまだまだ目の離せない子供じゃなく、一人の自分の意思をしっかりと持つ立派な大人に見えるわ。これなら、父さんも母さんも……あなたをしっかりと応援できるわ!」

「応援?」

「おまたせ~! どうだ、クライブっ!」


 ジャラジャラジャラ……。


「えっ……ど、どうしたの……こんないっぱいの……お金」


 今、クライブの目の前には父親が袋から出した『金貨』や『銀貨』が何十枚も広がっていた。


「これは父さんと母さんで一年かけて貯めたお金だ、クライブ! これで、お前は『王都の高等学院』へ行けるぞ!」

「そうよ、クライブ。私たちに遠慮しなくていいのよ!」

「と、父さん……母さん……」


 話によると、父さんと母さんはクライブが初等学院へ通うようになり勉強が好きなことを知り、それからずっと生活を切り詰めながら貯金をしていたそうだ。


「あなたが将来……進学をしたいと思うかもしれないと思ってね、ウフフ」

「そうだぞ、クライブ。父さんも母さんも小さい頃はこの村の初等学院までしか学校は出ていない。だが、もし、勉強に興味があるのなら絶対に進学するべきだ。勉強、知識は将来絶対に役に立つものだからな。まあ、父さんは勉強嫌いだったから高等学院なんて行く気まったくなかったがな……ハハハハ」

「父さん……」


 父さんが頬を赤くし照れながらそう呟く。


「このお金はあなたの『未来』よ、クライブ」

「か、母さん……」


 やばい……泣きそうだ。


「あ、ありがとう……ありがとう、父さん、母さん」

「お前は『魔力縛り』に侵されてずっと苦しい思いをしてきた。正直、私たちにはこれくらいしかできないが……」

「でもね、クライブ。私たちはあなたに自由にやりたいように人生を生きて欲しいの。だから……高等学院へ行ってきなさい!」

「う、うん……あ、ありがとう、本当に……ありがとう、父さん、母さん……」


 こうして、俺は両親のおかげでクライブの夢であった高等学院への進学を叶えることとなった。



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